裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

15日

水曜日

フッサールのかご屋だホイサッサ

 タイトルに意味はない。朝7時半起床。談志家元がわが家に上がり込んで来て到来もののお菓子を片端からムシャムシャ食べ、しまっておいた睡眠薬までのんで帰っていく、という夢を見た。昨日、談之助さんからコミケ申込みの書き込みが官能倶楽部パティオにあったからだろう。朝食、クレソンのスープとイチジク。イチジクをまた食べるようになって、便通極めてよろしい。昨日買った日刊ゲンダイ、小泉総理の靖国参拝の写真を一面にかかげて例の大罵倒見出し『場当たり小泉』『無能内閣』『デタラメ政権』とブチあげ、加えて“この国も国民生活も落ちるところまで落ちることになりそう”と気持よさげに言いたい放題。ここまでの大悪口になると罪がない。そもそも最後の捨てゼリフなど、私が大学生のころからずっと同じ調子なのである。いまだに日本が滅亡していないのが不思議なくらいだ。生活状態が悪くなるのはまず8割方、自分の無能が原因なのだが、それを他人のせいにできるシステムとして、政治というのは機能しているのかもしれない。

 K子に弁当、エビフライの卵とじ。SFマガジンにかかるが、なかなか筆がすすまない。お盆進行とコミケでたまっていたメールの返事をまとめて書く。ハローミュージックから場内案内のデザインについて問い合わせ一件。昼はミソおむすびと、エビフライの残りで簡単にすませる。

 昼のニュースにて、石原都知事の靖国神社参拝の光景。私はこの人物、しょうもない男であると思っているが、この騒ぎの最中に参拝をきちんと決行するその姿勢が、やはりカッコよく見えてしまうのですね。中国や韓国の人たちに申し上げるが(聞いてないだろうが)、なまじっかな外圧というのはかえって相手国のナショナリズムを刺激することになる。資料で今、『わが闘争』を読み返しているのだが、ヒトラーの台頭はひとえに第一次大戦におけるフランスがドイツを押さえ込みすぎたため、ドイツ国内にナショナリズムの気運を高めてしまったためであることがよくわかる。ヒトラーは、“フランスを倒すためにイギリスと同盟を結ぶべきである”とまで言っているのである(この当時にヒトラーはイギリスのロイド・ジョージを極めて高くかっており、その演説がインテリ層でなく、常に大衆に向けてなされていることに大感心している。彼の大衆戦略はイギリス首相から学んだものだったわけだ)。

 ちなみに、ヒトラーはこの著書の中でユダヤ人のことを“地球を篭絡しようとしているクラゲども”という、奇妙な比喩を使ってののしっている。クラゲという表現も唐突だし、いきなり“地球”という単位で世界が表されるのにもとまどわせられる。ひょっとして、ヒトラーは若いころにウェルズの『宇宙戦争』を読んでいて、そのイラストの中の火星人をタコではなくクラゲとみなし、そのイメージがこの原稿を書いている最中にフイと出てきたのでは、などという妄想をふくらませてみる。

 3時、芝崎くん来訪。と学会の冬コミ申込み用紙を持ってきて、書き込みチェックをしてくれとの件。ざっと見てOK。と、いうか、前にも書いたが私はこういう書類への記入というのが大の苦手なのである。柳瀬くんがチェックしてくれているんだから、まず間違いはあるまい。新事務局長として彼、と学会十周年記念企画をいろいろ考案中らしい。いろいろ話し込むうちツイ熱が入り、4時15分前となる。今日の消印までが申込みの有効期限なので、芝崎くん、あわてて郵便局へトンで行く。

 4時から、やっとSFマガジン原稿にかかる。あと一回で最終回に、うまく収斂できるか? 書きながら、次の新連載のアイデアも固める。ジャキジャキと書き進めていく。7時40分ころやっと形になり、編集部にメール。それから家を出て、東急ハンズ前にてK子と待ち合わせ。K子がちょっと遅れたので、ハンズのカブトムシ売場をながめて時間つぶす。そのバラエティの豊富さにかつての昆虫少年の血がうずく。ヘラクレスオオカブトムシは背中の甲羅が黄色いと思っていたが、ここのは黒い。腹が減ると背中が黄色くなるんだそうな。

 K子と『宇の里』へ行くが満席、仕方なく駅前のウナギ屋『松川』へ行き、マグロの山かけ、イカソーメン、うざくなどで酒。そのあとうな重。酒が馬鹿に甘口なのがちょっと参った。帰宅、まだ早いのでネット散策。『裏日本工業新聞』で、東浩紀氏らの『網状言論F』(於池袋)を宣伝していた。今日びポスト・エヴァンゲリオンなどと照れずに言える方々の現状認識を聞いて仕事や暮らしに役立てられる方法というのが無学な私などには想像もつかない。皮肉なんだろうか。残暑しのぎにひとつ出向いてみるか、と思ったのだが、スケジュール確認したら惜しいかな9月16日はまだ山口におり(15日がきらら博でのトークイベント)、帰りは遅くなるのでいかれないようである。残念。前倒しで行ける靖国はいいねえ。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa