裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

8日

火曜日

Oh,yeh騒動

「ヘイ、この城はオレのものだぜbaby!」
                  (ロック野郎の悪家老)

※気圧乱調体調大不良 『社会派くんがゆく!』ゲラ

珍しく夢も見ず。
6時起床。
1−9の稽古に出るために原稿を書く。
まずは社会派くんのゲラチェック、これは実質的な
原稿書きである。
ところが、いつもは書くのが楽しくて案外サクサク進むこの
仕事がなかなか進まない。
同じところを何度も書き直したり。
なんでかな、と思い、〆切にしてあった仕事場のカーテンを
開けたら、外は豪雨。
このせいか、と驚く。

9時に朝食をとって部屋に戻る。
麻黄附子細辛湯のおかげで少しマシな体調になる。
以前、鬱のときはちょっとした雨でも耳のあたりがズキズキ
していた。最近はだいぶ左右されなくなって、やれありがたいと
思っていたのだが・・・・・・ここまでひどいとさすがにダメ。
マイミク某人の日記を読んで感情をゆさぶられてしまったのも
原因か、心悸亢進もあり。

なんとか社会派くんはアゲてK田くんに送るが、
もうダメ、で、ちょっと待ってくださいとあぁルナのMLに
メールして、ベッドに倒れ込む。
一時間ほど気絶。
寝るのと異るのは、頭の中がグルグル回転して、寝ていても
自分が奈落へ落ちていっているような、そんな感じに
襲われ続けている。

起き出して、小学館クリエイティブ、楽工社その他に
仕事メール。
夕方、サントクに買い物に出る。
まだ本調子でなし。
オノから明日の収録の台本が母の室にFAXされる。
私はバラエティ部分には出ないでいいそうで、
解説担当とのこと。
ちょっと安心。

この機会に、と仕事用に送られてきた『墓場鬼太郎』の
DVDのサンプルを全十一話イッキ見する。
友人の角銅くんが演出していることもあり、
本放送のときはあまり感想を述べなかった。
つまりは、あまり感心していなかった。
水木キャラと水木キャラ以外の描写の落差や
中途半端な展開の早さ(『霧の中のジョニー』など
白黒版アニメでも二話続きだったのに)や、鬼太郎の
性格の各話でのブレが気になったのだ。

しかし、まとめ見すると案外いい。
私の満足するところまでレトロにやってしまうと今の視聴者が
ついて来られなくなってしまうだろうし、
寝子の唄う『君にメロロン』は原作では森山加代子の
『メロンの気持ち』だが、ねずみ男の大塚周夫にちゃんと
鼻歌で原曲を歌わせているのも、
「わかってやってんですよ」
という作り手側の意思表示だろう。

『メロンの気持ち』のヒットが昭和35年、
アニメ中“トランプ重井”という名で登場するフランク永井の
『有楽町で逢いましょう』が昭和33年、原作の『吸血木』で
吸血木にされる作家・三島由美夫(三島由紀夫)が肉体派作家と
みなされてマスコミの寵児になるのが昭和30年頃。
吸血鬼ジョニーの名のモトとなる克美しげる『霧の中のジョニー』が
昭和36年、ジョニーに狙われる池垣首相(池田勇人)が
首相に就任したのが昭和35年。
チベットから来た高僧トムポ(原作ではチンポ)のモデルであろう
チベットのラマ僧ロブサン・ランパ(実はイギリス人)の
ベストセラー『第三の目』が光文社から発行されたのが昭和32年。
森脇将光の森脇メモが元になった造船疑獄事件が勃発したのが
昭和29年(森脇氏はそれでかえって名を知られ、昭和40年に
恐喝未遂容疑で逮捕。アニメで“キョウモリ”と読んでいるのは
森脇の逆さでワキモリというつもりで脚本家が脇森と書いたのを、
声優がそもそも森脇将光という人物をしらずにそう読んでしまい、
仕方なく文字を協森に変更したのではないか)。
ジーン・ケリーとシド・チャリシー主演の映画『ブリガドーン』
公開が昭和29年。
・・・・・・水木マンガというのは実に貪欲に時代相を取り入れていたのだ
なあ、と改めて感心。手塚治虫が作品の古びるのを恐れて
滅多に現代風俗を取り入れず、描いても単行本で削ってしまったり
していたのと対照的である。
結果、水木作品は古びた。
そして、古びることで永く生き延びたのである。

ところで角銅くんは“霧の中のジョニー”のモデル、杉本五郎を
知っている、スタッフ中でたぶん唯一の人だろう。
彼にこの回を演出して欲しかった!

食欲なく、ポテトチップス(カルビーの“じゃが彩(いろ)”。
案外うまい)など噛りつつ、焼酎飲む。
中島かずきさんから、特集番組よろしくとのメールいただいて恐縮。
やはり人選が二転三転して私に落ち着いた模様。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa