裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

4日

土曜日

暴利バンザイ!

 滝田栄大儲け。朝6時半起床。コーヒー入れて、昨日受け取ったサンドイッチで朝食。マッドハッター衣装にレーザーポインター、ハサミ等の使用道具などを確認、日記つけ。これまでトンデモ本大賞の当日はいざこれから出かけるという間際までやれアレを忘れたコレがないとドタバタだったのだが、今年はかなりの余裕。やはり準備 優先できちんとやっていたからであろう。

 空模様は曇。天気予報は大雨注意報。とはいえ、予感ではどうも晴れそうな。単なる希望的観測ではなく、体調で気圧がわかるからである。寝不足もあるので麻黄附子細辛湯一応服用。出かける寸前に一件、忘れ物思い出す(受賞作書いた紙を入れる封筒)。K子がブーたれたが、これも会場でバタバタしないですんでラッキー。思えば今回の大会、衣装で悩んでいたらその一週間前にくすぐリングスでアリスと帽子屋の 帽子を借りられたり、実に幸運に恵まれている。

 案外大荷物になったのでK子とタクシーで九段下まで。一階のところで楽工社Hさん(社長だ)が本の荷下ろしをしていた。大会番長のIPPANさんが忙しく立ち働き、警備番長のしら〜さんがポイント部分をチェック中。舞台の上ではすでにI矢くん、のび太くん、K川さんなどが書画カメラとプロジェクターのテスト。ここでミスひとつ、最終打ち合わせで『世界一……』の生徒たちの座り位置を上手から下手へ変更したのだが、会場の人に渡していた構成台本が打ち合わせ以前のものだったため、照明が変更以前の位置に合わせて設えられてしまっていた。今更照明変えるのは時間 がかかるので、それでいくことにする。

 楽屋でおぐり、声ちゃんなどともう一度やりとりのところ読み合わせ。構成台本を 読みながら山本会長がニヤニヤ笑っているので
「何がおかしいんです?」
 と訊いたら、
「この“キチガイ……帽子屋”“そこで切るなよ!”のやりとりが面白い」
 とのこと。実はこのやりとり、第二回だったかの打ち合わせを新宿の談話室滝沢で やったとき、IPPANさんが進行確認のときにそう読んで、
「そこで切るなよ!」
 と思わずツッコミを入れたのをそのまま取り入れたもの。

 メンバー次々楽屋入り。ひえださんの発案で、現在リンパ系の病気で入院中の会員のK氏に見舞の寄せ書き。高座着に割烹着という春風亭昇輔には“佳声先生のお相手を”と頼んでおく。名古屋からこのために上京の明木先生からは論文集と御著書の恵贈にあずかる。明木先生にはファンが多いので今回も期待度大、である。佳声先生も 息子さんと会場入り、さっそく紙芝居のライティング打ち合わせ。

 前回の下見のとき、会場の係のTさんが
「こないだ教育紙芝居やったときにも、紙芝居をカメラで撮ってプロジェクターで映したんだけど、その時は照明が反射しちゃって、スクリーンに何が映っているのか全然わかんなかったんですよね〜」
 とか言って、佳声先生かなり気にしておられた。で、今回は
「午前中のリハ時間はそっくり佳声先生の照明調整に費やされるかも」
 と覚悟していたのだが、意外にもこれが実にすんなりと問題なく決まる。要するに佳声先生の紙芝居舞台はプロ仕様でちゃんと蛍光灯などが仕組まれており、ただたんに紙芝居のみをカメラで映すのではないということ。それと撮影する息子さんの慣れの違い。ともあれこのおかげで発表などのリハにある程度余裕持って時間がとれることになる。後で聞いたら新田五郎さんなどは、このリハのおかげでダンドリがやっと 具体的に頭に入り、助かったとのこと。

 受付の方にはうわの空の金澤くん、快楽亭ブラッCなどがそれぞれチラシを持って入り、折り込み作業開始。販売ブースにUWANOBONなどを置く算段。楽屋ではひえださん、あやさん、フェルミウムさんなどが三々五々コスプレ試着開始。佳声先生と声ちゃんの会話、
「いやあ、可愛いですなあ、そのタヌキ」
「タヌキジャアリマセエン」
 袖でらじうむ小山さんと講師登場時のBGM打ち合わせ。K子から
「少し楽屋で座ってないと足が棒になるわよ!」
 と注意されたが、やはり総合進行役として現場確認はしないと不安。そういうK子もゴミ捨ての指示と仕切り、二次会の会費徴収と席を温めているヒマなしの活躍。しかし、去年に比べるとスタッフも場慣れしているせいか、驚くほどサクサクと進む。リハ終わってまだ開演まで余裕があるとは、とI矢くん驚いていた。第一回のときは 30分以上、リハのせいで開場を遅らせたからねえ。

 で、開場予定通り12時。受付開始30分ですでに一階席がほぼ満杯になり二階席 を一般客に解放する盛況。楽屋で小山さんがアリスのおぐりに
「あの、紀伊國屋であずさ役やった方ですよね?」
 と。全然イメージが違うのでわかんなかったらしい。

 楽屋に訪ねてくる人もいろいろ。幻冬舎のN田くんと廊下でmonoマガ連載打切りのことなど立ち話。おぐりがアリスのコスプレで走り回っているのを見て
「おー、やってますね」
 と。話しながら窓外を見て驚いたのは、どんよりとした曇り空だったのがこの時間になると次第に晴れてきて、まぶしい陽がさしてきたということ。去年も梅雨の合間 の晴天での開会となった。天長節とトンデモの日は晴れる、か?

 私もマッドハッターコスプレとなり、弁当を使う(逆にすればよかったか)。軍事マニアのIさんは以前“じゃあボクは西洋甲冑を着て会場案内係をやるかな”と言っており、ジョークだと思っていたのだが本当に着て来たのに仰天。一方フェルミウムさんは巫女姿で猫耳というワケワカンナイがオタクには直球ストレートというコスプ レで受付嬢。お客は度肝を抜かれるであろう。

 今回高須クリニックの提供を受けて製作したウチワが会員にも配られる。
「6月9日は包茎手術の日」
 ココロは“剥く”。今日の客にはイタいかも。ヤフオクで絶対出るぞ、と話す。

 さて、いよいよ開場時間。5分オシになったのはこちらの都合ではなく、来場するお客様の列がとぎれず、開演時間になってもまだ入場しきれていない人がいたため。声ちゃんのウサギが時計を抱えて出て挨拶したところで恒例の“威風堂々”により開 幕。第一回の大会の後、クラシック音楽をやっている方のネット日記で、
「それにしてもあのトンデモ本大賞でかかっていた『威風堂々』の演奏は優れていたなあ」
 と書かれていた。このCD、ひえださんの提供による『千客万来』という、パチンコ店とかの開店時の客入れ音楽集なので、そんないい演奏だとはツユ思わず、驚いた ことであった。

 開幕前にはずっと、と学会員でもある不気味社さん製作の『豪快な歌声』のCDを流していた。東宝怪獣映画の伊福部ミュージックを男性コーラスが大まじめに熱唱するという趣向のもので、ちゃんと使用許可取得済みという凝ったもの。しかしながら やはりキテいるコンセプトのCDであって、楽屋でFKJさんと
「なんか『2001年宇宙の旅』のモノリス発掘シーンみたいだね」
 と話す。
「これ、最初に入場したお客さんは1時間ずっと聞いてるんだな」
「洗脳されないか」
 と植木さんなんかとは言い合っていたが、やはり洗脳されたようで、開田さんのブースで売っていたCDは開演前にもう売り切れていたみたいである。

 で、出て司会。おぐりアリス、最初はやはり緊張のせいか、こっちが全然台本と違うことアドリブでしゃべってしまったせいか、アタフタ気味だったが、次第にリズムをつかんできて、自分の仕切りの場に変えていく。『世界一受けたい? トンデモ授業』のコーナーでの司会ぶりには楽屋で何度もドッと笑い声があがったとか。もちろん、司会に負けず出演者たちもみな、場を自分のものにしていく名人たち。おなじみ皆神さん、植木さん(白衣に、なぜか発表資料を肉のハナマサの袋に入れて持ってくるというヘンな先生)、明木さん、談之助さん、そして新田さんと、それぞれ持ちネタ大ウケ。しかも時間をきちんと袖でI矢くんと声ちゃんの連携プレーではかり、時 間になると声ちゃんが鐘を鳴らしながら壇上往復という、絶対に
「マキ(急ぎ)の指示に気がつかなかった」
 という言い訳の効かない指示にしたおかげで、サクサクと進む。

 講師の中には、もっとじっくりとツッコミを入れて、発表対象作品の本質にせまるまでやりたい、という人もいたかもしれないが、と学会の活動の多岐に亘るところを見せるための見本市がこの大会全体、かつこのコーナーの眼目。そして今回の実行委員の秘かな裏テーマが
「どこまでこれだけ多彩なプログラムを時間通りに進められるか」
 だった。昨年が前半終了時点で1時間オシ(!)という状況だった故の反省から定められた目標である。最後、総評を、トランプをちりばめたウェディング・ドレス姿のひえださん、青い中国服の本郷さん、黒のメイド服に眼鏡、猫耳という自称“オタク三重苦御用達”の開田あやさんにコメントをお願い。これも台本にちゃんとセリフ 入れておけばよかった。

 ここで10分間の休憩(トイレタイム)を入れたのも去年の休み時間にトイレに長蛇の列が出来たことの反省から、“入れましょう”と提案されたもの。今回の大会でわがと学会員の実務能力に秘かに舌を巻いたのが、“前年の反省をきちんといかし、対応策を立てる”ということだった。まあ、どこもやっていることかもしれないがそれがここまできちんと処理され機能されたイベントというのを見たことがない。この大会をあと数回続けて経験値積めばと学会は大規模イベント請負でメシが食えるよう になるのでは?

 で、そのあとが山本会長(やっと登場)による候補作紹介。パネラーには志水さん植木さん藤倉さん眠田さん皆神さんの運営委員、それに急遽永瀬さんも参加してきてくれたので急いで椅子の数を増やして。会長の発表また今年は格段にうまく、笑い待ち等のテクニックも数年前とは比較の段でない。当然ワッワのウケ方。これは当初の予定よりちょっと延びた。しかしこれも想定内(やな色がついたな、この言葉も)の 誤差で、その分、投票に当てる休息時間を短縮させることで調整。

 もう一度司会トリオで出て、パネラーの運営委員を紹介し、投票方法について説明して休憩時間宣言。投票方法は最初の台本では山本会長登場のときのやりとりで説明する予定だったがスッ飛ばしてしまい、おしまいの方に回す。おぐりがアタフタするかと思ったがちゃんと対応してくれてありがたし。声ちゃんはもうトンデモ本大賞ではおなじみだが、おぐりのアリスも、今回、満場のオタクたちのハートをつかんだ模様。その証拠に、休息時間に物販コーナーに行ってみたら、うわの空同人誌販売ブー スに萌えファンたちが列をなし、みんな、彼女にサインを求めていた。

 みずしなさんがいつのまにか販売ポップを描いて並べ、自らも売り子をやってる。左隣が談之助さんの売る『本家立川流』、右隣が山本会長のハードロリ小説『チャリス・イン・ハザード』で、
「ロリコンにはさまれて売っております!」
 と呼び込んでいたのは大出来。

 他の運営委員は壇上でサインしているが、私は今回、招待者が多いので二階席(招待者席)に上がって、招待状を出した人々の間を回って挨拶。もちろん、さすがにこのときは帽子は普通のにかぶりかえてである。蜂巣敦さん、幻冬舎Yさん、GBのHさん(初めて実際に会ったが若いので驚いた)、どどいつ文庫さん、あぁルナの橋沢さん、二見書房Yさんとお連れのTさん、田中順子さん、まるさん、早川書房のAさん、ミリオンYくん、村田らむくん、野沢義範くん、ぎじんさん(シルクハットは潮 さんゆずりですか? と訊かれた)、中央公論社Nさん。

 今回は出した招待状への反応率が非常にいいのに驚く。それから、私が招待したのではなかったが、某社の新書部の方に、お仕事のことで是非、と名刺をいただいた。イベントでこんなに楽しくしてしかもお仕事にまでつながって、いいのかしらん。

 販売ブースに戻ったら、なんと芦辺拓さんがいた。新作『電送怪人』をいただく。 楽屋で、同じく本を貰った山本会長が
「レトロ作風の人ってうらやましいなあ、今の時代に『電送怪人』なんてタイトルで本出せるんだからなあ。ああ、ボクも出したい!」
 と叫んでいた。

 さて、後半はもう楽。いよいよ佳声先生の登場で、『妖魂まだら狐』。実は会場には『猫三味線』をDVD化してくれるイマジカエンタテイメントのSさんはじめ社員の方々が見えており、彼らへの佳声先生のお披露目の意味もあったのだが、いや、会場大受け。旗本退屈マン(市川右太衛門そっくりの主人公が不動明王から正義の剣と兜とマントとブーツをもらい、それを来てスーパーマンになる)が空中に舞い上がるシーンで大拍手。佳声先生の歌う“旗本退屈マンのうた”の時には手拍子が鳴った。最初“紙芝居ですかぁ、この規模の会場でうまくいきますかね?”と半信半疑だった会場のTさんが下手で、おぐりが上手の袖で、ずーっと紙芝居に見入っていたのが印象的だった。

 すでにこの間には楽屋で集計が必死で行われ(今年は投票率が異様に高く集計に時間がかかる)ており、またK子が例によってキーッとうなり声をあげながらゴミ点検をして、撤収の準備に余念がない。投票箱はゆうパックの箱の改造で、会員の駿河くんの手作り。彼はまた開場前の階段の踊り場で長蛇の列の客の相手をして爆笑させていたと、K子が褒めていた。ここまでいろいろ自主的に分担して大会に参加してくれるスタッフたちの存在がこれだけのスムーズな進行をもたらしているのである。

 紙芝居終わり(佳声先生もわかっていて、と学会だというので、最後にちゃんとオマケでUFOが出てくる『キンちゃんコロちゃん』シリーズの一エピソードを探し出して持ってきて演じてくれる。もちろんバカ受け。佳声先生を呼ぶことを企画したこちらも面目を保ってホッとする。終わったところでおぐりと二人で出て、佳声先生とちょっと会話。『妖魂まだら狐』、今回は6回分をやったが、実は全40巻くらいの大長編であるということ、昭和30年ころに、映画がワイドスクリーンになった頃に紙芝居もまけじと大判になったものの一つであるということなどを解説してくれる。

 また、幽霊が殺されてその死骸が川に浮かぶというようなトンデモない話(『五十鈴姫』のことね)が紙芝居にはやたらある、みたいな話もウケる。そうこうしているうち、声ちゃんが出てきて、選考結果が出たことを告げる。山本会長、運営委員並んで、結果発表。約501票の投票中、384票を独占して副島隆彦『人類の月面着陸はなかったろう論』が受賞。トンデモ本大賞の歴史も長いが、ここまでの得票率を得て受賞た本はなかったのでは。

 そこで本日の出演者全員が壇上に揃い、拍手のうちに閉会。
「せっかくこれだけコスプレが揃っているんで、カメラお持ちのお客様方、どうぞ最前列へいらっしゃって撮影大会を」
 と声をかけたら、いやはや目の前がカメコ(カメラ小僧)の乱立状態となる。児玉さとみさんまでその中に。“目線くださーい”“カオ、くださーい”と、プロの現場みたい。前の席に座っていて立ち後れたお客さんは可哀想に、撮影タイムが終わるまで出られない状態となった。

 楽屋では撤収作業、こちらも急いで着替えて撤収用意。イマジカエンタテイメントの人たち、田中順子さん、島敏光さん、某出版社の人(私の名刺を貰いに)など取っ替え引っ替え挨拶にくるのに応対しながら。イマジカのSさん、佳声先生は“文句なし、最高でした!”とのこと。

 どどいつ文庫伊藤さん、
「今年は唐沢先生があまりしゃべらなかった」
 と。いや、このマッドハッタースタイルでコメント席に並ぶのはいくらなんでも気がひけたんで。楽屋でもまだ撮影続行、志水さんがウエディングドレス姿のひえださんと並んで記念撮影、昔を知る者みなひそかに涙。

 楽屋で荷物を搬出する車両係が“大変だー”とか騒いでいる。昼間はあんな陽が差したのに、なんと外は天気予報に義理立てしたか大雨。ちょうど会が終わった時刻あたりにドドッと降り出したそうで
「ああ、オタクの一念で雨雲をバリヤーしていたのが、終わって気がゆるんだせいですねえ」
 などとみんな話している。

 一階ロビーはごった返していたが、さてあるべきでもないので会場まで、佳声先生と息子さん、それにおぐりを乗せてタクシーで一足先に秋葉原の万世へ。車中いろいろと話す。佳声先生も今日の紙芝居の反応にご機嫌よろしく、
「ああいう質の高いお客の前でやると演者は腕が上がります」
 とのこと。ご機嫌のあまり、『キンちゃんコロちゃん』ネタで下ネタまで開陳してくれて息子さんが“何を言い出すんだ〜”と呆れていたが、かなり時代がかった、高度な(?)下ネタだったのでおぐりが下ネタとわからず、ポカンとしていたのがまたオカシイ。運転手さんの方にウケていた。

 万世、6時半からの貸し切りだったのでまだ開いておらず、少し待つ。そうするうち続々とメンバー集まってくる。みんな盛況の余韻で興奮気味。こういう雨の降り方だと体調が大幅に崩れる私やあやさんも元気だったのは脳内アドレナリンが出ていたせいなのか。フェイズさんは紙芝居に感動の模様。開田さんたちは同人誌をほぼ、売り切ったとか。うわの空のUWANOBONも60冊以上、しかも開場時には売れずに、昼の休み時間に(壇上でアリス見た連中にであろう)羽根が生えたようだったとのこと。思惑通り。

 やがて店に入り、大会番長IPPANさん現れたところでまず私から最初の挨拶。「今回の大きなテーマは、内輪の発表会のノリで成功した第一回、それを大きな会場でそのままやってハマリ損ねてしまった第二回を引き継いで、会場の規模にふさわしい、ショーとしての完成度を求めた会にしようということでした。そのために、司会にうわの空からおぐりゆかを借り、また梅田佳声先生をお招きするといった、ちょっとした実験を行ってみました。結果としてそれはかなりの成功を見たと思います。会員も観客もと学会に求めるものはさまざまで、来年は来年でまた別のテーマを設定することもあるかも知れませんが、しかし今回、この進行、そして集客、時間調整、それらひっくるめてここまでの達成度を実現できたのは、ひとえに大会番長IPPANさんの頑張りによるものだったと思います。ではIPPANさんに乾杯の音頭をとってもらいましょう」
 と渡す。
「これだけの会をトラブルなく終わらせられたのがとにかく成功」
 という地味めな自己評価が彼らしい。とにあれ、乾杯。自己評価は地味だったが、その後の握手は熱かった。

 おぐり、小山さん、高橋さん(生徒役で壇上に上がってもらった)などと会話、あとはそれぞれ席を移って。佳声先生のお相手を、と思ったらFKJさんが正面に座って熱心に質問し、佳声先生が嬉しげに答えていた。最高の相手役。

 IPPANさんはさすがにクタビレ果てたか、料理にも箸をつけず、途中で座敷席で寝転がってマンガの本を読み始めていた。いや、わかるわかる。イベントに全神経集中したあとはこうなるものだ。九州からやってきたエロの冒険者さん、ぴんでんさん、獅子児さんはぴんでんさんの恋愛ばなしで盛り上がり中。ぴんでんさんは“生おぐり”萌え、になっていたらしいが。

 楽工社H社長きたのでまた挨拶させ、私はうわの空のメンバーの席で雑談。おぐりが
「植木さんの発表したパンダの写真がメチャ可愛い。欲しい」
 と。エッチネタなのだが
「パンダはエッチじゃないです」
 と。モナぽさんの顔がどこかで見たと思っていたら楼蘭の壁画の美女に似ている、と言ったらツチダさんに大ウケ。

 このあいだの例会では料理がかなり余っていたが、さすがに今回は昼に仕出しの弁当食ったきりでみな空腹だったせいかあっという間になくなる。“賄い征伐”という古い言葉を思い出す。それでも、これも前回の反省点の見事な対応だが、量の豊富なこの万世を探し出したおかげで、みな腹一杯食べて満足げ。

 最後の〆の挨拶を、ふつうはこういう場合運営委員の誰かに頼むのだが、向後は若い人たちに大会運営はまかせていきましょう、ということでブタカン番長のI矢くんを指名。IPPANさんがオモテ番長、I矢くんがウラ番長といった感じでまったくこの二人で今回の大会は持っていたのだが、朝からこの二人、自分の持ち場をかけずり回ってばかりいてほとんど顔を合わせていないというのが面白い。

 で、I矢くんの挨拶
「みなさーん、家に帰るまでがトンデモ本大賞ですからねー!」
 おめでとう、ありがとう。出る頃には雨もあがっていた。まだまだ意気軒昂でメイドパブ探訪に出かける豪傑組もいたようだが尋常でないくらいクタビレて、すぐタクシーを拾い、談之助さんと相乗りで帰宅。コスプレで汗まみれだったので風呂沸かして入り、K子にちょっと背中を揉んでもらう。ミクシィのぞくとすでに感想いくつかアップ。お客さんの意見も多く絶賛だったが、
「(他の)客が臭い!」
 という声が多いのに苦笑。こればかりはウチの責任ではない。次は宣伝告知の中に
「おいでになる際はシャワー浴びてからお願いします」
 とも書けないし。

 いくつかメールのみして寝る。これが11時。2時に目が覚めて、またミクシィ覗きつつ、水割り缶一本。この水割り缶のまあ、おいしかったこと。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa