裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

25日

木曜日

ぼっけもんゲットだぜ!

すいません、ポケモンもぼっけもんも見てないので受けが思いつきません。

※ゲラチェック数本 楽工社打ち合せ 大和原作 立川流落語会

よほど眠かったのか、
夢の中で眠くて眠くて、途中でコックリしはじめる。
そこで目が覚めたが、何かまだ寝続けているような
気分で、なんとなく一日中ボンヤリ。

9時起床、そのまま朝食。
Yくんの奥さんが焼いたという食パン、美味。
それにスチューベン、ブロッコリスープ。

入浴、日記つけ、ダラダラ。
いかんいかんと自分を叱るがやはりダラダラは楽だ。
とりあえず、学研『デジタル購入ナビ』ゲラチェック。
『プロント・プロント』ゲラチェック。
電話で『パチスロ必勝ガイド』次回のネタ決め。

昼にはまた握り飯。キムチと一緒。
母は(私も)キムチはちょっと酸っぱくなったくらいが好き。
母が市販のキムチをうまい具合に発酵させたのがついていて、
非常にうまい。

2時から打ち合せ。
1時には出ないとバスでは間に合わないが、
雑用いろいろあってなかなか出られない。
1時15分、出てバスではいかんので地下鉄で新宿、
そこからタクシー使おうと並ぶが、私の前が車いすの
老人だったので、少し待つ。5〜6人が後ろに並んでいた。
そしたら、後から来た男女二人がすっと、列を無視して
次のタクシーに乗り込んでしまった。
タクシーの運転手もちょっと文句を言ったようだが、
強引に乗り込んで発車させていた。
見ると、ちょっとテレビでも見かけたことのある
美少年アイドル(名前は覚えてない。顔は覚えがある)。
女性はその付き人かマネージャーか。
たぶん、地方の仕事から帰って、すぐ次のテレビかラジオの仕事に
入る必要性があったんだろう。世の中は道徳律ばかりじゃ縛れない。
私がマネージャーでも、時間に追われればこれくらいの無理は
してしまうかもしれないが、そのマネージャー女性がすれ違いざまに、
車椅子の老人の方に向かって
「急いでんのに迷惑なんだよ、このジジイ」
というような露骨な視線を投げかけたのがいけませんでしたな。

時間ピッタリに渋谷着。時間割で楽工社Mくん、バーバラと
打ち合せ。ペンディングになっていた単行本企画の再開について。
再開するにあたって、盛り込み直す新アイデアの解説を私から
ざっと。Mくんは何となく顔とイメージが立川談奈に似ているな。

終って出たら、バーバラが“たばこと塩の博物館”の、
昭和三十年代展示を見ましょうと言うので、一緒に入る。
『続・三丁目の夕日』の便乗企画であるが、やはりレトロファン
として、あの時代のものが並べられていると、もうそれだけで
嬉々としてしまう。展示は小規模だったが、入場料100円なので
腹も立たず。それにしても、公社だった時代にはこれでも
よかったろうが、民間になってもこの値段据置で、大丈夫なのかね。

事務所で原稿、大和マンガ原作一本。
取り上げる対象を一件増やすにあたっての談判、担当N氏と。
懸案だった未決の対象一件も候補出したら、素晴らしい選定、と
好評だった。

5時、事務所を出て、地下鉄で上野広小路。
赤坂見附の駅に、大きなエスパー伊東のポスターがあった。
うわあ、こんなメジャーになったのか。
お江戸広小路亭立川流落語会、夜席。
入ったら待乳庵さん、前座名人さんがいたが、私で9人目。
まだツバナレしていないのに驚いた。
高座は志らべの『たらちね』。オリジナルのクスグリを
いろいろ入れ、オチも工夫していてなかなか。
次がらく里、前のらくB、その前のブラ汁。
こっちはすさまじくオーソドックスに『目黒のさんま』。

それから談之助、立川流真打昇進ばなし。
満場(ったってやっとこの時点で10人)爆笑。
ここで仲入。
さすがにまだ客が入ってきて、最終的に14人。
次に上がった談修が、この客数はこの会においては大入りのうち
に入る、と言っていたのが可笑しい。
例によって大学の講師みたいなインテリ顔で『転失気』。
“花屋のおじいちゃん”て言葉が出てきたが“おじいちゃん”は
現代語すぎてちょっと違和感。
これもオーソドックスだったがオチはちょっと変えていた。
確かに“重ねるとぶうぶうが出ます”ではわかりにくいか。
死んだ小せんの転失気を昭和40年代に聞いたが、オチで
「これ珍念、客人にお見せするからてんしきを持て」
「へーい。ぶう(と、おならをする)」
「何をしておる。三つ重ねのやつじゃ」
「ぶうぶうぶう」
とやって、客を爆笑させていた。
いい時代だったね。

次が談幸。ぐっと渋く『猫の茶碗』。
これは大学時代に聞いた米朝のが絶品、ただし大阪らしく、
猫の皿をねらう商人が本当にぎらりとした目でにらむところに
凄みがありすぎた。談幸はそこらをさらりと流して嫌味がない。
この人がこれから20年、東京落語のベイシックな存在になる
のだろうな。オーソドックスな話しぶり中に
「侘び寂びってのは、ゆがんで薄汚いもんの中にあるんだ
そうで……なら、桂南なんてのは詫び寂びなんですな、あれは」
というような立川流独特の毒が混じるところがたまらない。

で、トリが待ってました、さだやんこと立川左談次。
もう、いかにもといった感じで
「楽屋の帳面には品川心中って書いときゃいいんですから」
と言って、
「今日は『浮世風呂』をかいつまんで」
「えー、マクラはもうみなさんご存知でしょうから」
「“半ちゃん、ひとつ食わねえか”……あ、“夢”バージョンね」
などと、左談次調爆発。
落語ってこういうもんなんだよねえ。
難しい言葉での評価のしようがない。
そこが何とも嬉しく、かつ私ら評論家稼業には困った芸人なのだ。

終って、左談次“秘蔵の”品プレゼント。
テレカだという。クジのアシスタントで出てきた談之助、
「今、使い道のないモンだねえ」
と。そのテレカ、桂あやめのブルマ姿とか、
左談次ので“寿”と書いてあるが、いつ作ったか覚えてないやつとか、
談之助とブラックの真打昇進記念のものとか。

終って、キウイも連れて、さだやん、談之助、待乳庵、前座名人
という知り合い同士で加賀屋で飲み。
奥の、隔離部屋みたいな部屋(初めて入った)で。
芸談、芸論頻発、若き日の談志のエピソードや前座名人さんの
本業での裏話など、面白い話がいろいろ聞けていや、楽しかった。
11時半ころお開き、家にたどりついたのが12時半ころ、
上野はやっぱり遠いなあ。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa