裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

22日

水曜日

ご行為に甘えて

 あの、そこを舐めていただけるのでしたら、ついでにここも……。朝6時半起床、窓外からはしきりに雨の音。入浴、8時朝食。バナナ、キウイ。読売新聞の『人生案 内』欄の相談が笑える。
「60代の主婦。結婚して30年以上が過ぎ、子どもたちはみな成人しました。相談というのは、夫のことです。食後、夫は入れ歯を外して洗うのですが、洗うところが問題なのです。台所の流しに置いてある食器類の上で、蛇口から水を出しながら洗うのです。これが嫌で毎回、注意するのですが、わかってくれません。何も汚くないと本人は言うのです。ほかのいろいろなことには目をつむってきたけれど、これだけは我慢できません。毎日けんかが続き、愛情も冷めてしまい、今では憎しみすら感じます。外から見たらささいな事かもしれませんけれど、私はぞっとします。私がおかしいのか、夫がおかしいのか、回答者の先生方に判断していただきたいと思います」
 なんか『コボちゃん』のエピソードみたいで笑ってしまうのだが、まさにその“他人から見れば笑われる”レベルの問題であることが本人には悲劇であり、また、こと入れ歯の一件だけではないものがその底にあるような気もする。回答者の大森一樹は そこのところがやはりよくわかっていない。

 日記つけ、11時出勤。『モノマガジン』原稿をメールする。昼食、シャケと黒豆納豆、卵スープ。マイミクの某氏の日記で、“蟻の戸渡りを蚊に刺された”事件の記述あり。抱腹絶倒。“男にしかわからない痛さ”という名言(小西得郎)があるが、“男にしかわからない痒さ”。などとノンキに笑っていたら、目を白黒させるものもあり。急速に鬱になって参る。知り合いがいろいろメールくれる。優しいことかな。

 日テレからメール&電話、こないだの打ち合わせを全部チャラにするような会議の決定があったとのこと。困るんですが、といろいろ電話口でやりとり。それで2時の角川書店との打ち合わせに遅刻。時間割にて、Oneテーマ21H氏。裏モノ日記の読者であり、ずっと以前からの私のファンであるとか。有難し。持ってきてくれた企画もちょっと気恥ずかしいものだったが、なんとかスケジュール合わせてやりましょ う、と返事。

 時間割から出たら渋谷公会堂の前、氷川きよしコンサートでにぎわい。若いダフ屋 の兄ちゃんが
「あ、カラサワセンセイだ」
 と手を振る。ここまで顔を広めて貰った日テレには感謝しなければいけないわけだが。

 仕事場に帰って、さいとうさん、六花マネなどとメールやりとり。飲みのお誘いもあり。さて。幻冬舎Yさん(とても可愛い)から原稿催促。幻冬舎Nくん(別に可愛くない)から打ち合わせ日取りの件。集プレからゲラチェック稿。今回はネタ2ヶなので、雑学がかなり盛り込めていい。アサ芸からもゲラ送られてくる。一カ所言い回しの重なり、チェック。今日は思いがけないところで2人からアサ芸の連載を褒めら れた。楽しく書いている連載を褒められるのはうれしいもの。

 二見書房の、進まず。ミリオンの原稿も、書けず。テンション低し。10時帰宅、アサリと水菜の鍋。アサリの貝柱が殻に残るのがもったいない、と思う私は貧乏性なのか。ホッピーと黒ビール。自室でAIPのB級作品集のビデオ見る。水割り缶大小それぞれ一缶。K子ごきげんで帰ってくる。ワイン飲むと必ずいい機嫌になるのは不思議。某人物が意外な人物からも苦手とされているとの話をウレシそうに語る。

訃報補遺  まあ、『謎の円盤UFO』のマイケル・ビリングトンとエド・ビショップといったオタクにとっての超大物が亡くなっているのだが、彼らについては他の方々も語るこ とだろうから、私しか語らんであろう役者さん二人。
ロバート・クラーク6月11日死去、85歳。
 ロバート・クラークったって誰も知らないだろうが、 写真を見れば怪奇映画ファンならアアと思い出すだろう、『太陽の怪物』(1959)で、あの醜怪な火ぶくれモンスターを演じた俳優さん。この映画ではなんと製作、監督、主演の三役を兼ねている。他に『惑星Xから来た男』、『女宇宙怪人OX』なんて映画に出演、B級映画専門俳優のように世間では思われているが(いや、実際そうなのだが)、監督、制作としてはちょっと頑張って、製作で航空戦記映画の佳作『暁の出撃』(1955)、監督でサスペンス映画の佳作『暗闇にベルが鳴る』(1975)などを世に送っている人物。『暗闇にベルが鳴る』は、主演が『ロミオとジュリエット』のオリビア・ハッセー、『2001年宇宙の旅』のケア・ダレー、『スーパーマン』のマーゴット・キダーとなかなか豪華な面々なのであった。あと、1991年のホラー映画『ポップコーン』ではメイクアップを担当。これは映画自体が50年代ギミック・ホラーへの愛を込めたマニアックな映画なので、たぶん彼の起用もそういう意味合いだったんだろ う。

ロン・ランデル死去。ロバート・クラークと同日に死去、86歳。
 無名時代にSF映画『Captive Women』(1952)で共演しているらしい。『スパイ大作戦』などのテレビにゲストで60年代やたら出ていた。カルトホラー映画『海獣の霊を呼ぶ女』(1956)にも出ていて、この人もB級ホラー映画俳優に分類されるか、というところを60年代に大作映画に立て続けに出演、記憶 に残っているのは『史上最大の作戦』(1962)で、激しい戦闘のさなか
「すいません、記事送りたいんで軍用電話貸してください」
 とノンキなことを言って断られ、仕方なく伝書バトを使って記事を送ろうとしたらドイツ軍の方に飛んでいってしまい、空に向かって
「この裏切り者ー!」
 と叫ぶ従軍記者。『キング・オブ・キングス』(1961)ではローマの100人隊長(『偉大な生涯の物語』ではジョン・ウェインが演じた)で、迫害されるユダヤ人たちに同情的で、任期が過ぎてもローマに帰ろうとせず(後任のものが迫害を強化しないよう)、ピラト夫人がこっそりキリストの秘密集会所に通うことも見逃しているという、かなりいい役。たぶん、これが映画で演じた一番の大役だろう。とはいえ地味な人であることには変わりなく、クラシックSFオタクには、『ウルトラ・ゾーン(アウター・リミッツ)』のメガゾイド、と言うのが一番通りがよかったりするの がやはりというかなんというか。

エロの冒険者さんのサイトに、 『太陽の怪物』 http://homepage3.nifty.com/housei/TheHideousSunDemon.htm
 と 『海獣の霊を呼ぶ女』
http://homepage3.nifty.com/housei/THESHECREATURE.htm
 の詳しいレポートがある。

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