裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

3日

日曜日

男ハイドン

 弦楽四重奏曲を作りますんど〜。朝7時半起き。朝食、ニンニクスパゲッティ。朝からこれってのはちょっと。それと二十世紀。K子も私も、二十世紀以外は梨と認めないんである。一行知識掲示板、ログ庫に入れる前に500を越しそうである。明日平塚くんにやってもらう前に消えそうな、1〜50までを保存しておく。旅行予定をK子と話しているうちに、旅行の日程を私がまるでカン違いしていたことが判明。七日出発を五日と思い込んでいた。どうやら、旅行計画のかなり初期に出た予定を、すぐカレンダーに書きつけて、その後の変更などで書き換えるのを忘れてしまっていたらしい。打ち合わせは全部K子と安達Oさんまかせにしていたし。とほほほ。もっとも致命的なことではなく、逆に少し原稿執筆スケジュールに余裕が出来たので、却ってホッとする。

 森田健作、いくぶん“ミコシ”としての己がキャラに気がついてきたようで、“最後に別れたときのあいつ(逮捕された秘書)の笑顔が忘れられない。今でも信じたくない気持ちだ”などと、似合った臭いセリフを強調している。なかなかいいぞ。1時ころ、気圧か肩凝りか、急に体が動かなくなり、眠るというよりは意識を失ったまま一時間ほど寝転がっている。そのあと起き出して風呂入り、読書などするが、食欲わかず、昼は抜かした。夕方までずっとこんな調子。軽い風邪だったか。もっとも、おかげで少し疲れは抜けた。雑多な本を齧り読み。最近の若い著者たち、みんな頭がいいなあ、と感心する。もっとも感心はしても尊敬はしない。尊敬するにはどの著書も有用すぎる。有用というのは便利ということで、便利なものというのは品のないものである。芝刈器と同等では本も情けないだろう。本当に尊敬に価するのは、著者の頭のよさを徹底して無駄に使っているような本なんだが。

 偶然だが、岡田斗司夫もほぼ私と同時期にヨーロッパへ旅行するとか。彼の目的はベルギーのブリュッセルで一九五八年の万博記念建築物“アトミニウム”(鉄の分子構造を模したというデザインの、高さ一六○メートルの巨大銀色未来派建築物件)を見ることと、ドイツのヴァッパタールで世界最古の商用モノレールに乗ってくることだそうだ。私の方の目的はポーランドのアウシュビッツ記念館でガス室を見ることとイタリアのフィレンツェで死体解剖博物館(ラ・スペコラ)を訪れること。両人の趣味嗜好の違いが歴然としてますな。

 志加吾の掲示板でブックオフについて書き込んだら、講談社の担当氏からのものも含めた、ちょっとマジなレスがついたので仕方なく、こっちも少しマジに返す。ギャグで来いってば。まあ、芸人の掲示板だからといって好き勝手に書き込みしているとシャレのわからない奴から連載誌そのものに何か苦情の矢が飛んでいくやもしれず、これで大手の編集というのもいろいろ苦労があるのだろう。基本的にあそこの掲示板はマジメ。これに比べると、談生のHPなどはまさに噺家のサイトという感じなんだ が、それはそれでまた問題がなきにしも(笑)。

 7時過ぎ、街に少し買い物に出る。タクシーの中の電光ニュースでベトさんドクさんという表記があった。そりゃ彼らだって大人になるわけで、いつまでもちゃんづけでもあるまいけど、ちょっと違和感。べとべとさんという妖怪の名前などを連想しちまうではないか。9時、夕食。白身魚の中華風蒸しものとジャコ御飯。『知ってるつもり?』はネズミ講の内村健一。阿蘇に建てたピラミッドなどの映像は貴重きわまりないが、関口宏の番組ってどうしてああ、いつでも視点が卑小だろう。内村のカリスマのなさ、説くところの凡庸さをあばけばあばくほど、ならば内村の主催する天下一家の会があそこまで巨大になったのは、被害者の金に対する欲望が原因というリクツになり、内村はその欲望に乗ったに過ぎないことになる。そういう両刃のツルギ的告発をしては視聴率がとれないから、そこらへんは元・被害者の“人間額に汗して働かんとアカン”みたいな言葉(そう思わなかったから被害にあったんだよね)でサラリと流し、彼の少年時代の挫折と戦後の混乱が与えた人格的影響にすべてをおっかぶせて、武田鉄矢あたりにお説教くさいことを言わせてシメとする。以前、古川ロッパの回を見たときに、その把握の薄ッぺらさに怒り狂ったものだが、最近はこの番組、少 しそういうペラぶりをごまかす手を覚えてきた。それだけに不快になる。

 そのあとLDを見ていたら、プレーヤーの調子が悪いのか、いきなり画面 がモノクロになる。仕方なくビデオに切り替え、NHKビデオ『昭和名人芸大全』五で猫八、ゼンジー北京、カンジヤママイムなどを見る。昭和六○年代の録画が多いが、スタジオに来ているおばさんたちの服装の趣味のスゴいこと。芸より、そっちの方が印象に残ってしまった。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa