裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

7日

月曜日

アジテーターがあるさ

 あの江ノ島スパイ上陸狂言事件の裏には大掛かりな国家的謀略があるのだアッ(ないない)。朝6時起きの予定で目覚ましをかけていたら、5時にオフクロに起こされてしまう。しかし早起きな人だな。朝食は外で食べることにして、風呂入り、旅支度をする。“読んでます”メール、まだ続々。まるきり私の業種とは関係ない人たちからも多く寄せられているのがうれしい。

 まだ薄ぐらい中、タクシーで札幌駅。快速の時間にマがあるので、喫茶店でモーニング。パンプキンポタージュを飲んだが甘ったるくて閉口した。朝焼けに映る雪景色の北の街々の美しさ。……まあ、見ている限りだが。飛行場でとりあえずのおミヤゲを買い、機内で町田康の本などを読む。東京は曇天。帰宅してみると仕事部屋の冷えきっていること。家具や床がシンまで冷えているので、暖房をいくら入れてもすぐにはあたたまらない。年頭一週間目にしてすでに原稿催促メールいくつも。今年もこの繰り返しで暮れることならん。

 たまたま昨日の北海道新聞の編集者コラム(朝日の『天声人語』みたいな欄)が、日記をテーマにしていた。続く日記のコツは天候のことを記すことだという鴨下信一の論を引用していたが、私のところへも、メールで日記が続くコツを訊ねてくる人が多い。私自身は、長く続けようと思って書いているわけではなくて(明日にでもやめる可能性はある)ただダラダラ書き続けているだけだが、それでも気がつけば3年以上ずっと続いている。要は“何でも書く”ことだろうと思う。これは日記につける価値のあることだろうか、などと考えはじめると、取捨選択がどんどんと進んでいき、しまいには何もつけることがなくなってしまう。見た夢の話だとか、タクシーの運転手との会話、ネコがゲロ吐いたなどというラチもないことまで、とにかく記憶に残っていることは全部、書き止めるくらいのイキオイで書く。すると不思議なことに、数年後読み返してみて一番オモシロイのがそういう瑣事であったりする。古いビデオ録画を見なおしてみて、番組そのものは面白くなくても、その合間にはさまれていたCMが無闇に面白かったりする、アレと同じである。記憶に残らないような雑事を記録しておくことに日記の妙はある。天下国家のことなどは誰もが書く。自分の生活の中の小さな記録ほど、後から読んで価値のある資料となる。

 講談社、マイストリート、その他から電話。仕事はじめは今日だが、本格的始動は明日から。今日は年末仕事の整理や連絡などで動きがとれない。それにとにかく寒くて、キーボード打つ手もかじかみそうである。冷蔵庫の中のものを年末に全部始末してしまったので、外へ出て、明日の牛乳やパンなどを買って帰る。

 5時半、新宿へ行きマッサージしてもらう。サウナに入っていると、全身のダルさが表面に汗と共に浮かび上がって来る感じ。リラックス疲れであろう。人間、ある程度テンションの上がっている状態がフツウなので、あまりにダラけると、帰ってくたびれてしまうのである。ひさしぶりに男性の人で、さすがに指が太くていかにも指圧されている、という感じ。施術されながらグーと寝る。これは今日、早起きしすぎたせいだろう。

 8時、船山で七草がゆを食べる。野生のアク味がほんのり感じられていい。最近の野菜はホウレン草でもキャベツでも、とにかく甘いばかりでアク味やエグ味が感じられない。刺身がウマかった。北海道というところ、魚介類がうまいのだが、刺身文化というものが発達していないせいか、刺身はどこで食べてもイマイチという気がする のである。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa