裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

20日

木曜日

♪KY、KYとからすは鳴くの

山の空気を読んでみてごらん〜

※『ピンポン!』ビデオコメント収録 『電クラ2』コンサート 『週刊朝日』電話取材

朝、8時起床。
昨日に続き外は雨。
夢の中で“停泥”という言葉を使っていた。
ものごとが、雑事に足をとられて前に進まないという意らしい。
今の自分のことか、と苦笑。

9時、朝食。瀬戸香とヨーグルト。
F書房Yさんからメール返信。
ガス抜きにラチもないことをメールしているのだが
律義に返信をくれるのに感謝。

T氏にゆうべ訊ねられた件、酔っていて即答できず、
えーっと、と記憶をたどりつつ帰宅して、マンションの
玄関をくぐったとたん思い出した。
こういう記憶と猫のなんとかは後から出る、というやつである。
T氏のメルアドが家にないので、共通の知人にメールして
しらべてもらい、急いでメールする。

昨日のマイミクさんたちの日記はアーサー・C・クラーク追悼
一色になっていた。そんなに読まれていた作家だったか。
まあ、あの映画があるからなあ。
しかし確かこの人、2001年に自分の毛髪を保存して、
将来クローン再生させる“エンカウンター2001計画”に
参加していたはず。
て、ことはまた近い将来、お会いできるはず。
それを信じる方が科学を真っ正直に信奉していたクラークの
ファンらしいだろう。だから黙祷は捧げない。
いや、それにはもうひとつ理由もある。

私的に言えばクラークのベスト作品は何といっても短編
『太陽系最後の日』である。このラストの衝撃の前には
『幼年期の終わり』も『都市と星』もかすむ。
デビュー作のこれを最高傑作とされることにクラークは忸怩たる
ものもあったと思うが、このショッキングなアイデアは、
キリスト教国の人間ならわれわれの数倍、数十倍するインパクトを
感じたことだろう。そして反発も当然ながら。

『幼年期の終わり』での痛烈な皮肉、『2001年宇宙の旅』での
徹底した無視など、クラークとキリスト教の間の相容れぬ関係を
たどってみる研究書がこれからきっと出てくるに違いない。
これは、一説による、ナイト位授爵の遅れに関連する、
彼の性的嗜癖と何か関連があるのだろうか?
“復活”したクラークはその研究書を目にするだろうか。

入浴して、かなりテキパキと雑用こなす。
背中が鉄板を入れたようだが、この天気では仕方ない。
昼はピルボックスダイエットという、
マイクロダイエットのパチものみたいなダイエットドリンク。
母が昔買ったのが余っているというので、それなら
ちょっと試してみようかと思ったもの。
バニラ味である。思ったよりは飲みやすかった。

12時10分過ぎに家を出る。
何か生臭いな、と思ったら、カエルが車にひきつぶされていた。
昨今の温かさで、冬眠から覚めて地上に出てきたとたんに
輪禍にあった模様。昔、阿佐谷の下宿の前の道が、
雨降りのたびにカエルの事故現場になっていたのを思い出す。
それにしても、あのあたりもここも、近くに池などないのに、
どこでこのカエルどもは繁殖しているのか。

タクシーで事務所まで。
1時にTBSから取材ビデオ撮影が来る。
準備していたら、すぐに来た。このあいだと同じUさん。
今日はゆるキャラについて、であるが、そもそも、なぜ
マスコットというのは使われるのか、地方キャラには
どうして変なキャラが多いのか、最近、そういう変キャラが
流行りなのはなぜなのか、というようなことを説明。
用意あまりしていなかったのだが、実例どんどん出てきて、
30分ほどで終わる。

Uさんと少し話す。
このあいだのツチノココメントは、やはり上の方にも好評だった由。
「バカバカしいことをまじめに説明づける」
のが笑えるらしい。まあ、私の基本スタンスですな。
放送は明日の金曜日(の予定だったが水曜日に延びた)。
ダイエットドリンクだけで腹が減るかと思ったが案外腹持ちがする。
とはいえ、口ざみしく、せんべいなどを少し噛る。
オノとDMなどの住所録整理。

雨の中、3時5分前に家を出て、渋谷クアトロへ。
マド、しら〜、小学館クリエイティブのリーナイさんと
待ち合わせ。
「あ、カラサワさんだあ」
という声がするので見たら、眠田さんの奥さんだった。
他にもトンデモ本大賞以来のファンが来ているのではないか、と
予想。それにしても長蛇の列で驚く。

招待ワクで入れてもらい、さらにぎじんさんが席を確保しておいて
くれたので椅子のいい場所に座れたが、ふだんはスタンド・バー風
のライブハウスであるクアトロなので、置いてある椅子も丸椅子
みたいなもの。見渡すと客層がもう、徹底してバラバラで、
老婦人の二人連れから若いカップル、いかにも鉄ちゃんという
感じのオタク男、ライブに行き慣れている感じの女の子グループ、
子連れのオカアサンからまじめなサラリーマン風まで。
よく言えば幅広い層に支持されているといえるし、悪く言えば
統一性がない。

ぎじんさんと、ダーリン先生の容体についてちょっと話し、
リーナイさんと、遅れると言っていたが無事到着したクリエイティブ
のWさんとは古屋兎丸さんにお願いした装丁の件。
携帯をそろそろ切ろうと思っていた矢先に鳴って、
何かと思えば週刊朝日から電話コメント依頼。
ライブ終わってから、と言って切る。
それで気づかれて、近くの席のお客さんに
「テレビでよく拝見してます」
と言われた。

さて、
「本日は『電クラ2』発売記念ライブにご乗車ありがとう
ございます、発車まで少々お待ちください」
という放送があって、ライブ始まり。
のっけからバッジーニの『妖精の踊り』(超絶技巧のカタマリ
みたいな作品なので普通、最後の曲目としてとっておかれる)
始まるという、クラシックファンならそれだけで
「今回は濃いぞ」
と思わせる仕掛けをこめたオープニング(もちろんフツーの演奏
ではなく、『いい日旅立ち』とのカップリング)であった。

あと、トンデモ本大賞で即興演奏された『アイネ・クライネ・
ソフマップ』の発展系『アイネ・クライネ・アキハバラ』、伊福部昭
と宮内国郎のコラボで特撮ファン悶絶の『ゴジラ対ウルトラマン』、
なんと弦楽四重奏をぜいたくに使ってバージョンアップされた
おなじみ『美しき青きドナウ河のさざなみ殺人事件』から、
例によってのFAX受信や踏み切り芸もあり。
第一バイオリンの女性、露骨にとまどっていたのに笑う。

杉ちゃんのMCがどんどんうまくなるのは前から感じていたが
鉄平くんもウケを憶えると次から次へと発言しはじめる。
これもまた面白い。
アンコール含め二時間たっぷり堪能。

CDへのサイン等でごったがえすロビーで、週刊朝日インタビュー。
石破防衛大臣、志位共産党院長、上祐“ひかり”代表など、
ネットで人気の人物たちについて。なぜ、この三人がネットで
人気者なのかを分析、いわゆるネットのヘビーユーザーたちに
共通する心理などを語る。ナニヲ話しているのか、と、
帰りの客たちに変な目で見られたが、大変わかりやすい説明で
ありがたい、と感謝された。何行くらい載るかな。
それにしても、最近は肩書を“テレビ・雑誌コメント業”に
したほうがよさそうである。

クリエイティブのみなさんはこれからまた仕事、ぎじんさんは
つきあうと言っていたが携帯で“野暮用が”と、私の電話中に
帰った由。オノがぎじんさんに“オンナですか、オンナ関係の
野暮用ですか!”とツッコんだら、
「そう思っていただいて結構です」
と言って消えたとのこと。呵々。

打ち上げまで間があるので、久しぶりに『九州』にオノ&マド、
しら〜さんと四人で入る。久しぶりだけに、店長はじめ
スタッフも総入れ替えになっていた。
時代は移る。
知人某さんがさる出版業界の集まりに出て……という話をしたら
オノにバカウケだった。

きびなご刺身、馬刺、からか鰯、いずれも美味。
きびなご刺身を“美味い”と思って食べたのは初めてのことでは
ないだろうか。ただし気圧のせいか、生ビールで変テコな
体調になり、これはまずい、と思って、途中からウーロン茶に
切り替え。
「オレ、ウーロン茶でいいや」
と言ったらオノが“不吉なものを見た”、というような表情をした。

8時半、そこを出て、杉&鉄の打ち上げをやっている日本海庄やへ。
ジェオの親会社の社長さんという方に紹介されるが、この人は
私の著書の大ファンだそうで、UMAとかマイナーコミックの話を
たくさんフってきて大喜び。ただし逃げ場がなくってちょっと困る。
鉄平くんとは古いゲーム話、パソコン、ワープロ機種の
話で盛り上がる。パソコン通信時代の話をして、
「HPがホームページではなくホームパーティの略称だった時代」
と言ったら鉄平くん、
「ヒューレット・パッカードってのもありますよ!」
と。

ジェオのMさんに『御利益』のフライヤーを
渡したら、出演者のところを見て、
「え、この麻衣夢ちゃんって子、うちが以前、緒方恵美(碇シンジ)の
シークレットライブをやったとき、対バンで唄っていた子ですよ!」
と。しかし世の中は狭い。100人とまでは言わないが、1000人
くらいしかいないのではないかとつくづく思う。
今回のライブは照明が素晴らしかったが、その照明さんも、
スタッフを見て、
「この小川さんって、あの小川さん?」
と言っていた。まあ、こういう業界の人は大抵が顔見知りだが。

体調もあり、しら〜さんと二人、10時過ぎくらいに辞去。
タクシー相乗り。車中トンデモ本大賞のフライヤー、ちょっと
いいものを作る必要性がある(今日のような場所でまくために)、
というような件。帰宅して、メールのみ見て、
体力回復のために早く寝る。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa