裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

13日

日曜日

朝ドラ・ダンカン

情熱の女性ダンサーをめざす少女の奮闘を描くNHKの連続ドラマ。

※企画原稿 『社会派くん』ゲラ手入れ ミリオン原作

新式の静電気治療。
顔に金属製のテープを貼る。
指でテープを貼った顔を撫でると、
地肌の部分と金属テープの部分との電位差で
全身が刺激されマッサージの役割を果たす。
この治療法の解説を私の運転している車中でやっていると、
それを聞いた女性担当(何の担当者なのかわからず)が
急に笑いだす。
以上、今朝の夢。

9時まで寝る。
電話で起きるが、まだ眠い。
朝食、パッションフルーツ、メロン。
メロンは母がだまされて買った高いのだそうだが、
さすが高いだけあって甘い。

仕事場に戻り、日記つけ、入浴。
全身にまとわりついている寝汗を湯で流し落とす瞬間の
快楽は何ものにも替えがたい。生きててよかった、という
感覚になる。で、風呂上がりに冷えたオレンジーナをぐびりと
飲み干す、これがまた大快感。
基本的に夏という季節は不快な季節なのに、なぜみんな夏が
好きか、暑くなって欲しいと潜在的に期待しているかというと、
こういう、不快を払う爽快感が中毒性を持つからだろう。

それからT社F誌のKさんに頼まれていた、
企画のアイデア出し。
日記でこないだ“これを金とらずに書くのはあまりにも
もったいなさすぎる”と書いた件を読んでくれて、
「通ればお金(原稿料)が出るので企画出しませんか」
と言ってきて(まあ、そこまで露骨ではないが)くれたのであった。
さて、どうなるか。

暑い。エアコン、除湿ではそろそろおっつかなくなっている。
汗で机も床もベタベタになる。
アルコールタオルで床を拭き、キーボードの前にタオルを
広げて打つ。網戸をあけておいたら、小さい虫が入ってきて
飛んでいるので、蚊取り線香を焚く。
現在、これも汗対策で椅子には青畳マットを敷いているので、
青藺草の香りと蚊取り線香の香り、ああ、子供の頃の夏休みの
匂いだ、と、深く吸い込む。これも夏の快感。

昼はシャケと茄子味噌炒め弁当。
『社会派くんがゆく!』のテープ起こしがあがってきたので
それに手を入れる。手を入れるだけで原稿用紙10枚〜15枚分は
いくのではないか、と思われる作業量である。
「唐沢さんもメジャーになってきたんだからそろそろ温和しい意見
を言うようにすれば」
とよく言われるんだが、しかし過激な言説は癖になる。

書いてメール、気がつくともう6時近くだが、まだ外は明るい。
暑さも一段落したようなので、散歩がてら外に出る。
バス停で3〜4駅区間くらいの距離をぶらぶら歩き、肉のハナマサ
があったので入ってみる。いや、営業用の食料品の山に圧倒される。
オックステールの先っぽの部分の輪切りが安かったので一袋買い、
今度は反対側の道をぶらぶら歩いて、家具・食器店で前から
欲しかった小型の擂鉢を買う。

帰宅して、まずシャワーし、甚平に着替えてオックステールを
茹でる。一回、汚れ落としに茹でこぼし(大量のアクが出る)、
そのあと大鍋で屑野菜・ローレルなどと一緒に酒を足した湯で茹でる。
アクは茹でこぼしてあるのであまり出ないが、脂はやたら浮かんで
くるのでときどきすくって捨てる。

檀流クッキングにはオックステールは“水からたき上げて、丁度八時間
目に、ほどよい柔らかさになる”と恐ろしいことが書いてあるが、
シチューならともかく、茹でたものにかぶりつくには2時間で十分。
ときどきアク・脂すくいに鍋の前に立つ他はまた原稿書き。
ミリオンの新猟奇本のマンガ原作と、事件まとめ。
カルト集団事件を扱うたびに思うのは人間の理性の弱さ。
暴力という行為、というより暴力に簡単に訴える粗暴さが結局は
人を支配する決定権になるということ。
人々はそれを“カルト集団だからそうなのだ”と思うだろうが、
実はこれらのことは日常にいくらでも見いだせる。
強弱があるだけで、人間関係というのはそもそもがカルト(非条理的
信仰)を根に持っているものなのだ。
これは、私のモノカキとしての通奏低音的テーマ。
いつか、これと正面から向き合った作品をまとめようと思う。

途中で大河ドラマ『篤姫』。家定と斉彬が一回の話で二人とも
死んでしまう。つくづくこの時代の人間は虚弱である。
最近、高座で『裏篤姫』をかけることが多いので、特に家定の
描写が興味深い。脳性麻痺と言われている将軍をこう描くか。
終りあたりで某番組から電話。出演依頼、つなぎの使われ方で、
メリットにならないので断る。思ったより恐縮していたので
ちょっと気の毒になるが。

見終わって、また原稿。9時半に完成させてメールし、さて、夜食。
柔らかく茹で上がったテール肉を箸でちぎり、タレ(醤油、豆板醤、
ゴマ油、刻みネギ)につけて食べる。コンドロイチンたっぷりの
ねっとりさが美味い〜。本当は1個々々をつまんでそのまま
かぶりつきたいが、あまりにコンドロイチン分が多いので、
ウエットタオルで拭いてもとれないくらい指がねとねとになる。
その他、モヤシナムル、ゴボウサラダなど。
黒ビール1缶、黒ホッピー2杯、蕎麦湯氷割2杯。

LDでNHKスペシャル『絵巻切断』。これも見るのは十年ぶりくらい。
1983年の放送。出てくる人が『吉兆』創始者湯木貞一だとか
松下幸之助、昭電疑獄の日野原節三だとか、みんな高齢とは言え
まだ生きているのが凄い(松下幸之助はもう、何をしゃべっているのか
ほとんどわからない)。25年前にはまだ、こういう人たちが
存命している、ということでわれわれは歴史につながっている、
という実感を持つことが出来た。今の世代に歴史の実感がないと
言っても、これは仕方がないなあ、とつくづく思う。
その他、007映画のメイキングなど(これはDVD)見て、
1時就寝。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa