裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

13日

水曜日

口パク金星

この星の生れの人は天性の才能に恵まれるが国益にならないとして
裏舞台に引っ込まさせられる危険性があります。

※打ち合わせ二本 資料受け渡し 飯田橋麻衣夢ライブ

左目が人間のエネルギーの集積所で、右目を眼帯で
隠して左目だけで世の中を見れば全てのことは
解決する、という説を宣伝する番組のコメンテーターと
して呼ばれ、理屈をどうにかつけてくださいと
言われて困窮する夢。
共演がSMAPの中居くんで、
「これ、ウサンくさいですよね」
と言いながら眼帯をかけていた。

朝8時半起床。
母があんまり後ろ向きなことを言うので
ちょっと説教する。
今朝も朝から暑い。
9時朝食。メロンと青汁、カブのスープ。
某広告代理店の友人にちょっとメールで質問。
さる仕事先から“私のギャラの相場”を訊いてきたので、
客観的に見ていくらくらいなものか、を彼の会社の
キャスティング資料からはじき出してもらうため。

ミクシィのニュース、北京五輪の開会式で歌を歌った9歳の少女は実は
口パクで、実際に歌った子は“その外見的理由から(開会式出場の)
選考に漏れた”そうで、これは“国益のための措置だった”と
作曲家の陳其鋼が語ったという。
いやまあ、ああいう大舞台で口パクはよくあることだし(あんなに
吊られた状態で肉声で歌えったって無理なこと)、声が吹き替えって
のもテレビや映画でしょっちゅうやっている。問題は“外見的理由”
というミもフタもない言葉使いを子供に対し平気でしているその神経だろう。
かわいそうに、この声の子は国家のお墨付の
不細工ということになってしまったわけである。

しかし、声の吹き替えというと、つい『雨に唄えば』を思い出す。
あの映画ではデビー・レイノルズが悪声のスター役の
ジーン・ヘイゲンの歌の吹き替えに使われるという設定だったが、
実は美声で歌を歌っているのはヘイゲン自身で、ヘイゲンは自分の
歌を“吹き替えのように唄って”いるのである。
デビー・レイノルズの歌は(当時は)実は映画ほど上手くなかった。
真実は映画の逆だったのである。

最初に観たときから、いくらデビー・レイノルズを売りだすための
映画だからといってヘイゲンの扱いはひどいなあ、と思っていたのだが、
しかし観客はレイノルズの味方を当然し、ヘイゲンは悪役の役作りに
凝ったためにアカデミー賞にノミネートはされたもののこの映画以降、
あまりいい役が来なくなり、大したキャリアも積めず1977年に
死去。まあ、世の中はそんなもんである。

友人から返答、だいたい私と同類項の文化人のレベルから
割り出してもらう。ふーん、思ったよりもだいぶ相場はいいような……
本当にこれで請求していいのかね?

昼は茄子の肉詰め揚げ。
いろいろメール打ち合わせなどしているうちに1時15分を
過ぎてしまい、あわてて出る。
しかも、うっかりで渋谷の東武で打ち合わせとオノから
言われていたのを新宿のらんぶると間違えてしまい、新宿に
向かうタクシーの中での電話で知って驚く。
しかも、東武はまだ改装中だそうで、ベラミに急遽変えたとの
こと。15分待っててもらって、とオノに電話して
伝えるが、盆で道が空いていたおかげで、10分遅れで到着
できたのは幸い。

9月に収録の緊急特番。
小倉智昭が司会で、また半田健人くんなどと一緒である。
番組内容の打ち合わせ。
いくつかエピソード披露したら笑ってくれて、いくぶん
この番組の企画に抱いていた不安、解消。

終って事務所に戻り、と学会会誌などの到着をチェック。
コミケで配るチラシの最後のやつのデザインなどを
オノにメールする。
それから、またとってかえしてベラミ。
某局の某企画打ち合わせ。
こういう企画があると知ったのは今朝のオノのメールで。
打ち合わせというより、そのテーマに関して私の意見、考えを
1時間くらいずっとしゃべって聴かせるのみとなる。
まだ、どうなることやら、海のものとも山のものとも、
どころか撫でているのが象なんだか猫なんだかもわからぬ
状態だが、この企画を頂点として、ここ数日の私の周囲の動きを
思い返してみると、あきらかにこれまでとは変化しているような、
そんな気がふつふつとしてくる。

事務所に戻ると、大きな段ボールに三箱もDVD『山本ひろし物語』
が届いている。これは『ホラリオン』等で売るための事務所置き用
で、コミケ用は会場に別途届くはず。
ちょうどオノとバーバラ、それにSF大会に同行してくれるという
楽工社のSくんも来ていたので、ちょっと某件につき、
いろいろ話す。『トンデモ漫画の世界』は好調で、即重版も
決定、続編の刊行も決定とのこと。

コミケの混雑サークル対策用チケットをオノに渡す。
コミケ打ち上げは本郷三丁目で、ということだったが
疲れたいる(暑さも考慮すると)身には遠い、という苦情が
女性陣から出て、変更することにする。

そこから神保町に出て、ちょっと雑用ひとつ。
資料に関して。簡単にすませて、お茶の水からJRに乗り込むが
「そうだ、今日は麻衣夢が飯田橋ラムラで屋外ライブを
やっているんだった」
と思い出し、ちょっとのぞいてみることにする。
ちょうどDVDも渡せるし。

お盆なのであそこはゴーストタウン化しているんじゃないかと
心配だったが、行って見て驚いたことに、前方のテーブル席は
ほぼ満席、後ろの階段部分にも30人くらいの人が集まっている。
この集客力はさすがだな、と思った。
通行人も何人も足を停めていた模様。

DVDを渡し、rikiさんら、おなじみの追っかけメンバーに
挨拶(数人にDVDを売りつける)。やがてライブ開始。
せっせとホラリオンの宣伝をしていた。
ああいう場所なんで音響とかどうかな、と心配していたのだが
思ったよりずっと響きがよく、自家薬籠中のオリジナル曲は
あたりまえとして、『島唄』などはこないだ天窓で聞いたよりよかった
くらいだった。迫力、さえあった。彼女なら吊られても口パクなしで
唄えるな。あとはそれこそ国益になるような表舞台へ出すことだが。

常連の客らしいおじさんからアンコールがかかって『メロディ』
を唄ったのだが、麻衣夢と言えば飲み屋でも必ずオニギリを注文する
お米好き女子であり、そのせいか、歌詞の中の
「しっかり手を握りあって」
の部分が“しっかりとオニギリ持って」
と聞こえてしまって苦笑。

終って、事務所の人たちと今度飲む日をちょっと確認、
聞きにきていた市森くんと、来年のトツゲキの芝居の話など。
それからちょうど会場の隣がスーパーなので夜食の買い物。
別れて、総武線で新宿、そこから地下鉄で帰宅。
『山本ひろし物語』の内輪受け部分解説文原稿を書いてオノにメール。
その後、鴨湯豆腐を作って食事。簡単に作れるもののうちでは
美味の筆頭かもしれない。DVDで過去のトンデモ本大賞の
記録などいろいろ見て参考にする。

ライブ写真撮影:rikiさん@階段席

Copyright 2006 Shunichi Karasawa