裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

21日

土曜日

ナンバしよっと!

右手と右足いっしょに出しよってからに。

※アスペクト原稿 A社取材(準備) アーバンフォレスト観劇

朝、9時に母の室で朝食の予定だったが昨日いろいろと
あって就寝が遅くなってので10時にしてもらう。
ブランチというにはまだ早め。
目玉焼、ナメコ味噌汁、キャベツとキュウリの即席漬け、
焼海苔でご飯。
好天なのがありがたし。

市川海老蔵と小林麻央結婚の報道。
成田屋代々の“にらみ”はにらまれると一年間風邪をひかない
と言われています、というレポーターの説明に
「二年目は効かなくなるんですか」
と間抜けな受け答えをしたコメンテーターあり。
縁起というものは五節句、二十四節気などの思想をもとに
したもので……などというしち難しい説明をしてはお茶の間から
嫌われるとはいえ。

昨日書き落としたコラム一本(やはりカン違いで9本だった)
急いで書いてK田くんにメール。
それから中野まで行き、某所でTくんと待ち合わせ。
A社単行本のための取材予定だったが、いろいろスケジュール
都合あって、取材前準備、になる。

作業しながら検討をつけて、だいたいどれくらいの時間が
かかるか、を量る。しながらTくんと雑談。
時間、予定通りにはなかなかいかず、思っていた作業の半分
しか出来なかった。もっとも、Tくん以外のテカなしで
半日で半分すんだのだから結構、と言うこともできる。

お兄さんと飲む、というTくんと別れて新宿へ。
15分遅れになる、と待ち合わせの山口A二郎さんに電話
したが、乗り継ぎが案外スムーズで、6時ちょうどに新宿。
小腹が空いたので箱根本陣で冷したぬき。
私は立ち食い蕎麦では7割くらいの率で冷したぬきを
注文するが、蕎麦で冷したぬきという選択肢は30歳くらいまで
私の中にまったくなかった。ぶっかけの冷し蕎麦というのが
ざるやもりに比べ、何か野暮に思えていたのだ。
それが好物にまでなったのは、野田昌宏氏のエッセイだったか、
火星の土地の権利を買いに宇宙旅行協会に行ったところ、
主宰の原田三夫氏が冷したぬきの大盛りをモリモリ食べておられた、
という(引用は記憶だよりである)文章を読んで、冷したぬきと
いうものを食べてみたい、とふと思い、近くの立ち食い蕎麦屋で
ココロミてみたとき以来である。火星の土地、という浮世離れさ
と冷したぬき蕎麦という対比が面白かったからかもしれない。

待ち合わせの明治安田生命ビルの喫茶店が閉まっている。
ちょうどビルの出口で山口さんと出会い、頼んでおいた芝居の
プロローグシーンの映像ビデオを確認するために、
コンセントのある場所を、と山口さん言うので、マックに
行くがコンセント席満員。じゃ、話だけでもとすぐ近くのルノアール。
ところがここで運のいいことにコンセントのある席ありますか
と聞いたら、案内してくれた。

映像、ご丁寧に三パターンも作ってきてくれた。
見るだけでゾクゾク。こちらの思いを見事に絵にしてくれている。
少し今月と来月の芝居のこと話し、別れて次はスペース107。
ちょっと方向感覚狂って、違う場所に歩きはじめたりするが、
何とか思い出し、無事到着。席につこうとしたら
「カラサワさんですよね?」
と声をかけられる。何と、12月のお芝居でご一緒する
鳥越夕幾子さんだった。

これは奇遇、と近くの席に座って、少し話をする。
彼女、シヴさんと知りあいで、しかも彼女のお連れの女性も
私の知りあいと知りあい。世間狭過ぎである。
そこに、鈴木希依子ちゃん、会場案内係の人につれられてきて、
席はここです、と指示されて、私の隣の席に座る。
あら、お隣なんですねと希依ちゃんが喜ぶが、私は
指定席とはツユ思わず、半券をポケットに突っ込んで入ったとたん
声をかけられ、近くに座っただけ。
イヤ、実は違うんだとポケットをさぐり、半券を出して確認
したら、何という偶然、たまたま、鳥越さんと話そうという理由で
座ったその席が、自分の席だった。どういう偶然だ?

で、アーバンフォレスト10周年記念公演、
『INSIDE OUT,INSAIDE OUT』。伊丹ドンキーこと穴吹一朗さんの
本領発揮のシチュエーション・コメディ。人気おかまバー
『ジュテーム』のオーナーの元に、十年前家を出た息子が婚約者と
一緒に会いにやってくる。
ところがその婚約者というのが現内閣の大臣の娘。頑固な父親は
大事な娘の婚約者のご両親の家を一度見てみなくては娘はやれぬ、
と言い出して、この店に訪れるという。今日一日だけ、フツーの
人たちになってくれとオーナーに言われ、店の子たちはみんな
慣れぬ“男装”をすることになるが……という話。

田舎の親をだますために登場人物たちが一芝居打つことになり、
という定番中の定番ネタは安心して見ていられ、かつ、役者たちに
とって最もいろいろ遊べるおかま役、というので、迫田さん、
松山幸次、渡辺シヴヲ、みな力の入った芝居であることよ。
ことにシヴさんは前回のハゲ以上の大インパクト。
椅子から転げ落ちそうになった。
魚健さんの泣かせ芝居もよし、そのべさんの頑固親父、飛志津ゆかり
さんの大臣夫人もよし(今回のベストアクト)。大友恵理ちゃんは
とある事情で女ながらおかまバーに勤めていて、誰にも女と気付かれ
なかったことにちょっと傷ついている、という役でこれも適役。
と、いうか十周年記念公演だけあって、全ての登場人物に見せ所
があり、いい演技を振り分けられている。と、いうか、演技がうまく
ないと成立しない芝居であり、演技者に全幅の信頼をおいてこういう
脚本が書ける穴吹氏は幸福な人だ、と思う。

ただ、恵理ちゃんの役の事情の解決法含め、ストーリィとしては、
シチュエーション・コメディのシチュエーションのまとめ段階が
よく言えば力技、悪く言えば強引に見えたかな、という感じ。
もちろん、今回の眼目の、演技者たちの大怪演が見られただけで
全ての客は不満などもらさぬだろうが。

終って、希依子ちゃんと近くの居酒屋『かんちゃん』で飲みながら
みんなを待つ。やがてシヴさん、迫田さん、松ちゃん、シヴさんの
事務所の飛鳥さん、若手の人と一緒に来て、やや大所帯に。
天然ボケに磨きがかかってきた希依ちゃんをシヴさんが嬉しそうに
いじっていた。芝居もの同士盛り上がること。シヴさんは友人の
芝居を観に行ったら、たまたま隣の席が坂本ちゃんで、
飲みながら話をいろいろ聞いて今回の芝居の参考にしたとのこと。
飛鳥さんから、ちょっと企画をふられたりもする。こっちの企画と
連動できたらオモシロイ。

芝居の関係上衣装替えメイク替えがもう、裏で大変なことは
予想がつく。とはいえ、衣装は着替えメイクは落とせても、
マニキュアは毎回々々落とすのがメンドくさいというので、
迫田さん、したまま。よく気にならないものだ。私は腕時計ですら
すぐ外してしまう男で、マニキュアを一度シャレで塗られた
ことがあったが、指先が重く感じて感じて、とても1時間と
そのままに出来なかった。迫田さんにその指でお酌してもらう
(写真はその指先と迫田さん)。

12時、出て、タクシーで帰宅。山口さんに作ってもらった
オープニング映像を音楽に合わせてみる。最初から合わせて
作ったかのようなシンクロぶりで、20回以上見てしまった。
2時、就寝。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa