裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

31日

月曜日

ブギよさらば

 これからはロックだ! 朝6時起き、原稿書きしばし。7時半、朝食。シメジサラダと田舎パン。16歳母親殺し、キレた理由が非常にわかりやすい犯罪でレポーターが安心して取材しており、なにやらほのぼのといった感さえかもしだしている。親も子を殺す、子も親を殺す、平等で結構。原稿書き続き。その日〆切二本、いずれも遅れがちというのは精神的キツい。そしたらその原稿の〆切延びたという電話が入る。やたやたやた、と舞い上がって、もう一つの方(Webマガジン用サンプル原稿)にかかる。

 しかしこういう急場原稿やっているときに限って雑用多々。下の階に水が漏るとかといって管理人は来るし、荷物出すのに佐川急便に連絡せんければならんし、K子に弁当も作らなければならんし、11時にはどどいつ文庫の伊藤さんも来るので応対せねばならぬ。伊藤さん、やっと頭打った後遺症が消えたそうだが、もともとテンポが普通の人と違っている人物なので、やっぱりヘンに見える。まあ、これが個性なんだが。本日はチンチン関係の洋書(なんなんだ、そりゃ)をまとめて何冊も持ってきてくれた。まとめて買い込み。ジュース出すと、“たぶんここで飲めると思って、駅で水飲むの、ガマンしてきました”と言う。そう言えば今の若いのは駅の水飲み場をほとんど利用していませんな。誰も彼もミネラルウォーターのビンをブラ下げて、生ぬるい水を飲んでいるが、アイアンキングじゃあるまいし、そんなに水分補給が必要なのか。ムカシの日本人はそんなもの飲まなくても別に脱水症状でバタバタ倒れるなんてこと、なかったと思うぞ。

 昼飯はしらすでお茶漬けをかきこむ。2時までかかって原稿書いて、メール。サンプル用の原稿というのは非常に肩が凝る。午前中神経使いすぎたせいか。『歌手・中山千夏おりじなる・ふぁーすと・あるばむ』のCD聞いて頭を休め、外へ出て買い物少し。9月のヨーロッパ旅行の代金、払い込む。

 原稿ゲラチェック2本ほど。資料用読書しばし。某編集部から電話。先日の原稿の中に指を四本立てて云々という話を書いたのだが、その出典を細かく訊かれる。なにしろ四本なので、もしソノ方面から問い合わせが来たときの応対準備なのだそうだ。こういう応対準備で一番面白かったのは、某出版社で『ひょっこりひょうたん島名曲集』というCDを出したときに全社員に出た通達。曲の中に宝さがしの歌で、“キじるしキッドが言いました”というフレーズのあるものがあるが、この“キじるし”がけしからん、というクレームが来たら“これは「キャプテン・キッドのキです!」と答えること”というもの。

 5時、肩凝りあまりひどいので新宿に出てサウナ&マッサージ。整体のお兄ちゃんに“ひさしぶりにかなりひどいですね”と言われる。小青龍湯切らしたためか? 揉まれながらいい気持ちで、ヨダレたらして眠る。仮眠室でテレビ見ていたら、本日の暑さは記録的で、網走で38度、とか。昨日『刑務所の中』を読んだところだから、網走刑務所の中は地獄だろうな、とぼんやり考える。さすがに網走では暖房機器は完備されているが(ないと死ぬ)、冷房はまったく備え付けられていない。

 8時、K子と待合せ、渋谷神山町の高級家庭料理レストラン『雛』。例の滝口順平の“オヤオヤ見栄晴サン”の『ぶらり途中下車』でK子が見つけた店。ふつうのマンションを改造してレストランにしてある、高級住宅街によくあるタイプ。実際、東急本店の通りから一歩道を入っただけで、神山町というのはバカでかい(公民館と見まごうほどの)大邸宅がズラリ並ぶ超おハイソな空間となる。大使館なども並んでいるのだが、個人の住居で大使館の建物より豪華なのがザラなのだ。私が『ガメラ3』の監督なら、渋谷は駅前よりこっちをブチ壊すね。

 暗い道をちょっと迷ってたどりつく。内部は12、3席ほど。NHK関係の客が多いようである。料理はいわゆる家庭料理風で、突きだしが小アジの南蛮漬けと手作りのつみれ。お作り(鯛、帆立、新さんま)、茶碗蒸し、はもと湯葉の卵とじ、コロッケとジャコ大根サラダ、ブリの照焼、それに松茸の炊き込みご飯。まあ、まずくはないですけどね、これにお酒三合、生ビール二ハイ、焼酎ロック一パイで、しめて二万三千エン也。これはちょっとボリすぎでないかい。コロッケですぜ、ブリ照り焼きですぜ。よほどNHKには家庭の味に飢えているオジサンが多いのであろうか。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa