裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

23日

水曜日

ポニョの小町

♪ポーニョポーニョポニョ穴がない〜

※『ねこぢる』復刻本寄稿原稿 アスペクト打ち合わせ ジェオ打ち合わせ(出来ず)

人を会議の席で説得する夢。
まあ夢としては大した面白いことのない夢だったが、
中に“煎脚”という単語が出てきた。
フライパンで煎られている豆のように、足をあっちへ運んだり
こっちへ運んだりして人の説得にあたる、という意味の語、なのだそうだ。
こういう発想は脳のどこから出てくるのか?

いきなり9時15分起床。
わ、寝坊だ、しかし何故朝食の電話が鳴らなかったのか、と
思い確認したら、枕元の目覚ましの時計がいきなり30分以上狂って
いたのだった。いったい、何でこんなに突然狂ったか、まったく不明。

クリーニング来たので受け取り、新しい洗濯物預ける。
9時、朝食。スイカと談合坂SAで買った桃。
それとジャガイモの冷製スープ。

昼は文藝春秋社原稿。
ねこぢる没後10周年の追悼出版。
もう10年か、という感慨あり。
その“無垢な悪意と残酷さ”の検証について書く。
無垢な残酷さと言えば、“夢を見たからパパを殺した”
川口の父親殺害事件、犯人の中学3年の娘が
『ひぐらしのなく頃に』を読んでいた、との報道があった。
またか、と、これからしばらく続くであろうマスコミ対オタク
の不毛な罵倒のしあいを思うと憂鬱になる。
あんなものよりねこぢるの方が何倍も昨今のこういう事件の持つ
不条理さの予言になっていたように思う。

瀧川鯉朝くんより恒例のカツオのたたきのお中元。
冷凍だったのを半解凍した状態で醤油と酒(それにショウガの
絞り汁)に漬け込み、シソの繊切り、煎りゴマ、さらに刻み海苔
と共に酢飯の上に乗っけて昼食はカツオのヅケ丼。美味。
東海林さだおはこれを“銀火丼”と名付けていた(鉄火丼の上だが
そこは大衆的な魚のカツオだけに金ではない、という意)な。

同人誌原稿対談テープ起こしチェック。
終って、タクシーで渋谷。
外は猛烈に暑い。
大阪や京都に比べれば、とこないだの朝日の書評委員で
関西から来ている先生がたが言っていたが、
京都住いの山田誠二監督は熱中症で倒れて病院に運ばれたとか。
昨日、彼から電話があり、少し声に元気がないな、と
思ったところだった。体力ない人だからなあ。
ちなみに昨日の電話で、私も出演している山田監督の
『妖怪くノ一大戦争』の話が出た。京極夏彦さんが私の怪演に
大喜びしている由。

4時、マンション地下『ベラミ』にてアスペクトK瀬氏。
遅れている語り下ろし本の件。形式を変えたい、と提案して
OKとる。ひとまずホッと。
その後、これも伸び伸びになっている某社新書の内容の話。
それに加えて、いま個人的にハマっている理論のことを話す。
人生90年代時代の大きな指針になる、とフいて、これで一冊
出しましょうとプッシュしておく。

一旦事務所に戻り、オノと、同人誌の図版スキャン部分の打ち合わせ。
ページ数がどんどんふくらむが、とりあえず削除はスキャンしてざっと
構成してみてからのことにしよう。

7時、東武ホテルでIPPANさん、ジェオMさんと
杉&鉄ライブ打ち合わせの予定、であったが連絡ミスでジェオさん
来らず。日を改めてということにする。
別件でIPPANさんとの打ち合わせいろいろあり、結局8時半
くらいまで話し込むことが出来たのでよかったが。

バス、ちょうどパルコ前に来たので飛び乗る。
車中ずっと書評用読書。
サントクに寄って夜食の準備。
8番ラーメンを使ったラーメンサラダと、鯛の薄切りポン酢。
コロナビール一本、ファンからお中元にいただいた酒粕焼酎
『黄金波』。まろやかで香り高い逸品。ロックでじっくり味わう。

LDでトム・ストッパード『ローゼンクランツとギルデンスターンは
死んだ』。『ハムレット』の世界の裏で繰り広げられる不条理喜劇。
ローゼンクランツとギルデンスターンは、あの世界一有名な
戯曲において、名前を与えられている登場人物の中でたぶん最も印象に
残らない役。観客どころか自分たちにさえ、どっちがローゼンクランツで
どっちがギルデンスターンかよく認識されておらず、何回か取り違える
始末。おまけに、どうも自分たちの運命は、目に見えないところで
作者が決定づけているらしい(コインを投げると、延々と表だけが
出る。偶然や確率は存在しない、“演劇の中”の登場人物として
自分たちは存在しているのだ)。
で、そんな“脇役”の運命から脱しようと彼らが奮闘努力する……
のかと思いきや、二人は実にどうでもいい瑣末な議論を延々と
繰り返すばかりで、事態は着実に彼らを死の運命に進めつつある。
ギルデンスターンは何故か旅の最中に万有引力の法則や、
飛行機やガリレイの理論やハンバーガー(!)を発明・発見して
しまうが、ローゼンクランツはそれら一切に興味を示さない。
そして、最後は“元の戯曲通り”ハムレットの罠にかかって
処刑されてしまうのだが……。

今や大スターのティム・ロスとゲイリー・オールドマンの、
たぶん一番地味な主役作品だろうが、最も好演ではないかと
思える役柄。作・演出のトム・ストッパードは『未来世紀ブラジル』
や『恋に落ちたシェイクスピア』の脚本で有名で、後者では
アカデミー賞までとっているが、なぜかノンクレジット扱いで
『スターウォーズ3・シスの復讐』の脚本手直しに
駆り出されたりしている。やはりこういう文芸映画
だけでは食っていけないのだろうか。

1時ころ、オノからメール。小倉智昭司会の日テレ特番に出演依頼(9月)
だが、流動的な先約と、夜のトークにかぶっている。小倉さんの番組は
初めてなので、何とか出たいのだけどなあ。

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