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2010年2月23日投稿

週刊新潮に

お知らせ遅れてすいません、『週刊新潮』の2月25日号の
『私の名作ブックレビュー』欄に、新潮文庫の
『日本仏教史』(末木文美士・著)の書評を書いています。

もう手に入らないかもしれませんが、編集部に大変好評だった
ため、今後いろいろ再録されたり、オビに使われたりするようです
ので、お目にとまりましたらよろしく。

ちなみに書籍選定も私が行いましたが、ちょうどNC赤英の
葬儀の時期の依頼だったため、それにことよせて書かせて
もらっています。ご両親にも喜んでいただきました。
友人をこういう場で追悼できることは、物書きとして、
大変に嬉しいことです。

仏様の与えてくれた機会だったのかな。

4月の芝居は駅前劇場!

昨年一年は芝居漬けという感じでしたが、今年はゆったり。
とはいえ、もう、年内3公演に出演(+1公演の作・演出)が
決まってるんですねえ。

その第一弾が詳細決定いたしました。
稽古が始まったらまた徐々に情報アップしていきますが
とりあえず、日時と基本ストーリィのみチェック、
お願いいたします!

あぁルナティックシアター本公演
『悪役照会〜びっくりしたなあ、もう』

橋沢進一・作・演出

音楽・グレート義太夫

於:下北沢駅前劇場

期間・4月14日(水)〜18日(日)

14(水)19時30分
15(木)14時※ 19時30分
16(金)19時30分
17(土)19時30分
18(日)16時

あらすじ・

平成の大スター・羽家裕次郎の特別公演「渡り狼・ギャング一代」。1500人も入る劇場のチケットは連日満席。そこに悪役として抜擢された男たちの大部屋楽屋。

開演前、誰からともなく楽屋で立ち回りの確認稽古が始まるのだが、それぞれに様々な事情を背負っていることが分かってくる―。

あぁルナティックシアターが2010年一発目にお贈りする本公演は、すべてのオトナに捧げる人情ドタバタコメディ!久しぶりの駅前劇場で、思う存分暴れさせて頂きます!

前売3400円 当日3900円
中高生2400円 当日2900円
小学生以下900円 当日1400円
(売上の一部を、すい臓がん治療のための寄付にあてさせて頂きます)
※平日マチネ割は1000円引き(小学生以下無料)

プロデュース

2010年3月4日投稿

奇想天外シネマテークSF・ファンタジー編!

上映場所を銀座シネパトスに移して二回目の
『奇想天外シネマテーク8』はSF・ファンタジー編。
昭和SFの懐しい特撮とドラマを、たっぷりお楽しみ下さい。
今回の目玉は戦前のSFロボットもの、『怪電波の戦慄』!

3/27(土)〜3/30(火)
『極底探険船ポーラーボーラ』1976年 円谷プロダクション
 上映時間105分/カラー
監督:小谷承靖/アレックス・グラスホフ 脚本:ウィリアム・オーバーガード
特撮監督:佐川和夫
出演:リチャード・ブーン/関谷ますみ/中村哲/ジョン・
バン・アーク
解説:北極の地底にロストワールドが!ハンターのマステンは
ティラノサウルスを狩る為に地底探査船ポーラーボーラで向かう
が……。円谷プロによるCG以前の着ぐるみ恐竜が嬉しい特撮
日米合作映画。
協力:川喜多記念映画文化財団所蔵フィルム

3/31(水)〜4/3(土)
『宇宙からのメッセージ』 1978年 東映 上映時間105分/カラー
監督:深作欣二 脚本:松田寛夫 特撮監督:矢島信男 
出演:ビッグ・モロー/真田広之/千葉真一/志穂美悦子
解説:東映がスター・ウォーズブームに乗って10億円を投じた
SF大作。千葉真一のハンス王子と顔面銀塗り成田三樹夫の
ロクセイア12世の『柳生一族の陰謀』タッチの対決は必見!
「その罪、万死に値す!」

※4/2(金)トークイベントあり!〜宇宙からのメッセージ裏話〜
 平山亨 × 唐沢俊一

4/4(日)〜4/7(水)
『フランキーの宇宙人』 1957年 日活 上映時間85分/白黒
監督:菅井一郎 脚本:棚田吾郎 
出演:フランキー堺/菅井一郎/高友子/安部徹
解説:日本における第一次UFOブームだった昭和30年代に作ら
れたSFコメディ。 フランキー演じる宇宙人はクローンで生まれ
る為、みんな顔が同じというあたり、時代の先駆けかも。他にも
思いがけないパロディ満載!

4/8(木)〜4/11(日)
『タイガースの世界はボクらを待っている』 1968年 東宝
 上映時間88分/カラー
監督:和田嘉訓 脚本:田波靖男 
出演:ザ・タイガース/久美かおり/天本英世/三遊亭圓楽
解説:アンドロメダ星の王女・シルビィが乗った宇宙船が、
タイガースの演奏でコンピューターを狂わされ地球に不時着。
人気絶頂のタイガースが主演したSF大作(?)。怪優・天本英世の
文字通りのチン演も。

4/12(月)〜4/15(木)
『コント55号 宇宙大冒険』 1969年 東宝 上映時間72分/カラー
監督:福田純 脚本:ジェームス三木   
出演:萩本欽一/坂上二郎/川口浩/カルーセル麻紀
解説:幕末の志士がUFOに誘拐された。宇宙人は無気力化した
母星を救う為、闘争心溢れる地球人を探していたのだ。
東宝チャンピオンまつり第1作であり、脚本はジェームス三木。
コメディの形をとった、かなりシビアな破滅テーマものである。

4/16(金)〜4/18(日)
『怪電波の戦慄 第二篇 透明人間篇』 1939年 大都映画
 上映時間34分/白黒
監督:山内俊英  原作・脚色:大井利与 
出演:藤間林太郎/夢路妙子/水島道太朗/伊達正
解説:戦前のSFロボットもの映画。透明になるロボットを
めぐり善と悪とが争奪戦を繰り広げる。操縦機を無理矢理
キャリアブルにしてしまうのは鉄人28号の原型?博士を演じる
藤間林太郎は先日亡くなった藤田まことの実父。
【注意】現存フィルム(943m/34分)不完全版での上映。
オリジナルフィルム(1078m/39分)フィルムの欠落部が多い為、
物語を追うのにやや難があります。あらかじめご了承下さい。
東京国立近代美術館フィルムセンター所蔵フィルム

4/19(月)〜4/23(金)
『風速七十五米』 1963年 角川 上映時間89分/白黒
監督:田中重雄 脚本:高岩肇/田口耕三 
出演:宇津井健/田宮二郎/叶順子/菅原謙二
解説:東洋一の巨大ネオンが危ない!東京を風速75メートルの
巨大台風が襲来し、銀座が洪水に襲われる。円谷特撮に果敢に
挑戦した特撮が見物のパニックムービー

連日21:00から一回上映。

場所:銀座シネパトス
http://www.humax-cinema.co.jp/cinema/top_ginza.html
東京都中央区銀座4−8−7 先 三原橋地下街
電話:03-3561-4660
料金:一般・学生1300円
   シニア1000円
専用回数券5回券:5000円

第三回ルナティック演劇祭公募開始!

すでに“恒例”と言ってもいいでしょう。
大きな柱のある劇場、下北沢“楽園”において、今年も
劇団あぁルナティックシアターが演劇祭を開催します!
すでに活動している劇団でも、このために結成したユニット
でも、誰でも応募が可能です。

二回公演。
優勝賞金20万円。
その他、演出賞、脚本賞、演技賞、特別賞が用意されています。
第一回優勝は賞取りを目的に結成したMILES。
第二回優勝は関西出身、東京に場を移して賞荒し的に活躍している
集団as if〜でした。

全く作風や演劇に対する取り組み方が異る劇団でも、面白いもの
でさえあれば、区別差別選別せずに評価してしまうのがこの
演劇祭の特徴です。

私(唐沢)が審査員をさせていただいておりますが、他に、
小劇場“楽園”チーフの本多慎一郎氏、そして当然ながら
あぁルナティックシアター座長・橋沢進一、ルナティック
団員も審査員に加わります。、さらには、そのお芝居の集客数も、
審査点数に加算されます。
小劇団は、お客を集めることも活動の
うち、ですから。

劇場代・チラシ代は主催者が負担します。
照明・音響・舞台監督も専門スタッフが対応します。
さらに稽古場代として、小額ですが制作補助金が出ます。

つまり、応募して参加が認められれば、集客以外、他のことには
気を散らさずに芝居作りに専念できます!
芝居の世界で自己主張してみたいあなた、この演劇祭で、
ちょっと“自分試し”をしてみませんか?

開催日時/会場
2010年6月15日(火)〜20日(日) 下北沢小劇場「楽園」
応募締切
2010年4月1日(木)必着
DVD審査あり
応募要項
http://www.aalunatic.com/news/20100217001.html
こちらのページの指示に従ってください。

たくさんの応募を期待しています!

同人誌

2010年3月7日投稿

押しつぶされた男(訃報 マーチン・ベンソン)

シャム王(ユル・ブリンナー)の家の家庭教師としてイギリスから招かれた
アンナ夫人(デボラ・カー)。その息子がシャムの王宮に向う途中、
出迎えの大臣一行を見て、びっくりして叫ぶ。
「大臣は、裸だよ!」
……言うまでもなく『王様と私』の冒頭シーンだが、その裸の大臣、
クララホームを演じたのが俳優マーチン・ベンソン。
もちろん、シャム人ではなく、生粋のイギリス人である。
ただし、顔が濃い。太い眉毛、ぎょろりとした目。
わが国の高松英郎にかなり似たご面相で、英米人にとってはよほど
エキゾチズムを感じさせる顔なのだろうか、何故かよく気がつくのは
外国人役である。『クレオパトラ』ではエジプト人、『ザ・メッセージ』
ではアラブ人、『オーメン』ではイタリア人神父、『暗闇でドッキリ』
ではフランス人、といってもこの映画は全員がそうだが、なんと
『Battle Beneath the Earth』ではアメリカ侵略をたくらむ
中国人の将軍役までやっている。

『怪獣ゴルゴ』ではゴルゴを見世物にする興行師、ドーキン。
太い眉毛をさらに描き足して、気障な口ひげ、べったりとなで付けた
髪の毛などはイタリア系なのだろう。
「巨大な怪獣ですよ、ごらんなさい。……奥さん、旦那さんと
比べたいですか。どうぞどうぞ」
などという呼び込み文句は、怪獣映画につきものの興行師役としても
元祖『キングコング』のロバート・アームストロング、わが国の『モスラ』
のジェリー伊藤と比べてもかなり俗っぽい。

『王様と私』の次に有名なのは『007/ゴールドフィンガー』で、
ゴールドフィンガーのフォート・ノックス襲撃計画のための
レーザーの密輸に協力するアメリカ・ギャングのミスター・ソロ。
他のギャングたちが金につられて計画に賛成する中、ひとりだけ
反対して、報酬の金塊を手にゴールドフィンガーのもとを去るが、
空港に送られる途中ハロルド坂田に殺され、自動車(リンカーン!)
ごと廃車プレス機で押しつぶされて鉄の固まりにされてしまう。
運ばれてきたその固まりを見てゴールドフィンガー曰く
「ボンド君失礼するよ、ソロ君から金をより分けないとならんのでな」
……考えて見ればそんな面倒くさいことしないでも、殺した死体を
どこかに放棄してしまえばすむだけの話なのだが、007の世界観
の中では、悪人は常に一般人の考えも及ばないことをしでかさなくては
ならず、この、死体ごとの圧縮プレスはその代表例であったのだ。
そして、こんなリアリティのないプロットを、観客に納得させて
しまえたのは、ハロルド坂田、マーチン・ベンソン、そしてゴールド
フィンガー役のゲルト・フレーベという、“濃い”顔の俳優たちが
大真面目にその役を演じていたが故、なのであった。
今の映画がいかにSFXの技術を向上させ、大金をかけても、
何故かいまいち印象が薄い感じがするのは、こういう顔の俳優が
少なくなったせい、ではなかろうか。

2月28日死去、91歳。老衰による、睡眠中の安楽な死であったと
いう。黙祷。

(写真右)探したらこんなミニカーがあった。
廃車プレス機で押しつぶされて金塊とソロの死体入りになった
リンカーンを乗せたトラック(笑)。
フォード・ファルコンのランチェロだそうだ。

ちなみに、このシーンがあまりに有名になり、端役だったはずの
ソロの名が知られるようになったので、007シリーズの原作者、
イアン・フレミングが原案のスパイものテレビ・シリーズは、
主人公の名前をタイトルに使えなくなった。もちろん、
そのシリーズは『0011/ナポレオン・ソロ』、アメリカでの
タイトルは『アンクルから来た男(The Man from U.N.C.L.E.)』
である。

伸び損ねた男(訃報 アンドリュー・コーエン)

アンドリュー・コーエン(ケーニグ)、2月24日、
オリンピックに沸いている最中のカナダ、バンクーバーで自殺の報。
41歳。少し前から行方不明で、捜索願が出ていた。

死亡記事の肩書きが“元子役”だったが、NHKでやっていた
『愉快なシーバー家』(すごいNHK的タイトル)ももう四半世紀の
昔か。
子役が大成しない、というジンクスは洋の東西を問わずあるが、
彼の場合、さらに父親がトレッキー(スタートレックオタク)たちの
あこがれの的であるウォルター・ケーニグ(テレビ第一作『宇宙
大作戦』のチェコフ役)ということで余計、世間から色眼鏡で
見られたことだろう。

http://www.youtube.com/watch?v=SUs0jTY0qIk
↑YouTubeに、父親のウォルターの記者会見の模様があって、
息子の死を涙をこらえながら語り、これ以上同じ病気(鬱病)の
犠牲者を出さないよう、訴えていた。
ここで涙をこらえるところがアメリカ的なのだろう。立派だと思う。
トヨタ会見で社長が涙を見せたのはやはりマズかった、と思わざるを
得ない。

ケーニグという珍しい姓は東欧系ユダヤ名前のカニグスバーグ
(Koenigsberg。ウディ・アレンの本名でもある)を略したもの。
コーエンというのはさらにそれを略し、日本で『愉快なシーバー家』
のときに勝手につけられた名前みたいである。勝手に名前変える
なよ、と思うが……。
http://www.youtube.com/watch?v=eYHieJQKZd8
↑自主製作ではあるが、このジョーカーなんか、これまでの映画
版のに比べもっとも原作に顔が近く、よかったのにな。
若い俳優が伸びるか伸びないか、これは実力や環境に関係ない、
まったくの運だと思う。父と同じく『宇宙大作戦』でスターに
なったジョージ・タケイもインタビューの中でそう言っている。
残念ながら彼はその運をつかみそこねた。
彼の罪ではない。
安らかに。

叩き続けた男(訃報 南方英二)

東京12チャンネル版『空飛ぶモンティ・パイソン』は、パイソンの
スケッチの間を今野雄二や秋川リサのトーク、そしてかのタモリの
コーナー(これがテレビのレギュラーデビュー)などでつないでいく
という構成だったが、もう一組、レギュラーだったのがチャンバラトリオ
のコントで、舞台でなく、屋外(大坂城とか)でロケをしていた。
モロに関西風のベタなギャグと、タモリやパイソンのズ抜けたギャグとの
落差が激しくて、大阪や京都在住の人たちは知らず、私たち
箱根以北の人間には、笑えたものの違和感はバリバリだった。

4人なのにトリオ、というのはちょっとアナーキーだったし、
リーダーがいるのにさらに別に頭(カシラ)がいる、というのも
奇妙だったが、メンバーの入れ替わりでいちいち名前や体制を変える
のが面倒くさい、というだけの理由だったようだ。

『空飛ぶ〜』では、ビデオ編集によるシュールっぽいギャグも
(多分、浮かないようにとのスタッフのアイデアだろう)後半は
出てきたが、基本、新撰組ネタなどのおなじみの掛け合いが
あった末に
「はい、そろそろ時間や時間」
と強引に進行を中断して、カシラこと南方が
「大阪名物ハリセンチョップ!」
という掛け声と共に伊吹太郎の顔面をバシーンとハリセンでしばき、
大げさに転げ回って痛がる伊吹に
「辛抱せえ、ジェニ(銭)儲けジェニ儲け」
と言い聞かせて終り、という一連のコントで、そのパターンは黄金律
的に全く変化せず、それは常に新しいことを面白がるというパイソンの
メンバー(や、あのころのタモリ)のギャグとは対極にあった。

「チャントリは花月などの舞台(イタ)の上でこそ光るので、屋外に
出してはいけない」
と森卓也が言っていたが、タモリやパイソンのギャグに開眼した高校生の
私の目にはいかにも古く映ったことは事実だった。しかし、また一方で
定番ギャグの強みというものをしみじみ学んだのも、その対比があった
からだろう。上記のジェニ儲け、のセリフはすっかりその後、私の日常の
会話の中に語彙として定着してしまった。

古いと言えばその体質自体も古かった。
叩かれ役としていい味を出していた伊吹は金銭的にルーズで大借金を
こしらえて吉本を追放、結城哲也は暴力団との交際をマスコミに叩かれて
これまた吉本を解雇、頭の南方自身も、事件こそ起こさなかったが競艇
マニアで、競艇に入れ込みすぎて家を二軒も手放すといったほどのハマり
ようだったそうだ。

困ったもの、と現代ではとられようが、昔は芸人なんて、みんなこんな
ものだった。と、いうか、一般的常識が欠けていればいるほど、
舞台の上でその芸は光った。社会のワクに縛られている人たちが、
やろうとしてもできない、そのワクの徹底した無視の代行こそが、
芸人の存在意義だった。デタラメに人生送れば送るほど、観客に
ストレスを解消させ得るのである。浮気をしただけで糾弾される、今の
お笑い芸人に、その能力はない。

南方は東映剣会の幹部であり、日本のチャンバラ映画史を語る際に
無視できない人でもあった。時には斬る側に回ることもある。
『忠臣蔵・桜花の巻』では介錯人として、師匠の中村錦之助を斬っていたし、
『女必殺五段拳』では、志穂美悦子相手に貫録十分な立ち回りをしていた。
それは、見方をヒネれば、クンフーアクションという、当時における
時代の先端対東映伝統のチャンバラの対決、ともとれた。

この歳になってしみじみわかるのは、世の中、新しいものだけでは
成り立っていかない、ということ。
いつも同じものを、同じところでやっているということが、いかに
古い観客を安心させ、新しい観客のアイデンティティを形成させるか
ということである。
昭和という時代がつくづく懐しいのは、激変の時代であった一方で、
変わらぬ文化というものがちゃんとあった、という理由によるだろう。
チャンバラトリオは、メンバーは上記のような理由でしょっちゅう
入れ替わっていたが、やっていることにはいつでも同じ、定番の安心感が
あった。訃報を聞いて奇妙な不安感にとらわれるのは、単に一芸人の死と
いうだけでなく、その”いつもあったもの“の喪失感によるものなのだろう。
合唱。

月を滅ぼした男(訃報 ライオネル・ジェフリーズ)

ハリーハウゼンの人形アニメが楽しい『H・G・ウェルズのSF月世界探検』
(1964)。今から三十年くらい前は昼間のテレビでよくかかっていた。
クォーターマス・シリーズのライターだったナイジェル・ニールの脚本が
遊び心に満ちて極めて秀逸で、人類初の月着陸船が月面で古びたユニオン・
ジャックを発見するという洒落っ気たっぷりの冒頭から19世紀に話が
さかのぼり、同じウェルズの『宇宙戦争』の、火星人が地球の微生物に冒されて
全滅するというオチをひっくり返して、一人の地球人がひいていた風邪がモトで
月世界人が全滅してしまうという皮肉に満ちたラストまで、クラシカル・SFの
粋を集めたようなストーリーがまことに楽しかった。
この、風邪っぴきで月に行ってしまった“うっかり博士”を演じたのが
ライオネル・ジェフリーズ。2月19日死去。
ちなみにウェルズと並ぶもう一人のSFの始祖、ジュール・ヴェルヌの
『月世界旅行』を原作にした『ああ月旅行』(1967)にも出演している。
よほど月世界が似合うのか、いや、クラシカルな世界観の話に似合う顔
なんだろう。

剃っているのかハゲているのかツルツルの坊主頭に巨大な鼻、その鼻に
負けぬ立派な口ひげ。007シリーズのアルバート・ブロッコリが
プロデュースしたファンタジー『チキ・チキ・バン・バン』(1968)
が代表作とされるが、こういうファンタジーには、見ただけで
ユーモラスさのただようこういう俳優が必要不可欠なのであった。

リチャード・レスターの隠れた佳作『ローヤル・フラッシュ』(1975)
では殺し屋・クラフトシュタイン。鉄製の義手をつけて優雅に(?)
ダンスなど踊っていた。この映画、『ゼンダ城の虜』のパロディ
だったが、その後、ちゃんと本家の『ゼンダ城の虜』(1979)
にも忠義の士、サプト将軍役で出演している。最も、主演がピーター・
セラーズのドタバタコメディであったが。

それにしても、83歳という享年がこれほど若く感じられた俳優も
ちょっといない。てっきり100を越えていると思っていた。
生年が1926年ということは、上記の『月世界探検』のときには、
まだ38歳だったのだ(写真をごらんいただきたい。30代に
見えますか?)。やはり若いうちから歳を食って見える俳優ほど、
俳優生命が長いという典型例だろう。『チキ・チキ・バン・バン』で
ディック・バン・ダイクの父親役をやったとき、ジェフリーズの
実年齢はバン・ダイクより6ヶ月若かったという。
http://www.youtube.com/watch?v=zNpWBMNyC0w&feature=player_embedded
↑歌うライオネル・ジェフリーズ。42歳!

やっと見かけの年齢が外見に追いついたあたりで病魔に体を蝕まれ、
長い闘病生活の末死去。本当に長い間、我々を楽しませてくれました。
こういう役者がいてこそ、映画は楽しいのである。
黙祷。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa