裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

4日

水曜日

ちぃサンボ

「地井さんを追いかけてきた虎は木の回りをぐるぐる回ってバターに
なってしまいました」

朝11時まで寝てしまう。
やはり午前様はイクナイ。
起き出して入浴、考えてみれば昨日は慌ただしくて風呂にも入って
なかった。2日分の髭を剃る。

12時、昼食。
納豆、豚肉味噌漬け、小茄子漬物、茄子の味噌汁。
ゆうべ調子が悪かったプリンター、あれこれやってみて、
一番原始的な方法(強制終了させず、最後まで印字させてみる)
で元に戻った。

S社から、撮影と打ち合わせ期日について電話、あと、新タイトルの
件も。ドタバタしているので適当に答えておくが、まあ、妥当な線
であろう。B社からも電話、原稿のテーマについて。縄張うちの
テーマが呈示されたのでシメた、と思う。

ルー・ジャコビ(写真)死去の報。
10月23日、95歳。

1950年代から90年代まで、コメディ、ミステリ、社会派
ドラマと幅広く活躍していた性格俳優。丸まっちい顔に口ひげが
トレードマーク。ビリー・ワイルダーの傑作『あなただけ今晩は』
ではその役名も“口ひげ”。ビストロ“口ひげ”のオーナー兼
バーテンで、娼婦イルマ(シャーリー・マクレーン)に惚れて
警官を首になったネスター(ジャック・レモン)に、イルマを
モノにするためのさまざまな奇想天外な秘策を授ける。
やたら過去の経験が豊富らしいが、それを語りかけては
“いや、これは別の話だ”とやめてしまうのが癖で、ラストでも
そのセリフが見事にいかされていた。
三谷幸喜が『王様のレストラン』でこのセリフをオマージュで
使わせていたので、日本でも有名だろう。

さらに三谷幸喜つながりで言えば、三谷がリスペクトして
やまない『刑事コロンボ』の原作者、R・レヴィンソンと
W・リンクが脚本を書いた(さらに『地球爆破作戦』の
ジェームズ・ブリッジスも加わっている)一時間もののドラマ
『身の上相談』(『ヒッチコック・ミステリー』の中の1編)で、
後のコロンボを彷彿とさせるウォルソン警部を演じている。
もっともこの警部、風体や捜査方法はコロンボそっくりなのだが、
事件の解決にはまったく寄与しない。

なお、コロンボ役のピーター・フォークとは、フォークが
コロンボと同じルテナント(警部補)役を演じたアーサー・ヒラー
の『美人泥棒』(67)で共演。

カナダのトロント生れで、ブロードウェイでさまざまな舞台を
踏んだ後、ハリウッドに進出した。『アンネの日記』(59)で
知られるようになる。この映画では、陽気だが口やかましい
ファン・ダーン夫妻をシェリー・ウインターズと共に演じ、
平和時ならいい隣人になれたかもしれない平凡な夫妻が、
ナチを逃れての潜伏という状況の中では迷惑な存在に
しかならない、という人間性の悲喜劇を見せて秀逸だった。

こういう“人生の深み”を演じられる役者が、映画を面白くして
くれた。長いことご苦労様でした。
黙祷。

T社原稿、読者対象がなかなか読み込めず、苦心。
冒頭部分の釘の差し間違いが尾を引いて2回ほど原稿用紙2枚分ほどを
反故にして書き直す。7時半に編集部に送ります、と返事して編集の
Kさんを待たせておいて、結局8時半と1時間遅れになってしまった。

買い物に出て、夕食はチリコンカン。
煮込み時間が短くて、豆があまり柔らかくならなかった。
それにマッコリの炭酸割り。
チリと言えば、とコロンボを見ていたが、途中で眠くなって
ベッドへ直行。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa