裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

15日

火曜日

ボーイング暴食

 あんなまずい機内食をやたらがっつくから。朝7時半起床。心機一転、全寮制の高校に入学して勉強しなおす、という夢。夢というもの、ストーリィはまあ、意識下のものが形を変えて出てきたという説明で理解もできるが、その舞台装置にいたってはいったいいかなる意味があるのか、判断しようがないものが多い。今日の夢でも、その寮の食堂というのが、暗い中にテーブルが一列に数十メートルもの長さに並べられて、鏡製のふすまのような仕切が宙に浮かんだ形で不均等に並んでいる。その間を学生が行き来しているが、中に丹波哲郎や京本政樹などの顔もある、というわけのわからんものだった。

 朝食はオートミール。バタと砂糖、牛乳にシナモン。口唇炎、やや拡大。ヘルペスではないだろうな。新聞は昨日の成人式の報道。沖縄などで逮捕者が出た他はまず、平穏だった模様。警備が強化されたこともあるだろう。昨日は渋谷でも、紋付袴姿の茶髪の男とか、金髪顔グロの振袖姿の娘だのがいろいろ歩いていた。タクシーに乗り込んでいきなりくわえタバコ、という女の子もいたな。去年は晴れ着姿で路上にペタリと座り込んでいるのがいたが、今年はそういうのの姿はあまり見かけず。あとブッシュ大統領のプレッツェル詰まらせ事件。世界はひょっとして、タリバンのテロでなく、一個のプレッツェルで変わっていたかもしれない。モノカキとしての想像力ではこちらの方が面白い。まあ、同じディープ・スロートでも前大統領のソレと違って、なんかこのビンブッシュ氏のは子供っぽい。

 12時、六本木に出かける。まず銀行により印税振り込み確認。原稿料も大きめのところが複数振り込まれていて、少しうれしいが、この程度じゃすぐ、無くなってしまうんだよなあ。ちなみに、この確認をしたのが六本木明治屋ビル内のクイックコーナーだが、ここは今月28日で閉じられると張紙あり。最近、東京三菱はクイックコーナーをとにかく減らす方針らしく、一昨年暮れには公園通りのやつが、それから駿河台坂下の古書センター前のところ、そしてここと、私のよく使うところを選ってつぶしてんじゃないのか、と疑いたくなるほど、次々と無くなっていく。銀行端末関連においては、私の21世紀は確実に不便になっているんである。

 トツゲキラーメンで昼飯。ここもいつまでもつか。渋谷に戻って、時間割。アスペクトのK田氏と打ち合わせ。『裏モノの神様』単行本。100本ほどの原稿の中から60本をセレクトしたものを渡す。これが3月刊行、なかなかハカの行くこと也。この日記をまとめるのが次の仕事だが、これは『夢声戦争日記抄』風に、つまんでまとめることにした。完全収録版はまた後年、どこか物好きな出版社がやってくれるであろう。帰宅、就職情報誌『クルー』原稿ゲラチェック。

 5時半、新宿ロフトプラスワン。石原伸司『異様なラブレター』出版記念トーク&サイン会。石原さん、ハリキッて当然のことながら例の金魚&子鹿コンビを連れてもう早くから入っている。斎藤さんと挨拶、今年もヨロシクとヨモヤマの話。『ハム太郎』、斎藤さんも悪ハマリらしく、“あれ、バッドトリップムービーですよお!”という。ゴジラなんかより、彼女にとっては大ゴトの映画らしい。とにかくワケがわからん、と話がはずむ。映画関係のヒトで私の日記読んでる人がいろいろいるらしい。それはウカツなことは書けん、と思うが、しかしコッソリ読んでいるということは、私のウカツを楽しみに読んでいるのだから、まあウカツなことをこれからもどんどん書いていこう、と思う。

 恒友出版のS社長、営業の人、来て、新刊をもってくる。井上則人くん装丁で、なかなかシックな出来。この書影も含め、すでに本日発売の『女性自身』に著者インタビューが三ページにもわたって載っている。“私、十数年モノカキやってますが、こんな大きく記事になったことないですよ”と言ったら、金魚&子鹿に“カラサワさんはアングラだから”と言われて苦笑。某国営放送Yくん、談之助師匠、QPさん、浜松の空自勤務のYさん(私の読者)、福原鉄平くん、その他知り合いの顔も続々。石原さんの知り合いという年配の婦人の二人連れが、知人たちに配ると言って、本を七冊も買ってくれた。ミリオン出版の比嘉さんにも久しぶりに挨拶。ここにも不義理を重ねているので、今年こそ何か仕事しよう。

 7時45分、トーク開始。客数40数名。最初はちょっと真面目にこの本の内容について話し、それからロフトの客用の裏ばなし。ヤクザがらみのシャブ・ホモばなしは何回聞いても爆笑もの。しかもどんどん新ネタが出てくる。9時に休息をとって販売とサイン。石原さんはひとり々々にサインをして、その手をしっかり握ってお礼を言っていた。福原くんに金魚&子鹿を紹介、アドバイスをしてもらう。

 後半はどんどん人を壇上に上げる。恒友出版のS社長、さすがにベテランだけあって話もうまい。K子も呼んで、妹という名目で徳島の刑務所に面会に行ったときの話をさせる。あと、例の二人、それから石原さんのホームページを作っている慶応の女子学生。ワイワイとにぎやかなうちに11時で終了。もう少し早く終わるかと思っていたのだが、延びてしまった。これはトークがはずんだという証拠で結構。

 いつもの『炙り屋』で打ち上げ。S社長に“しかし手慣れた司会ですなあ”と感心される。伊達に54回もプロデュースはしてない。石原さんも満悦の様子で、まあ結構。8年前に巣鴨の拘置所で面会し、“ここを出たら是非、本をお出しなさい”と勧めた一言が、やっと結実した。これはこれでひとつのドラマである。石原さん一行は帰りの電車もあるので、カンパイのみで帰宅。残りはわれわれ夫妻、談之助師匠、空自Yさん、国営放送Yくん、扶桑社のOくん、それに斎藤さんと身内のみでいつもの飲み会になる。Oくんが“くらたまさん呼んでいいですか”という。近くの漫画喫茶で原稿描いているんだそうな。漫画喫茶で原稿描くプロというのもはじめて聞いた。 回りの客がやはりオドロくそうである。

 くらたまさんも交えてまた酒。29万部というのはやはりガセだそうな。もっともそれでも×××は出ている。志加吾やなをきの本の何倍になるか? 話題はもっぱら(何故か)フェチの話になり、彼女がフェチ方面の知識がゼロなので、今度アロマ企画のビデオを教材に、コーチしてあげよう、と約束する。1時過ぎ、解散。渋谷のカプセルホテルに泊っているという空自Yさん便乗させて渋谷までタクシー。

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