裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

8日

水曜日

おそ松チョロ松カラ松トド松一松無法松

 まったく、一人だけどうして車引きなんかになっちまったんだろうねえ。朝6時起床。仕事つまりすぎで逆に手がつかず。母校から講演の依頼、どうしようかと思っていたらスケマネからの連絡でその日は別口予定が入っていることが判明、結局行けなくなる。行く方に心傾いていたので残念だが、また依頼も来るだろう。なんか、こないだのサンウェーブの会での講演、代理店は大変喜んでいるようであった。

 朝食8時、ペリカンマンゴーと目玉焼き。コーヒーに温スープ。シンコー・ミュージック会長草野昌一氏死去、いや、その名前でなく60年代ポップスにかかせない訳詞者だった漣健児の名前の方が私には、というか、ほとんどの日本人には大きいだろう。アメリカン・ポップスは60年代の時代の先端をいくものだったが、漣健児の訳詞のセンスは決してその時代の先端を行く者にではなく、どちらかというと地方在住者のレベルに合わせていたあたりが、当時まだまだ泥臭かった日本においてアメリカン・ポップスを津々浦々にまで普及させることに大きな効果があったと思われる。
『チンチン電話』(『Din Din Din』)
『アカパルコ(原文ママ)のお転婆娘』(『Acapulco』)
 などというタイトルセンスもそうだし、『ルイジアナ・ママ』の
「祭りがあったある晩に
 あの子誘って二人きり
 ダンスにいったのさ
 そしたら彼女がボクに打ち明けた
 ボクが好きだって
 ビックリ仰天有頂天
 コロリといかれたよ」
 などという歌詞、また『抱きしめたい』で
「Oh year,I’ll tell your something」
 を
「オープリーズ オーイエイイエイ おまえを抱きしめたい」
 と訳すなど、子供時代に聴いてどうにも洒落てないなー、と思っていたのだが、今改めて見ると実に60年代テイストでいいのである。思えば『ミッキーマウス・マー チ』もこの人の訳詞だった。アニドウ出身者としても感慨深い。

 季節の変わり目は人もよく死ぬのか、K子は庄司陽子先生のお母様が亡くなったのでその葬儀に出かける。一緒に出てタクシーで仕事場。連絡いくつか。原稿、ツマリツマリ。来週になれば余裕ありまくりなのに、どうしてこの撮影とか講演とか収録と かのギッシリつまっている週に〆切が集中するか。

 11時、タクシーで代官山。おぐりと待ち合わせだが、携帯に電話、いかにも彼女らしい失敗でちょっと遅刻。これあるを期して少しカットハウスの時間を待ち合わせとズラしておいて正解。彼女が絶対遅刻も道迷いもしないキャラになったらつまらなくなる。管理をきちんとして、そのキャラを万全に活かすよう体勢を整えるのはプロ ダクション側の仕事。

 エドエドで菅原先生にセットお願い。私も伸びた髪をカットしてもらう。こないだはマッドハッターのコスプレの関係上、短く出来なかった。この季節にうっとうしくて参ったものである。カット終わり、急いでタクシーで渋谷。東武ホテルロビーで二見Yさん、カメラマンIさんと落ち合い、昼食取りつつ打ち合わせ。昼食。クリーム パスタ。

 そこから抜弁天のスタジオまで直行。普通の雑居ビルのワンフロアを撮影用スタジオにしてあり、教室、居間、客間、寝室、風呂場、事務室のセットがそれぞれ組んである。ずっと前、AVの撮影取材で来たことがある。教室内のセットで、先生と生徒 に扮して雑学本の写真撮影。おぐりは『ただいま!』以来のセーラー服だが、
「いつも不良学生役ばかりだからスカーフを持ってない」
 という。思いがけないアクシデント。急場であるが私の赤いネクタイを貸して、写真内ではスカーフに見えるように工夫する。

 白衣と指示棒持って撮影に入るが、最初のテスト段階からカメラマンさんが
「あ、いい、いい。その顔、その顔」
 とバシバシ写してくれて、撮影サクサク。おぐりの方もあきらかに撮っているカメラマンが被写体の方に引き込まれていくのがわかり、笑いと驚きの声が入り交じる、雰囲気のいい撮影になった。こっちも、今日から雨、と聞かされていたのが暑いくらいの好天になったので調子はよし。

 それでも一冊に使う写真を教室での風景、またブルーバックスクリーンを張ってその前でのポーズ、さらに顔の表情のアップなどをさまざま撮るので、2時間半ほどか かる。

 5時に撮影終了、片づけて新宿に移動。今後の打ち合わせも兼ねて三丁目の日本酒居酒屋へ。ここで〆張鶴飲みながら米田さんと三人(カメラマンさんは道具があるので帰宅)いろいろと話はずみ、楽しく会話しつつなんと9時半まで、4時間飲んでいた。厚揚げ焼きうまし。へぎそば、崑ほどではないが酒のあとに美味くておかわり。おぐりは二丁目のへぎそば・崑に『悲しみにてやんでぃ』のとき何度も通っていたので“へぎそば〜二丁目”の連想が強く、
「へぎそばはホモの人の食べるそば、という意味」
 だと思いこんでいたとか。そう言われるとヘギという音がそう聞こえてくる?

 週プレまつまるくんからナオシについて問い合わせ電話、早川書房Aさんから新連載の件、日テレから『世界一〜』の打ち合わせの件、ダ・ビンチSくんから催促。さて、楽しい時間終わり、これからはたまった原稿、かつこの二見本の原稿のためにしばらく地獄。丸の内線で帰り、しかるのち原稿ちょこっと。携帯に催促電話陸続。と はいえ全て明日、と風呂入って寝る。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa