裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

15日

日曜日

死体洗いのラブバイト

彼から話を聞いて、思わず興奮して噛んじゃった

※『オールド・フランケンシュタイン』稽古

朝8時起床。就寝時の降圧剤服用(入院時の処方の継続)を控えると、
朝が早く起きられる。もっとも、モーニング・サージの危険性も
まだあるんで処方されているんだろうが……。

豆乳飲んで朝食代わり。
たまった雑用片づけ、日記などつけているうちにもうすぐ昼になる。
昼食、自家製クサヤ、茄子漬物、肉ジャガでご飯軽く一膳。
昨日の昼食の献立が自室でどうしても思い出せず、母に聞いて
ああ、シューマイであったと思い出す。

市橋容疑者のアイドル化、ますます進み、Tシャツや缶バッジなどまで
大人気のようだ。もっとも、あの整形前の指名手配書の写真が
いい男とはツユ思わない。ブレイクしたのはやはり、逮捕後のあの
護送用ウインドブレーカーの写真以降、なのではないか。
あのフードかぶった顔でも、移送用の毛布をかぶせられた顔でも、
目は髪に隠れているか、つぶっているかでしかと見えない。
あれで開けっ広げに全部見えていたらこんな騒ぎにはなっていまい。
顔というのは一部分が隠されてさえいれば、そこは見る者の好奇心
が実物の3割増しで想像で補ってくれる。
恋愛感情(疑似含ム)とは好奇心の発展系の感情である。
絶食、自白拒否、そして全貌があきらかにならない(見えている
部分だけを言えばイケメン)顔。これだけ好奇心を刺激されれば、
女性も騒ぐというものである。影ある男がモテるのは、見えない
部分を何とか見てみたい、という好奇心が、いつの間にか脳に
恋と認識(誤認)されるからである。

ちなみに、こういう犯罪者(とは言っても市橋はいまだ容疑者
であり、容疑も殺人ではなく死体遺棄に過ぎない)のアイドル化に
いきりたつ人々の決まり文句に
「被害者のアン・ホーカーさんのご両親の心の痛みがわからない
のか。日本人として恥ずかしい」
というのがある。まさにお説ごもっともではあり、深い弔意を
示すことにやぶさかではないのだが、しかし犯罪者のヒーロー化、
アイドル化の本家はホーカーさんの出身国、イギリスである。
切り裂きジャック、ガイ・フォークス、ジャック・シェパード、
クロード・デュバルといった犯罪人たちを小説にし、舞台にし、
フォークソングにして、自国の誇る民間伝承文化として伝える
というのは、ある意味庶民意識のたくましさを物語るものである。

日本だって、阿部定事件が起ったときには、暗い世相を忘れさせて
くれたということで国中が沸き立ち、世直し大明神とあがめられ、
獄中の定には400通以上の結婚申し込みがあったという。
こういうヒステリー現象が起きる背景を考えれば、、定の場合は
戦争の足音、市橋の場合は深刻な経済不況という背景がある。
犯罪者のアイドル化は、たぶん大衆の、社会全般に対する不信と
不満のエグゾースト、という意味合いがあると思う。

うれしいニュース受けてちょっと気分ウキウキしながら新宿へ
出て買い物。5時半、代田橋行きのバスに乗って方南区民集会所
なる初めてのところで『オールド・フランケンシュタイン』稽古。
新宿からだと最寄りの停車場まで、30分近くたっぷりかかる。
鍋屋横丁の降車場で降りた人、乗ったときから気になっていたが、
そこで降りたことで牧伸二さんだ、と確認できた。
『ナベヨコ・ソウル』なんて歌もうたっていたが、本当に鍋屋横丁
に家があるのだな、と一人、心の中で何か大きな満足感を感じて
しまった。

方南区民集会所、いつもの稽古場の、舞台をみんなで取り囲む
方式ではなく、教室みたいに、舞台を正面から見るという
形なので何か落ち着かず。
今日は主人公・マリア役の別府明華ちゃんが風邪引いて
休んでいるのでいろんなシーンが稽古不能(ホントに風邪が
流行っている)。由賀ちゃん、もやし、菊ちゃんなどの部分を
重点的に。ハッシーがやたらギャグを入れる。さすがにオモシロイ
がストーリーが見えなくなってしまうものは最終的に削りまくる
つもり。

8時半、隣の部屋に会議が入り、芝居の稽古で声を出すと迷惑に
なるので早めに撤収。バスで中野まで行き、そこでKちゃんと
待ち合わせ。魚の四文屋に行き、相談事に乗る。以前、私が
Kちゃんに進めた仕事の件。彼女の家の事情というのを聞いて
驚く。そんな由緒がある家のお嬢さんだったとは。

四文屋、せっかく魚食いのKちゃんのために選んだのだが、
塩焼きがもう全部売り切れとか。キンキ刺身、カキフライ、
あさり酒蒸し、むつカマ照焼き、じゃこご飯など。ビール、
焼酎ロック数杯。

12時で閉店で出るが、まだ話が終らないので、アボットチョイス
に行き、ギネスとヒューガルテンで3時まで、話し込む。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa