裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

12日

金曜日

ジグソーにも劣る

腹立たしいパズルだ!

※幻冬舎打ち合せ NHKラジオ打ち合せ 『怪談せむし男』鑑賞 『アンド・ナウの会』打ち合せ

YouTubeで素人の歌う画像をエンエンと見続ける夢。
これは人生というものの暗喩かもしれない。
9時起床、朝食を9時半にして、
入浴。

朝食、二十世紀梨、フシャフシャのリンゴ、それぞれ三切れ。
ソーメン入り吸い物。
食べて自室にもどり日記つけ、原稿準備などする。
風邪、症状はそれほどでないが何か籠ってしまったよう。
吸い物と麻黄附子細辛湯のおかげで汗が吹き出て、
出かけるまでにTシャツを4枚も変える。

CDで露乃五郎『西遊記』聞く。
田中角栄が中国訪問して、日本中が中国ブームで沸き立って
いた当時に作られたタアイない噺で、時代を感じる。
孫悟空の如意坊がうんと伸びて観音様の股をつついた、などと
いうクスグリの後で
「NHKやからこれくらいにしといて」
などと言って笑わせていたが、その一方で中国にいた時分に
覚えたという『南支派遣軍』なんて唄をNHKで歌って
問題にもならなかったんだからいい時代だ。
http://www.biwa.ne.jp/~kebuta/MIDI/MIDI-htm/NanshiHakenGun.htm
要するに、国交の回復に少し遅れて、日本の過去の侵略問題
などをしつこく言いだす輩が現れてきたわけである。
この当時はまだおおらかだったのだ。

昼は焼きタラコの握り飯。鰻の煮付けが二切れほどおかず。
これが無闇にうまい。
2時、渋谷に出て東武ホテルで幻冬舎トテカワYさんと
打ち合せ。今日はまあ、いつも以上にカワイイ。
次回の著書の打ち合せもするが、岡田さんのダイエットの
話にもなり盛り上がる。
「でも岡田さん、お酒飲まないわけだから楽ですよね」
「私は最近は洋酒とかやめてホッピーにしている」
「ホッピーって何ですか」
「え、知らないの?」
てなわけで、ホッピーについてコンコンと解説。
「じゃ、今度ホッピーのおいしい店につれてってあげましょう」
と言う。ホッピーなんかどこで飲んでも同じと思うかもしれないが
出し方でもってまるで味が違う。

私の企画に合わせて、某人から預かっている原稿をちょっと
売り込み。
3時近くに別れて、そのまま今度は時間割。
NHKラジオ『平成落語家ジョッキー』出演打ち合せ。
パーソナリティが志らくの回(志らく、花緑、たい平、
彦いちが週がわりでパーソナリティを勤める)なので、
映画の話を、という予定だったが、浜美枝さんの番組とツかないか、
と心配していたら、私の日記を読んだら落語をこないだやった、と
書いてあったので、と勢い込んで、落語の話に構成を
書き換えてきてくれた。これはありがたい。
ブラックの名前とか出して大丈夫か、とは思うけど。

知ってる噺家さんの名前の一人に柳家一琴さんの名前を挙げたら
ディレクターのYさんも放送作家のKさんも、彼を絶賛、
ただし志らくさんの劇団の役者さんとして、であった。
Kさんは大学時代落研にいて、顧問がもう病気でほとんど
顔を出しはしなかったけれど、九代目の文治師匠(留さんの
文治)だったとかで、その秘蔵のテープなども持っているという。
ぜひ聞かせてほしいとお願いしておく。

事務所に。
今日はこれからシネマヴェーラで映画を観て、その後
『アンド・ナウの会』の打ち合せである。
メールなどに返答していたら、オノが息せききった声で
「センセー、大変です!」
と。何か仕事のダブルブッキングでもあったかと思ったら
「黒川紀章さんが死んだってテレビにテロップが流れてます!」
と。何ごとかと思った。
しかし、確かにちょっと驚く。トンデモ本の世界Vに、彼の
『TOKYO大改造』の原稿を書いたばかりだったので。
この本の中では黒川氏は2025年、93歳で世界の偉人と
称されている、という設定だったが、そこまでは生きられなかったのだなあ。

オノ、バーバラ連れてシネマヴェーラ。
入ろうとしたら“カラサワ先生!”と声がかかる。
見たら、快楽亭、鯉朝、それに柳家蝠丸師匠という、
落語界有数のカルト映画好きの面々。
快楽亭が“ナニ観に来たンです?”というので、
『怪談せむし男』と答えると、“ア、やっぱり。同じ趣味
ですねエ”と笑う。彼らは今、見て出てきたところであった。

オノもバーバラも、実はホラーが大の苦手で、
「怖くないでしょうね」
と言っていたが、上映中何度も吹き出していた。
いや、この映画、学生時代に文芸坐のオールナイトで一度
観たきりで、ラストシーンとかは明瞭に覚えているが、
途中のストーリィはほとんど忘れていた。
佐藤肇演出は東宝の山本廸夫以上に、この日本の風土の
中で無理矢理にゴシック・ホラーをやってしまう、という
力技。冒頭の、棺の中の発狂死体(北村和夫!)が、
蓋を開けてみると白菊を口に噛んでいる、というあたりから
もう、トバすトバす。

西村晃の大怪演が売り物であるが、この日本離れした
話の中で唯一、純日本風で登場する霊媒の婆さんが鈴木光枝、
というのが凄いキャスティング。霊が乗り移ったときに
目に金色のコンタクトを入れての狂乱の演技は、他の作品での
鈴木光枝の抑えた演技を知っている身にとっては驚愕であった。
あと、キャストに名前はないが、富永男爵の白痴の情婦を
犯す軍人(台詞が一言もない)は、玉川伊佐男の特別出演
であったような。

終って、映画館を出たところでIPPANさんと落ち合い、
百軒店のあたりでどこかいいところを、と探して、
山梨料理の店というところを見つけて入る。
しら〜さんも合流。

『アンド・ナウの会』は、モンティ・パイソンの
ジョン・クリーズの台詞“アンド・ナウ・フォー・サムシング・
コンプリートリィ・ディファレント”からとってIPPANさん
がつけた名前で、これまでと学会主宰で進めていた企画の
うち、と学会以外のメンバーも含めて、いろいろ発展させて
いこうという目的の会。例えば、『トンデモ映画祭』に、
中野貴雄や河崎実を入れて『奇想天外シネマテーク』としたり、
というようなことをやる。

と学会主宰の企画はあまり採算にはこだわらなかったが、
こっちの会はきちんと黒字を出して協力者にペイできる体勢に
しようとか、商品化(本、CDなど)を作っていくシステムを
確立させようとか、今日はまず、いろいろとアイデアの出し合い。
私の某企画にも、ちょっと動いてもらおうと要請する。

山梨料理、馬刺しのユッケ、カボチャのほうとう、
ニンニクバターステーキなどとイケダワイナリーのワイン。
イケダというから北海道の池田町かと思ったら勝沼の池田さん
という人のやっているワイナリーのワインだった。
ここを出て、まだ9時過ぎなのでもう一軒、寿司屋に入って
さらに焼酎を飲みながらワイワイと。
しら〜さんとタクシー相乗りで帰る。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa