裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

11日

金曜日

必殺!メラトニン

 あの男を眠らせてほしいのでございますよ。朝7時15分起床。私の夢は子供の頃から総天然色だが、今朝の夢はまた、ひときわ色がアザヤカだった。老芸人さんが目の醒めるような色の着物を着て出てきたり、中華街のギンギラの装飾が出てきたり。それにしてもこのところ、夢が多い。朝食は胚芽パンとゴボウのサラダ、マーマレードにコーヒー。

 午前中は仕事。正月に送ったはずのフィギュア王原稿はメール不調か送られていなかったみたいなので、少し手直しして再送。それからSFマガジン。11時、東武ホテルロビーにて海拓舎H氏と打ち合わせ。メシ食いましょうというのでランチ、ポークの和風ミソソースソテー。正月頭が痛くて心配だったそうな。聞くとウチの女房と同じ症状。やはり病院では原因不明と言われ、漢方医には風邪と言われたとのこと。企画、年末に連絡なかったので流れたと思ったが、逆に応急でなく、リキ入れてヤル気であるらしい。タイトル案を思いつきで挙げる。あと、派生企画をいろいろ雑談。ホーキング青山の本をもらう。この男、最近やたら太って、岡田さんソックリになってきた。

 この本、帯をビートたけしが書いているが、ちょうどホーキングがたけしの番組にゲストで出たときにそのスタジオに乗り込み、直に依頼して文章もらったそうだ。しかもそれをネタにして、サイン会を一本、とってしまったという。Hさんに私が感心するのは、本を出しっぱなしにせず、出した後に手を次々打っていくところだ。今の出版社はどこも、コレがダメである。私が某社で出した本でサイン会が企画され、書店側がノリ気で会場を提供すると言ってきたにも関わらず営業が“日曜に仕事するのはイヤ”と言い出して流れたことがあった。呆れてモノも言えなかったことである。

 昼飯を早くすませてしまったので仕事すすめる。2時半に家を出て銀行に寄り、金をおろす。今日の歯入れの代金である。西永福S歯科。2時間半、口の中をいじられる。小学生の女の子のリアルな泣き声を隣に聞くという体験は談之助がうらやましがるであろうし、うらわかき女性が血のまじったうがい水をじょぼじょぼと吐き出している図は睦月さんがうらやましがるであろう。歯を3本、新しくかぶせて代金24万 7千円ナリ。キャッシュで払うが泣きの涙である。

 貧乏性で帰りの車中、ずっと“24万7千円あればナニが買えたか”と考えながら帰る。小腹がさすがに減ったので、パルコ裏の鯛焼き屋で鯛焼き一ヶ買って齧りつつ帰る。一ヶ100円には驚いた。鯛焼きが100円はさすがに暴利だ。と学会のぺーパー並である。しかも尻尾の方に餡が入っている分、頭の方にあまり餡がない。鯛焼きは尻尾まで餡が詰まっているのがいい、とは誰が言い出したことか知らないが、これは鯛焼きの成り立ちからして間違った論なのである。そもそも鯛焼きの原形は今川焼きであるが、まあ下世話もいいところの食い物で、大工や植木屋など、職人のオヤツであった。仕事の最中、手も洗わないままにつまんで食べるものだから、どうしても持った部分が汚れてしまう。そこで、その持ち手として今川焼きに尻尾をつけた店があった。小判型の今川焼きの一方に取っ手がついたのだから、結果、必然的に魚の形を取ることになり、鯛焼きという名になった。伊達にああいう型をしているのではないんである。アンコの詰まっている部分を食べ終えたあと、残った尻尾の部分を犬にやって、パンパン、と手をはたいてまた仕事にかかるのが、正しい鯛焼きの食べ方である。尻尾にまで餡が入ってる、などというのは場違いの気障の極みなのだ。鯛焼き如きでキザをやってどうしますか。

 昨日『現代野郎入門』のことを日記に書いたら、読者からメールが来た。あの本、ネット古書店でいま、8000エンするそうである。私の購買価格はこれよりかなり安かった。何かトクをした気分になり、少しは24万7千円から(まだ言ってる)取りもどせたような気になる。

 夜までずっと仕事。SFマガジン、考え考え書くのであまり進まない。しかも電話頻々。鶴岡から、和泉元彌結婚に関してイヒヒな裏情報。小野伯父から、今後のスケジュール確認の電話。そんなこんなで、結局今日じゅうには完成せず。明日のことにしてソバ屋『花菜』でK子と晩飯。いつも頼むメニュー、アツアゲの野沢菜添え、タチウオの塩焼きなどが、何か格段にうまく感じる。ひょっとして、新しい歯のせいかも、と思う。いい方へいい方へと考えようとしている。K子、昨日の日記のCMの夢がムチャクチャ印象に残ったという。コミケ打ち上げの写真の現像が出来てきたので見るが、いやみんな、楽しそうなこと。K子が意地悪く指差して“コイツ独身”“コレも独身”“あ、ココの一列、みんな独身”。

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