裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

1日

水曜日

甘栗ジェダイマスター

 フォースの力で渋皮をとります。朝6時起床、例により盗汗。ダルいとかそういうことはないけど。入浴してミクシィ、8時朝食。青汁とリンゴとバナナ、スープ。二子山家の喪主騒動テレビで。みんな現役時代の貴乃花を好きだったと言ってるが私はそれほど好きじゃなかった。柔よく剛を制す、などというより圧倒的なパワーを持つ 者が相手をモノともせずハネ飛ばす豪快な勝負の方が好み、というか、
「そういう凄い怪物みたいな選手を見られるのが格闘技(という見世物)の醍醐味な んじゃないの?」
 と思っていたのであった。
「人気に実力が追いつかない」
 という、当時言われていた批評がホントのところだったんではないか。

 11時、出勤。パルコにてレインコートを買う。今来ているコートが冬用のものばかりで夏は暑苦しいので。そしたらちょうどいま、このコートに合う傘とクツも入れたところだ、と言われ、揃えてみるのも一興と思い、カードでちょっと高い買い物し てしまう。うーん、意志が弱いな。

 仕事、このところ感心に前倒しでやっていて、薔薇族も昨日完成させたものの字数合わせだけでカルトさんにミクメール、あと六花マネから今日の予定として呈示されたFRIDAYコラム、アサ芸、全部やり終えている。もちろん、延びてるものをそ の時間でやらねばならんので、それにかかる。かかってます。

 昼は黒豆納豆、小ナス漬け物、アサリ汁で。TBSのK川プロデューサーから、編成局から正式に奇跡特番第二弾のGOサインが出た由。おめでとうございます、と挨 拶、皆神龍太郎さんに打ち合わせ期日のメールを。

 2時、タントンに。思えばしばらく行ってなかった。別に肩が凝らなかったわけではなく、行く時間がとれぬほどバタバタしていたのだが、やはり背中など凄まじい状態。しかしそれだけに、揉まれてほぐされるときの、痛みを伴った快感は言葉に出来ないものがある。凝りという成分が水になってグイと押されるたんびにジュッとしみ 出すというか、そんな風で、ちょっとエクスタシー感。

 揉まれている最中に早川書房Aさんから、例の電子出版版エッセイ早くしろとの催促電話。帰ったら仕事場に週プレからゲラ。話の展開が“うまい具合に無理をしていて”、読んで楽しい出来。自然に流れるのもいいけど、こういう技巧感も大事だと思 うんだよね、どんな分野でも。

 FAX返送のついでに、すでに設定が古くなって使えないでいるワンタッチ送信の相手先欄を新しくしようとするが、設定モードが取り扱い説明書と違っていてよくわからん。薬局新聞とか、日経DIとか、ジャパンミックスとか、もうつきあいがなく なったり、会社そのものがなくなったりとかいうところも多々あるのだが。

 トンデモ本大賞で販売する小冊子『と学会白書2005』が事務局から届く。と学会の隆盛は事務局(眠田直さんが担当)がとにかくきちんと機能していることに理由があると思う。内容はバラエティに富んでいて、と学会ファンにはいい贈り物。植木 不等式氏の文章に笑い泣き。自分を戯画化できる人は強い。
「トンデモという語は市民権を得た」
 と藤倉珊さんが書いているが、それを裏付けるように、本日のZAKZAK社会面ニュース目次に“トンデモ”という語の三連発があった。
>>◆トンデモ先生、学校で女子トイレ侵入…盗撮ビデオ置く(06/01)
>>◆トンデモ運転手、酒飲み観光バス運転…匿名通報で発覚(06/01)
>>◆トンデモ高校生、メーターが所持金超えて刃物出し…(06/01)
 確かに普遍化は喜ばしいし、ねらってるんだろうが、こういう乱用(誤用)にはや はり何か言いたい気がする。

 書かねばならぬ原稿、催促のないままに明日に延ばし、今日はのんべんだらり……と思っていたら冗談じゃない原稿があった。あわててガリガリ。途中で野沢義範くんから行こうとお誘いのあった試写、どうしましたと連絡あるがとても行けず、残念。

 9時半、タクシーで代々木。K子と待ち合わせて、駅近くの古い雑居ビルの一階にある煮込み屋。煮込み屋というのは屋号にそうあるのだが、それは開店当時のことで今は業種を変えて、なんとフランス料理の店になっている。虎の子のOさんが見つけて教えてくれた店だそうで、カウンターだけのせまい店だが、12時ラストオーダーというのが語学帰りのK子にはぴったりで、マスターの気取らぬ人柄も彼女のお気に召し、ブンちゃんとか植木不等式さんとかを誘ってはしょっちゅう通っているとか。人を誘うのは、ここは一皿の分量が凄まじく多くて、小食のK子ひとりでは食いきれ ないため。

 とりあえず生ビール(エビス)を頼んだが、丁寧に注いでくれるその注ぎ方ひとつでいい店だとわかる。エスカルゴ、鴨のコンフィ、それにラム肉のメンチカツをオーダー。エスカルゴはきちんとバタ、ニンニク、塩をきかせてあり、バゲット(うまいと思ってカウンター奥の袋を見たらちゃんとポンパドゥールのだった)にソースをか らめて食う。

 鴨のコンフィは肉の味もさることながら、ドサッと皿に山盛りのポテトフライがうまい。ファーストフード店のポテトにはどうしても手が伸びない私だが、ここのはマ スタードなすりながら、気がつくと一山食べ切ってしまっていた。

 それからラムのメンチ。ちゃんと固まり肉を包丁で叩いてメンチにする。以前はハンバーグにしていたのだが、このあいだこの店を訪れた植木さんのサジェスチョンにしたがって、メンチにしてみたとか。まだ中に赤身が残っている、結構なメンチ。と はいえ、ここですでに腹がかなりくちくなっている。

 植木さんはさらにこの上、もう一皿フォアグラのパイか何か頼んだらしい。さすがと思う。感心はせぬが。つけあわせのインゲンが茹でずにそのまま油を通してあり、歯触りと風味が結構。昭和の香り残す雑居ビルの中にこのようなフレンチの店があるというシチュエーションが最高なのだが、惜哉、今年中にこのビルも建て替えで、こ の店も別なところに移転するとか。

 タクシーで帰り、ちょっとトンデモ本大賞関係でメールでお願いしていた件につき了承が得られたこと確認、よしよしと思いつつベッドに。うまいものを食った後は幸 福感。心配は明日の体重。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa