裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

17日

水曜日

めんくい小馬

いい男でないとなつかないんだから。

※東京中低域ライブ

朝3時ころ、打ち合せの夢。
打ち合せ相手がグラマーなお姉さんで、
イラスト等の打ち合せで
「ここはどうなります?」
などとすり寄ってくるので、自然避けるように
後ずさると、柔らかいものに手が触れ、
見るとテーブルの上にも女性が太股もあらわな格好で
笑いながら横たわっており、恐怖するというもの。
何も恐怖しなくてもいい。
ニヤニヤしたのは目が覚めて、改めてシチュエーションを
思いだしてからのことだった。
それにしても、あの太股の感触はリアルだったが、
寝汗をかなりかいていたから、たぶん自分の湿った太股に
触れたりなんかしたんだろうねえ。

そんな夢を見て、興奮したわけではないが、
書評用読書などちょっとしてしまい、これが妙に面白くて
読み進んでしまい、結局、眠れずに7時半ころまで。
今日は夜に予定があるし、睡眠不足はツラいな、と
思うのだがこういうときに限って。

朝食は9時半。
ラ・フランスの熟成前の、リンゴのように固くて酸味が
あるもの。珍味というか、これはこれで美味い。
マンゴーの青い果実(情人果というやつ)みたいに
完熟したものより日本人にあう味かも。

1時半ころ、九州のぴんでんさんより訃報。
元AIQのしおやさん(マイミク)が亡くなったとの報せ。
愕然とする。九州在住で、オタクアミーゴス博多公演を企画するAIQの創立メンバーだった。
去年の10月、AIQのぴんでんさんの結婚式でK子と共に
博多入りしたとき、昼だったが刺身居酒屋で歓迎会を開いてくれ、
そこでビールを酌み交わしたのが最後になってしまった。

典型的な旧世代オタク特有のバイタリティと好奇心と、そして
特徴的な外観を持った人だった。頭に手拭巻いた姿で
自転車をこいでいる姿が目に浮かぶ。
会うととても気が休まる人だった。
アニメや特撮大好きだが、話はそれにとどまらず、仕事から政治、
宗教、何にでも一家言持っていた。

女性についてもトウトウと話していたのを聞いたことがあるが、
実践が伴っていたのかどうか、喪主を見たら母上の名前だった。
先立つのは不孝だよなあ。
52歳。あ、年上だったのか。
年齢不詳も旧世代オタクの特長である。

そろそろ冬で博多の水炊き、さらに『赤どり』の絶品の焼酎と
トサカ刺しなどが恋しくなってきたところだった。赤どりを
イメージするなら当然、AIQのみんなが私の回りを
取り巻いてくれていて、その中にしおやさんの姿も
アタリマエのようにいるはずだった。
でも、それはもう現実にはかなわない。
ご冥福をお祈りする。
あっちにも赤どりみたいな店があるのだろうか。
あればまた、焼酎をいっしょに飲みましょう。

明日が葬儀ということで、すぐ花を贈る手配、
東京〜博多の連絡では間に合わない危険性があるので、
ぴんでんさんにお願いする。

昼食を握り飯でとって、原稿準備。
A社Kさんからメール連絡。
次の書評本の選定の件、ちょっとエキセントリックな
内容の本なのでいかがか、という意見だったが、
そこらへんは軽く触れて、別のところを取り上げますので、
と返事。幻冬舎Yさんから電話、爆笑問題の文庫の解説依頼。
昭和の犯罪の本ということなので引き受ける。
爆笑問題の本には弟が装丁イラストをやっているのもあり。
唐沢兄弟と相性がいいと思われているのだろうか。

3時、バス出勤。車中で携帯使って仕事。
こんな風に電子機器に使われるのは本意ではないが
便利さというものには勝てない。
事務所、バーバラとちょっと話す。
そう言えば楽工社から、作業中断していた本の制作続行の
お知らせがあった。再打ち合せせねば。

亀田一家謝罪会見。
他のニュースがいくつもこれでトンだ模様。
なんだかんだ言って、テレビ局にとっては
「テレビ局、亀さまさまと そっと言い」
であろう。
今の世の中、アンチキャラがいないと視聴率はとれない。
ただし、アンチキャラで通すにはヒーローキャラ以上の
バランス感覚が必要。亀田一家はそれを欠いている。

5時半、家を出て新宿、そこでちょっと買い物などして
下北沢。オノと待合わせだが、偶然、もとサンマーク出版の
Tさんに会う。今、某社に契約社員としているとか。
作家さんと待合わせだそうだが、携帯に連絡あり、
「いま、下北沢だけど……えっ、そうだった?」
とあせった顔になり、
「すいません、待合わせは下高井戸でした」
と、あわてて改札口に消えた。

オノ、入れ違いにやってきて、下北沢440。
まだ開店前なので並んでいると、松本健一さんが歩いてきた
ので挨拶。東京中低域のライブでは、必ず待っている間か、
もしくは会場に向かっている途中で松本さんに会う。
これまでのライブでは100%の確率。
「どこのライブハウスも楽屋がせまくて、われわれは
人数が多いんで(11人)、外をブラついているんですよ」
とのこと。

最前列の脇の席が空いていたのでそこに陣取る。
以前ここに来たとき、テーブル上に、細いパスタを
揚げて塩をまぶしたものがグラスに入って置いてあり、これが
一旦ぽりぽりと噛りだすと止まらなくなるシロモノだった。
そのことをオノに話していたら、なんと今回、そのパスタプリッツ
に、“とまらん棒”という名称がついていた。

開演まで30分以上もあり、ビール飲んで待っていたら
松本さんと水谷さんが楽屋からそっと手招き。
「二人きりで寂しいから」
と、楽屋(というか控室)で残波ごちそうになる。
「ステージ前にこんなに飲んでいいんですか」
「まあ、大したことないでしょう」
とか言っていたが、そこにさらに差し入れでダバダ火振が
差し入れ。へべれけになるのではないか?

松本さん、ダジャレ連発。
私の日記を読んでダジャレにときどき大笑いする由。
お互いの家庭環境のことなど雑談しながら、しばらく居る。
やがて開演近くなったので、これも差し入れの草もちを
もらって退出。ライブ開始。
例によって、腹の底からずん、と心地よい振動が伝わってくる
バリサクの響きを大いに堪能。
ただし、焼酎のイキオイか何か、今日はアドリブ部分がテクニック
よりノリ中心で、みんな異様。かつトークが後半になるに
従ってあきらかにグダグダになっていった。
まあ、それも中低域の味なんだけど。
オノ曰く
「ステージ上が焼酎臭かったですよ」
と。鬼頭さんなんか、飲みながら演奏していた。

終って、みなさんに挨拶。
「唐沢さんですよね?」
と話しかけられたが、アスペクトに書いていらっしゃる
Y女史。私の原稿読んでくださっているそうで、
水谷さんとは昔からのつきあいだそうな。
意外なところで関係が。

明日の飲み会に参加するという水谷さん、田中さんに
連絡事項伝え、では、と出る。
出がけに、お客の女性から
「このあいだの東洋館の落語、聞きました!」
と声をかけられる。この女性、店に入ったときから、
いかにもこういうライブに来なれているシモキタ人種だな
と思っていたら、落語ファンで、
「この店と東洋館を行き来しているんです」
と。これまた意外な取り合わせだねえ、と笑う。
それにしても、あの落語は好評サクサクなのがちょっと意外。

オノも私も風邪っ気(オノはひきたて、私はなおりかけ)
で調子イマイチ。とはいえ、せっかく下北沢まで
来てこのまま帰るのも、と思い、銀座おでん・久の、
このあいだ出来たという下北沢店へ。
トマトのおでんが名物。
味は非常に上品というか、出汁だけで醤油とか足して
ないんじゃないか、と思うほどの薄味。
銀座ならこれでいいが、若い連中が集るシモキタでは
もう少しこってりさせた方がいいのでは、と思う。
いや、売り物のトマトおでんとか、おいしかったのだが。

出て、このまま帰るオノと別れ、もう一軒、と一人で
虎の子へ。幸いキミちゃん居て、雑談しながら『赤江』で
自家製スモークなどつつきつつ、30分ほど。
タクシーで帰宅。明日のことを田中さんにメールして寝る。

※写真は“とまらん棒”。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa