裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

25日

月曜日

プルガサリの情事

 あなたのあそこ、鉄みたいで食べちゃいたい。朝4時に目が覚めて、退屈で仕方がない。日記つけて、6時にまたベッドに戻る。ウトウトとして、半覚半睡状態の中、夢とも違う、さまざまなイメージが次々に頭に浮かんで消える。夜の山手通り、白骨温泉、床がタイル張りの洞窟、刀で切られた瞬間の意識、うらぶれたアーケード街の古本屋、本をブリキ板の折り曲げたので包装、エトセトラ。夢と異なるのは、今自分がフトンに横になっていて、そのイメージが頭に浮かんだものであることを明確に意識しているところ。

 7時、朝食。チキンの炒めたもの、マッシュポテト、梨。アリナミンと附子をまたのむ。女子マラソン日本が金。それはいいが報道スタイルにそろそろ嫌気がさしてきた。篠原の疑惑判定は近来にない快事である。白人優越主義がいまだ存在することを如実に示して、平和ボケ日本に警鐘を鳴らしてくれた。

 マリリン・モンローが来日して癪を起こしたとき、治療に呼ばれて全裸の彼女に対面したという“戦後史”の生証人、浪越徳次郎氏死去九六歳。長寿はやはり指圧の効果か。正直なところ、もう大分前に亡くなっていた、とばかり思っていた。“指圧のココロォ、母ゴコロ。押せば命の泉涌くゥ・・・・・・”というフレーズは、いったい今、どれくらいに通じるのか。それから、最後の映画屋、と呼びたい工藤栄一監督死去、七一歳。学生時代、蒲田の東映系名画座の薄よごれたスクリーンで『十三人の刺客』を初めて観たときは、興奮で体がブルブルと震えたものである。わが映画観賞のバイブル『脇役グラフィティ』に、“『七人の侍』よりこっちを西部劇にリメイクすべきだ”とあり、千恵蔵にリー・マーヴィン、寛寿郎にエミリオ・フェルナンデス、菅貫太郎にピーター・フォンダ・・・・・・などというキャスティングごっこを楽しげにやっていた。今の映画ファンはあまりこういうこと、やらないねえ。どの新聞も死去の報に“『必殺』シリーズの・・・・・・”と書かれていたのがちと寂しい。

 11時、と学会々員のK氏来宅。地方会員のH氏のネタを、太田で刊行予定の新・と学会白書シリーズに掲載するために持参してくれる。K氏、ビデオの棚をしげしげと打ち眺め、感服してくれた。やっぱり風呂浴びたあと、急速な睡魔。昼メシも食わずに、一時から三時まで二時間、気絶状態。・・・・・・とはいえ、これで本日のバテはほとんど解消された。久々に気力充実して飛び起き、まずはデジタルモノ用の映画評、二本書く。前回創刊号の映画評、某サイトで“唐沢にしてはおとなしい”などと言われていたそうなので、ヨロシイ、とばかりに飛ばす飛ばす。飛ばしてなお、映画評に必要な見所や理解補助の情報がきちんと含まれている様にするところが苦心のしどころである。飛ばし系原稿の中には、筆者が飛ばしまくったことで自己満足し、結局、何物をも伝えていないものがありがちなのである。

 書き上げてメールし、そこから六本木に出て、資料買い込む。ついでに銀行で家賃引出し、明治屋で夕食の買い物。家にとって返して、今度はダ・ヴィンチ。ゲソピンくん(歯槽膿漏のタコ、というキャラを、寺田克也から唐沢なをき、みなもと太郎まで、五○人近いマンガ家たちが一斉に自分の作品に登場させたオアソビ。私のナンプレの原稿イラストにまで出てきた)をアカデミックに論じ、大いにリスペクトしてみせるというパロディ原稿。

 8時、夕食。すき焼き風野菜鍋とカニとワカメの酢の物。野菜鍋にはレタス一個、クレソン二把、マイタケワンパック、黄ニラ一把、オクラ四本。もちろん肉も入れるが、野菜をとにかく大量にぶち込んで食べるのが眼目の鍋である。後でこの汁でうどんを作って食べる。

 ビデオで新東宝映画『大虐殺』(ビデオ題名『暴圧・関東大震災と軍部』)。虐殺は映画の前半のみで、後半は天知茂扮するアナーキストが軍部にテロをしかけようとするストーリィ。何回もテロ計画が繰り返され、ことごとくミスで失敗する、という話の流れを見ていると、“こいつらが無能力なんじゃないの?”と思えてくる。そのあと、韓国のSFアニメ超大作『アルマゲドン』。かなりリキの入った作品ではあるが、結局こういうSFは原語版で字幕がなくても大体わかってしまう。と、言うか、いくつかのシーンが『タイタンA.E.』ソックリである。これは1996年作品であるから、アッチがこれをパクったというのはあり得るかも。エヴァンゲリオンにしたって、斬新だったのはキャラとその行動で、設定そのものはSFとしては極めてアリガチなものだったし、すでにSFというのは新派や歌舞伎とおなじく、お約束的な話を楽しむもの、になってしまっているのかもしれない。韓国らしく、セルアニメ、CG、ミニチュア合成などのいろんなテクニックを作品の統一性を考えずにどんどん取り入れ、しかもそれが融合してないところがなんとも。全体的に不安定なところが味の作品だが、オタアミのネタにするには笑い不足か。

 12時、就寝。やはり夜中に目を覚ましてしまい、眠れないのに苦しむ。『好色艶語辞典』、また。坊主をののしるとき、上に糞をつけて糞坊主というのは、坊主が男色を好むゆえ、そのペニスの先に糞がついていることの揶揄である、とやら。

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