裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

16日

土曜日

鴨鱶もない

 え、北京ダックもフカヒレスープも品切れ? やはり時差ボケか、午前2時半に起床。ヨーロッパ日記をシコシコと書く。7時に朝メシを作る。K子には卵焼き、私はマグロのオーロラソーストースト乗せ。コーヒーをたっぷり、ああ、コーヒーをガブ飲みできてうれしい。読売新聞、オリンピック開会式の写真を第一面からハミ出させて、裏側まで持ってきている。こういう紙面も珍しい。

 こないだK子が出た『フジリコ』の製作プロダクションから、今度はテレ東の徳光和夫の番組に夫婦で出てくれという依頼。その前調べの電話があったが、担当の男の礼儀知らずでバカなことに、電話で話すだけでムカつく。打ち合わせに行きたい、今日は空いているか、では明日ならどうかと、こちらの都合も考えずにせかせやがる。一応、月曜に会うことにしたが、そこでなお、今日と同様のバカなら追い返すつもり である。

 メールいろいろ。エンターブレインNくんからメール、やはり出立前夜のメールは届いてなかった模様。ニフティに賠償を請求しようかしらん。あと、いろいろ笑える内容のもの。ヨーロッパ日記、ポーランド到着の日まで書く。ネットを回って、いつも見ている日記サイトを十日ぶりに見る。私の巡回コースに入っているところは、いずれもちょっと裏系統のネタが好き、という程度の一般人(主婦、学生、サラリーマン等)のところばかりである。それも、ネタの濃さが勝負というところでなく、日一日の行動(メシ、風呂、読書、またメシ、仕事、家庭サービス、またまたメシ、煩悶やら欲情やらあった後の就寝まで)などを克明に記載したところが主。プロ及びセミプロが書くような、人に読ませるエッセイとして完成しているようなところは興味がない(そういうのはエッセイとして書かれればいいものであって、何も日記形式で書かれる必要はない)。ネット日記を読む楽しさというのは、さして特筆するところのない一般人の、普通なら目に出来ない平々凡々なる日常の記録を読めるというところである。読物として完成度の高いサイトもあるが、そういうところの記述は、やはりどうも、人に読ませるためのアザトさが感じられる。私の様な甲羅を経た日記読みにとっては、そういう作意のない、純粋な一日の、スルメを噛むような滋味に溢れた、二十四時間の記録が何よりのご馳走なのである。そこに人生の機微がある。

 台風が近付いているらしく、気圧無茶苦茶。12時に風呂入り、旅の荷などをほどいているうちに極端に体力が落ち、足もむくんでくる。新連載原稿のメモなどを見ながらベッドに横になるうち、グーと寝込んでしまい、気がつくと3時。昼飯は食いそこねとなる。

 新宿のマッサージパーラー、電話をしたら満員とのことで諦めるが、すぐ電話が向こうからかかってきて、キャンセルが出来たからどうぞとのこと。雨にカミナリが交じる中、新宿まで出て、サウナ一時間、マッサージ一時間。整体の兄ちゃんに、海外旅行でいろいろ歩き回って、と言うと、“どうりでいつもと全然違うところが凝っていると思いました”と言われる。調子をあわせたのか、ホントにそう感じたのか。ただし、背中を揉まれていると実にいい気持ちで、また、リラックスするのか日記タイトルのダジャレも変なのが浮かぶこと妙。

 雨で雷頻々の中、伊勢丹まで行き、買い物終えたK子と合流。天ぷらの天一で夕食を執る。旅行の写真を現像したものを見る。安達Oさんも談之助師匠も私も、カメラ向けられると顔をツクるタイプであり、何やらホントにわからん一団になっている。TVの話、K子は顔が出るのはいいことだから、と出ることを勧め、私は扱いのことを考えると、あまりどうしようもない撮られ方はイヤだという。天ぷらは、アマゴがアユより肉に甘味があって結構でした。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa