裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

14日

月曜日

おでん鍋のなかでグツグツとチワワが煮えて・・・・・・

よく読み間違えてギョッとします。

※『血で描く』文章チェック 『ホット・ファズ』観賞

朝8時起床。
蒸し暑いが、窓をあけて空気を入れ替える。
9時、朝食。
メロン、小さくて固いがやたらうまいトマト。

SF大会DAICON7の実行委員の人(マイミク)から
参加の誘いが来る。SF大会にはもう参加するつもりは
ないのだが、参加依頼の企画テーマが、
「橋下府知事の緊縮財政で、廃館される大阪府立国際児童文学館の
貴重な収蔵物を紹介して文化遺産の散逸を防ぐための活動をおこなう」
というもの。
これは参加に値するテーマであって、いま発言しておく必要性がある
のではあるまいか。戦後の時期の紙芝居を、公共の機関として
最も数多く(約4000点)、最も良い保存状態で保管していた
施設なのである。

入浴し、原稿ちょっと。
オノとスケジュールの打ち合わせ。
昼飯はシャケ弁。
連絡いろいろとって、バスで新宿、そこでちょっと買い物、
それからタクシー。

渋谷東武ホテル。
よっ、と松岡氏(談志の弟)に声をかけられたが、
老けたなあ、と思う。
ハッタリだけは相変わらずだが。

そこでメディアファクトリーSくんと落ち合い、
『血で描く』原稿つけあわせ。
要するに校閲の人間が読んで、字句の間違いや用語の統一を
チェックしてきたものを確認するわけである。
字句や用語の確認ならいいが、ここで第三者が読んで初めて発見
されるミスというのが案外あるので、
「いや、そこの段階で実は話が全くつながらず、成り立たないという
ことがわかる場合もあるんだ」
と昔、ある作家さんが恐ろしそうに話してくれたことがある。
そう言えば斎藤緑雨のエッセイにある作家が、連載小説中に唖を出して
ついうっかりある回でその唖にものをしゃべらせてしまい、翌号に
訂正を出して
「前回唖のものをしゃべりしは全く以て作者の不注意なり、今後は誓って
しゃべることなかるべし云々」
と謝った、という話があった。他人事ではない。

そんなことを聞いていたのでビビっていたが、数ヶ所、
時間関係のちょっとしたミスと、そのことを知ったという描写が
ないのに登場人物があることをすでに知っていることになって
しまっている、という場面がある以外、大きなミスはなく、ホッとする。
今回、書いていての苦労は文章をとにかく読みやすく、スピーディーに
ということであった(一章、ちょっと感じの変わる部分があるが)。
そこを褒められたのでいい気分。なんにせよ、今週いっぱいを
書き直しに費やさねばならないかと思っていたが、明日一日の作業で
済みそう。

事務所に戻るが暑く、汗を大量にかく。
服が濡れて不快なので、事務所備えのTシャツに着替えるが、
汗が止まるまで、しばらくパン一の格好で仕事する。
どうも肩が痛い、と思ったら、髪の毛の尖端が、肩の皮膚を
チクチク刺しているのであった。
家でこういう格好のときは大抵、風呂上がりなので、髪が
濡れているので刺さらないのだね。

やっと汗がとまって服を着たところでオノ、出社。
よかった。
スケジュールの件、いろいろ打ち合わせ。
どたばたどたばたで月日はたっていくのう。
それから事務所を出て、渋谷駅ハチ公前。
麻衣夢と待ち合わせて、渋谷シネマGAGAで映画『ホット・ファズ』
観賞。いや、映画はやはり女の子と観るもの、でしょう。

で、いや、名だたる映画マニアたちがやたら褒めるもので、
これはもっとマニアックな映画だとばかり思っていたのだが、
警察アクション映画へのやたら濃いこだわりはあるものの、
『キルビル』のような俺様趣味全開といった映画でなく、
しごくまっとうによく出来た映画である。
伏線の張りめぐらせ方が凄まじく、それを全て回収している
(事件の解決に結びつけている)ところが凄い。
キアヌ・リーブスの『ハート・ブルー』のワンシーンを大事なところで
パロっているのだが、それもちゃんとDVDでそこを前もって見せて
いて、未見の人が置いてきぼりになることを防いでいる。
オタ趣味全開だが、決してオタだけの方を向いて作っていない。
これはなかなか出来ないことである。

美しいが閉鎖的な田舎街を舞台にどろどろした事件が展開するのは、
英国ミステリの伝統で、ドーバー警部ものもモース警部ものも
ウェクスフォード警部ものもバーナビー警部ものもこのパターンで
みんな傑作・佳作ぞろいだが、『ホット・ファズ』はそんな英国の
田舎街で、ハリウッド映画的な拳銃ドンパチのアクションをやらかして、
しかも前記の英国ミステリの伝統を見事に受けつぐ、という離れ業を
達成させた作品である。
あ、そう言えば“わざとくさい美人を出さない”という英国映画の
悪しき伝統にも忠実だな。

警察官の退屈な日常業務をじっくりたっぷり描き、観客がそろそろ
退屈し始めたところでバン、とショッキングな事件を描き(見た目も
グロ度高し)、それを積み重ねていって、伏線が四方八方に伸びて
主人公ががんじがらめになったところで一気にそれを解決させる、
という話の持っていき方は見事である(もっとも、昨今のテレビドラマの
説明過剰に慣れてしまっている観客だと、観たあと“なんであれが
こうなの?”“どうしてあの人がこんなことしたの?”“あれって
いったい何だったの?”の連発状態になるだろうが)。
そしてキャラクター設定全部に意外性を持たせてラストで〆メ、終りだと
思ったところで……というもう一波乱、これでひとつ残した伏線を
使い切る、その手際には拍手。
不満を言えば邦題サブタイトルの“俺たちスーパー・ポリスメン!”と
いうのがちと、ダサいことくらいか。

麻衣夢が観たあと、
「どこかでこの映画にそっくりな映画を観たことがある」
という。『地獄の楽園』のときにテリーに奨められてみた
『ショーン・オブ・ザ・デッド』(同じ監督、主演コンビ)の
ことらしい。ゾンビ映画にリスペクトした同じ手法を、
今度は警察映画に用いたわけか。
それにしても、この映画を署名運動で盛り上げ、公開に
漕ぎ着けてしまったわたなべりんたろうさんの熱意には
頭が下がる。

観終って、少し渋谷の街を散歩がてら、馬え田へ。
個室に二人、だといかにもアヤシゲなので戸を開け放しておいて
もらって(麻衣夢ファン諸君、安心せよ)、馬刺し、タタキ、酢もつ
など食べながら四方山ばなし。
と、いうか、お仕事の話が中心になり、今後どうやって活動の
レベルを(質の面でも、商売の面でも)上げていくか、ということを
話す。デビュー当時のアイドル扱いに不満で歌一辺倒に方向替えしたとか
という話に驚く。向上意欲のある子というのはいいなあ。
 
溶岩焼きで私は焼酎、麻衣夢はご飯(ホントに好きだな)。
かなり食べて出たが、まだ時間に余裕あるので、
並びにあるバーに入る。ホワイトサングリアというのがあったので
それを頼んで飲みながら、まだ話し足りずいろいろと。
自分の欠点を自覚したら、その欠点をむしろ全面に押しだすといい、
とかアドバイス。結局12時過ぎまで話し込んでしまった。

渋谷駅で別れて帰宅。
返って目が冴えて、さらにネットしたり、ホッピー飲んだり。
3時近くまで起きていた。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa