裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

17日

金曜日

タネも仕掛けも有馬温泉

 基本ギャグですね。朝8時起床。ぐっすりと寝た。眠田さんとトークライブをして夜中に帰宅する、という夢。タクシーをひろったらそれが何故か鮮魚の運搬車で、魚と一緒のトランクにカバンを入れると臭くなるのではないかと心配になって(ああ、夢の話はつまらん)。朝食、ガスパチョとイチジク、それにスイカ。スイカはでんすけスイカという高級品だが(盆を過ぎて値が下がった)、さすがに甘味がマイルドで上品な感じ。

 11時半ころ、九州在のと学会員H氏が来宅。SF大会に上京したらしい。H氏はデジモノに連載持っていたのだが、こないだ休刊になったので、善後策をN田くんと打ち合わせるという。なかなか難しいところだ。今の出版業界の冷えきり具合をとくとくと語って聞かせる。第三者がらみの企画をいくつも持ってくるが、まず本人が中心になる企画を立てなければダメ。他人のフンドシで相撲を取ろうというような考えではプロになれない。

 昼は外で何か、と思い、何も思いつかないまま、とりあえず外へ出る。いろいろと夏以降のスケジュールを考えながらぶらぶら歩いていたら道玄坂に出たので、そのまま坂を上がって、ヒゲ長魯肉飯。皇帝肉というほほ肉の煮込みを乗せた丼と、ザーサイのスープ。スープがモツの風味がして、おいしかった。ここ、流行っているのだろ うか。

 それから駅の方まで行き、何も考えなしのまま新宿へ出て、ハタと足がとまり、どうしようかと頭をひねる。こういうことも珍しい。思いついて中野まで行き、まんだらけを回り、ビデオショップでDVDを数枚、買って帰る。この時点で3時。電話数件とって、それから仕事。モノマガジン原稿5枚、ここの日記の記述をメモ代わりにして一気に書きあげ、メール。

 続けてサンマークのコラムを一本、試しに書く。今回はソルボンヌK子著で、私は監修に回るつもりだったが、出版者の意向でやはり私も著者として名を連ねてもらいたいというので、コラムは私の執筆ということにする。これを1時間半かけて。芝崎くんから電話、ちょっと出版社とトラブったらしい。まあ、大したことはないと思うけど。トラブルメーカーは困るが、トラブルというのは仕事を進めていくうえで、あるのが当たり前なのである(夜半に、そのトラブル先の編集者氏から、状況説明のメールが来た)。

 イキオイがついたので、さらに続けて盆休みあけのWeb現代にかかる。ダダダと書きすすめるが、さすがに9枚は時間かかり、K子との約束の時間になったので、中断して、下北沢に向かう。金曜日でほとんど満席。カウンターの隅っこに向かい合って何とか座る。スズキのローストがすでに売り切れだったので残念がったら、一個、とっておいてありますとのこと。こないだあんまりウマがったので、われわれ用にストックしておいてくれたらしい。カウンターの斜め前の席にいた若い男女の客と、ふとしたキッカケで会話になり、男性の方が私に向かい、不思議そうに、“どこかで顔 を見てるんですが”と言う。アテズッポウで
「セガガガに出てますよ」
 と言ったら、“ああーっ!”と叫んで喜んでくれた。あのゲーム、勝手にこっちの名前つかって一円の肖像使用料もよこさないけど、まあ、こういうところに顔をひろめる効果はあるか。帰って仕事するつもりだったので酒を控えていたが、これで盛り上がってしまい、李白、酔鯨などをおかわりして、すっかり酔ってしまった。

 11時過ぎ帰宅、さすがに原稿、続きは酔って書けず。明日に回す。某パティオで知り合いの女性が、職場の同僚の男性(20代後半のエロゲーマニア)に、“用事があるのでSF大会に行けなくなったのでくやしい”という意味のことを話したら、真面目な顔で、“SFってなんですか”と訊かれたという。まことにエエ話である。今SFはそういう位置にあるのである。論争とかしている場合じゃなかんべえがな。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa