裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

18日

金曜日

出来ますものは、花巻に脱北

落語『時朝鮮』。

※DVDデラックス原稿 朝日書評ゲラ メディアファクトリー打ち合わせ 
『御利益』二日目

真っ黒い壁のゲームセンターの夢。
以前はこの場所がよく、夢に出てきた。
ひさしぶりに見たのは、劇場でずっと黒い壁の中にいるからか。
その中でボクサー志望の少年が素人にボコられて涙を流している。

朝9時まで爆睡。
母の室に電話して朝食9時半にしてもらい、たとえ三十分でも、
と眠りをむさぼる。
雨音、風音すさまじ。
もっとも徐々に普通の降りになってきた。
最近は雨くらいでは客の入りにはそう影響はないが、それでも
気になる。

今日は予定がパッツンパッツンである。
まずは朝日の書評ゲラを戻し、
DVDデラックス今日〆切の原稿、書き出す。
昼を母の室で12時半にとらせてもらうよう頼んでいたので
それまでにアゲようとカリカリパキパキ。
2300字、2時間ジャスト、12時25分にアゲて
編集部とイラストのK子にメール、した直後に昼食の報せ。

昼食は“味噌汁が飲みたい”というこっちの注文で、
ネギとワカメの味噌汁に、炊き立てのご飯、それと
タラのムニエル、じゃこおろし。
じゃこおろし美味なるかな。
昼食らしい昼食ひさしぶり。

自室に戻って打ち合わせ準備、そのさ中に伊賀良の
ヒコク氏から電話、飯田の空き日を知らせてくれる。
ちょっと連絡(電話とメールというやりとりだったので)
行き違いあったが、無事、7月中の土曜を押えられた。
あぁルナティックシアターの飯田公演、決定。
いろいろ紆余曲折あったので、決定にひとまずホッとする。

1時半、バスで新宿、2時、雨の中東口純喫茶『らんぶる』にて
メディアファクトリー打ち合わせ、担当Sくん、河井克夫さんと。
今回の本は、河井さんにイラストではなく、作品の“一部”を
担当していただくという趣向。
いろいろと河井さんが準備してくれた設定画にダメ出ししたり、
ナルホドこういうイメージになるか、と感心したり。
中で河井さんがある登場人物のモデルの名を挙げたのに秘かに大ウケ。
こういう仕事なら井上デザイン、と推挙して、
公演後に打ち合わせを、とSさんに依頼。
やはり人に話すことは大事で、説明することで自分の頭の中が
整理される。公演あけすぐに河井さん担当部分の指示書を
出すことを約す。
Sさんに刊行予定を訊いたら、こっちが思っていたより
(『御利益』のパンフの近況予定に書いたより)一ヶ月早まって
いるのにちょっとオドロイた。

3時半まで話して、そこから三者三様の用事でバラける。
河井さんは世界堂へ、Sさんは地下鉄、私は小田急線。
下北沢まで、車中で書評用読書。自己愛型人間の分析の本
(書評が決定するかどうかまだ未定なので書名等は伏せる)。
モノカキで、さらに舞台にも図々しく立とうなどという
私のような人物にとってある程度の自己愛は必要要素として
あることは当然と思うのだが、典型的自己愛型人間と何度も
ぶつかっている経験を持つ身としては、自分と重ならない
部分を見つけるとホッとする。
ただ、同じ自己愛型でも、新ジャンルに興味を持ち、どんどん
アウェイに進出していくタイプと、新ジャンルを決して認めず、
自分の得意とするホームの中に閉じこもるタイプがあって、
前者の方が自己愛を武器として成功する確率が高い、という
指摘にはうなずけるものがあった。

4時楽屋入り。
楽屋でなべかつさんなどと雑談。
なべさん、今度某国民的ドラマに出演が決まったとか。
ただし、そのワンシーンの出演のために、ほぼ一週間、スケジュールを
あけておかねばならないとのこと。
それが撮影というもの。

ハッシーに長野のこと伝え、これで正式決定。
サテ、その他いろいろ雑用すますうち、あっと言う間に7時開演時間。
私は毎度の出番のたびに衣装が違うのでいろいろ準備が大変。
で、幕開いて、あとはずんずん進む。例によって麻見さんと
スピーカーに耳を傾けるが、初日に比べかなり静か。
ウケてないのか、と心配になったが、福引きシミュレーション
シーンからどっとテンション上がってきた。この演出はいいアイデア
だった、と思う。

私の出、一回目トチリあり、やはりグズグズ。
二回目、昨日なみに反応よく気分よくする。
三回目、共演者の疲れによるダンドリ違いあって、ひとつ
ギャグが飛んでしまった。
まあ、まとまりはよく、65点には届かなかったが60点には
行ったと思う。思いたい。
ダンスのシーンでちょっとフリを間違ったので減点。

まちゅくみさん、狩谷さん、K田くん、はれつさん、安達OBさん
などの姿あり、客席がかなり豪華。
彼らは芝居していながら、来てくれているのがわかったが、
芦辺拓さん夫妻と古屋兎丸さんはどこか本番中には確認できず。
終わってから挨拶。
古屋さん、大変にこの芝居を気に入ってくれたようである。
すぐハッシーに紹介。ポスター、快く引き受けてくれるとの
ことでハッシー、喜んでいた。
「いつでも言っていただければすぐデザイン案出しますから」
「わかりました。じゃあ、5月の×日にお願いします」
「はい、5月の×日・・・・・・やたら近いですねー!」
というような会話あり。古屋さんを見て菊ちゃんが
「いい男だわー、こりゃ」
と声をあげていた。
昼間に河井克夫、夜に古屋兎丸と、一日のうちに天才漫画家
二人と仕事のことで話せるというのは幸福なことである。

今日はNC赤英がギャグを思いっきりはずしていた。
古屋さんが“以前の日記に書かれていた、二日目のジンクスって
何のことですか?”と訊くので、
「あのギャグのことですよ!」
と答えて笑う。

安達OBさんには9月のことも少し。
一ヶ月通し公演と伝えたら驚いていた。
「全部出演するんですか?」
「それは・・・・・・うーん、出たいけどねえ」
と答えるしかなし。

芦辺さん夫妻は丁寧にアンケートを書いてくださっていた。
芦辺さん曰く
「下町人情喜劇なのに、唐沢さんの出てくるシーンのみ、
翻訳劇調になりますな」
また奥様曰く
「お声と滑舌がいいこと! オドロキました」
と。音楽畑の人に言われたのはお世辞にしても気分よし。

とにかく好評サクサク、ことに古屋さんの絶賛は嬉しい。
ハッシーに今年の約束として三つ、頼まれ事を引き受けたが、
ひとつは古屋さんにポスター描きを依頼すること、もうひとつは
地方講演の受け皿を確定すること。三つのうちふたつが
一日で実現してしまった。
ものごとが有卦に入っているというときはこういうもの。

オノが、ちょっと溜まっている仕事のことで、と
言うので、飲みは今日は遠慮して、早々に小屋を出る。
階下に降りたら、どこかで見た顔、と思ったらおぐりゆかだった。
よう! と手を上げて挨拶。向うはドギマギしていたようだった。
女優ならそこできちんと笑みを返さないといけない。

近くの蕎麦屋で打ち合わせにする。もっとも、蕎麦居酒屋だったので
飲みはしたけど。
スケジュールでタイトになっているものの処理の指示。
あと、今後のおおまかな予定。
季節の筍料理、桜鯛料理などで旬の風味を堪能。
帰宅、11時。久しぶりに人間らしい時間に寝られる。

※熊倉一雄さんからの花、福澤朗さん、清水崇監督からの花、
中野昭慶監督からのタイヤキ。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa