裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

16日

土曜日

どうもアリアドネ

迷宮からの脱出方法を教えてくれて、アリアドネ。(テセウス・談)

※金成さん迎撃オフ

朝8時起床。
朝食9時。スイカ、トマトの冷製スープ。
今日も暑くなりそうな予感だが、噂では台風が近づいている、
などとも。明日の天候はどうか?

資料本読んだり、スタッフのグチにメールでつきあったり。
何かやはりコミケ前はテンションあがらず、というか落ち着かず。
ネットで関係資料探していたら、とてもマンガには使えない
ディープな話が出てきたりする。
メール一通、どうにも(自分勝手な理由ながら)テンション下がるものあり。

某件で某さんに前知識を得ようと食事に誘う。
他にもいろいろ話したいことあり。
昼はローストビーフサンド。
コーヒーに入れる牛乳もらいに母の部屋に行ったらめぐみさんがいた。
カツサンドを一切れ貰う。
やはりカツサンドの方がうまいな。

金成由美さんコミケ上京につき、
迎撃オフをと思うがなかなか人数確定せず、確認メールを
何度も送る。
やっと確定したのが3時過ぎ。
店を探すがさすがにこの時間の土曜日ではどこも予約満杯。
やっと新宿歌舞伎町のジンギスカン屋『霧島』を押さえた。
元大関の霧島の経営する店らしい(ちゃんこ霧島の姉妹店か?)、
鹿児島出身でジンギスカン屋を経営するのも珍しい。

台風情報、半分くらいは当たっていたみたいで夕方から急に
気圧乱高下、資料本読みながら簡易ベッドに横になったら
1ページも読めずにグーと眠ってしまった。

アニメ『アーチーでなくっちゃ!』『ドラドラ小猫とチャカチャカ娘』、
『おちゃめな魔女サブリナ』などを生みだしたアメリカのマンガ出版社
“アーチー・コミック・パブリケーション”の社長、マイケル・
シルバークライトが5日に死去。76歳。1941年に盟友ジョン・
ゴールドウォーターと共に(ゴールドウォーターが原作を担当、
シルバークライトはプロデュースを担当していたようだ。シルバーと
ゴールドが組んで作った会社というのは実に儲かりそうである)、
漫画雑誌『アーチー』を出版し、以来60年以上、アメリカの
漫画文化に貢献してきた。

その特長は、“時代と共に作品を進歩させない”ことであった。
今なお出版され続けているアーチーコミックスは、1940年代に
発売されていた当時と、内容が全く変化していない。
ハイスクールのバンド仲間を主人公にした作品中には、暴力も、
ドラッグも、セックスも、ベトナム戦争も、宗教も、人種対立も何もない。
古き良きアメリカを体現した学園生活が、時が止まったかのような世界
の中で永遠に繰り返される。驚くのはマンガのテクニックすら向上せず
70年近く前の絵柄のままに続いていることだ。
親は『アーチーコミックス』を読んで育ち、その内容が変化して
いないことに安心して、同じ作品を子供に読ませる。
すでにアーチーコミックスはアメリカ人の根幹をなす文化にまで
なっている。

日本の漫画評論家は(ことに若手と呼ばれる評論家たちは)常に
新しいものしか評価しない。赤塚不二夫の死去の際にも、
赤塚が(山上たつひこなど若手に)乗り越えられて過去のものに
なったことを日本漫画が進歩している証拠、とか言っている文章が
いくつか目についた。
それは正しいのだろう。ある面においては確かに、進歩こそ正義だ。
だが、めまぐるしく変化し続けているが故に、日本の漫画は
ついにアートでしかなく、カルチャー(文化)足りえない、という
状況も、確かにあるのではないかと思う。

日本のコミックスシーンと全く異っているアメリカン・コミック文化の
代表者であったためか、日本ではその死去すら報道されなかった。
しかし、アメリカ人を知るためには『アーチー』は絶対押さえて
おかねばならない文化の一つだと思う。

6時半、新宿に出る。雨はポチポチ。
東口交番前はえらい人出。無事金成さん、しら〜さん、QPさん
などと落ち合えた。霧島はコマ劇場への道の途中にあって、
こじゃれていないところがいい。久々のジンギスカンもうれしい。
と、思ったら、予約が取れていなかった!
神田支店と間違えて予約したかと一瞬あせったが携帯の発信履歴では
ちゃんとここに電話している。
どうも向うで名前を間違えて記録しているらしい。
しばらく待たされてラチが開かないので、電話番号を言うと
店のお姉さん、
「アッ、わかりました! お客様は田中様でした!」
いや、だから違うって、と苦笑したが、カラサワとタナカを
どうして間違うかな。
ジンギスカンそのものは大変おいしく、話もいろいろな人物月旦、
某所界隈の有名人の話などが楽しい。
QPさんの知り合いのSFファンの女性、それからコミケのため
上京した近衛さんなども無事、店で合流。

大変ゴキゲンで帰宅、明日のためにすぐ寝ればいいものを
もうちょいと酔いを足して、などとさらに黒糖焼酎を
ロックで飲んで、ウヒヒヒと奇妙な笑い声立てながら
1時過ぎまで飲んでいた。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa