裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

27日

日曜日

そうおっしゃる・ネットワーク

mixiさまがデザインを変更するとおっしゃっているんで。

※『と学会年鑑2007』原稿アゲ 『極楽トンボの終わらない明日』観劇

夢を見る。
楽しい夢だったが、こういう類の夢を数年前にも見て、
これは自分の意識下のお告げだ、とか思い込み、
それから数年の精神的地獄を経験した。
あれの再現かと思うとゾッとする。
とはいえ、久しぶりにウキウキする夢だったことは事実で……。

朝9時20分頃起き。
また、携帯をコートのポケットに入れたままクローゼットの
中にかけてしまう、という昨日と同じポカをする。
ボケかな。

朝食、イチゴ4粒、リンゴ4切れ。
アオマメの(グリンピースと書くよりこっちが好み)の
スープ、それに暮に名古屋のファンからいただいた、
熊本名産バンペイユ(晩白柚)のシャーベットを一口だけ。
ほろ苦くて美味。

原稿書き、と学会年鑑本のもの。
今日中に終わらせねばと力を入れる。
1時45分に本原稿なんとか完成させて送り、
さらに30分ほどかけて、トンデモ本大賞選考会のテープ起こし
にチェックを入れて送る。
3日間かけてしまったわけだが、書いた文字数で計算してみたら、
かなりのものになっていた。一日の仕事量としてはまずまず
なのか、と思う。

昼飯は仙台の牛タンを焼いて、麦飯パックを温め、ジャガイモの味噌汁
を作って。やはり牛タンには麦飯ですなあ。
眠田さんからいただいたベータのビデオで、
『スターウォーズ』水曜ロードショー版を鑑賞。
大場久美子の棒読みは感動的なまで。
とはいえ、眠田さんも言うように、主役三人以外の声優は
ベテランを使っており、ダース・ベイダーの鈴木瑞穂、
ベン・ケーノビの久米明など、いずれも好演、なかんずく
グランド・モフ・ターキンの川辺久造は、この後このシリーズに
ターキンが出てこないのが残念なほどのハマリ役だった。
そう言えばこの頃はグランド・モフ・ターキンは
“偉大なモフ・ターキン”と訳されていた。
“グランドモフ”ってのが階級名だ、というのは後付けの
設定としてもちと、苦しい。

見終わって取りだそうと思ったら、なんと『宇宙大作戦』
(さいきんの小癪な呼称ではTOSか)が一本、その後に入っていた。
これも見てしまう。いや、今のシリーズから見た人間なら
信じられないくらいチャチなセット、チャチな特撮である。
テーマ曲も軽いこと。無茶苦茶に懐かしい。

初期のスタートレックは、映像で見せるスペクタクルでは
なかったのである。SFという形式を借りて、風刺、寓話、愛憎と
いった手法で、“人間ドラマ”をより印象的に見せる仕掛けだった。
いや、『宇宙大作戦』ばかりではない。『アウターリミッツ』
『ミステリー(トワイライト)・ゾーン』『宇宙家族ロビンソン』
などもそうだった。それは『フラッシュ・ゴードン』『バック・ロジャース』
など、一時代前の活劇ものから一歩進んだ“知的な娯楽”として、
50年代、60年代の制作者たちが企画した、新しい作品群だった
のである。

『スターウォーズ』は、その風潮に異を唱え、
『フラッシュ・ゴードン』『バック・ロジャース』の時代の、
バカだけど楽しいSFに戻ろうよ、という主張だった。
70年代頭あたりに、上記のようなテーマが突っ走りすぎ、SFが
重く、固くなりすぎていた時代にSFマニアだった私たちは、
その主張に拍手し、『スターウォーズ』を大歓迎したのである。
その後、“どうもバカになりすぎたんじゃないか”と反省したのだが
時既に遅し。かつての知的なSFの世界は、映像のスペクタクルの前に
雲散霧消してしまった。思えばこのビデオには、SFドラマのあり方を
変えた作品と、それ以前のSFドラマの代表作とが収められていたのだな。

5時、池袋まで出る。
シアターグリーン、久しぶりであるが迷わずに到達。
渡辺克己さんのお誘いで、渡辺さん客演のシアターバロック公演
『極楽トンボの終わらない明日』観劇。
“躍るやくざ”シリーズなのだそうで、劇場の案内をする
若手さんたちも、全員がヤクザルックに決め、
「オス、いらっしゃいませっ!」
とドスの利いた声で案内してくれる。
シアターグリーン大ホールがいっぱいの盛況。
入ったときには主役の飛野悟志はじめ主演メンバーが、
観客プレゼントのジャンケン大会を行っていた。
飛野氏が、“昨日、作者の高橋氏が来てくれて、初めて題名を『終わらない
あした』と読むとわかった。ずっと『終わらないあす』って読んでてさあ”
というのに笑った。

最前列のちょっと端の席に座って観賞。
開幕直後からいきなり大規模なダンスシーンが始まって、
度肝を抜かれる。
ストーリィは、近未来(?)の東京湾に浮かぶ巨大な
要塞刑務所、『モビィ・ディック』が舞台。
モビィ・ディックでは、看守長の高山の主張のもと、囚人更生活動の
一環として、各監房の囚人たちに演劇グループを作らせ、コンクールを
開催していた。コンクール優勝の劇団員(囚人)たちには
報償として減刑が認められていた。
トップ人気を誇る、女囚たちによる宝塚チックな『監獄歌劇団』はじめ、
組長山海重蔵の歌謡ショーが売りの大衆劇団『男組レビュー』、
アクションショーを得意とする『チーム特攻パンチ』などのチームが
コンクールに向け覇を競っていたが、刑務所の中で一番の弱小劇団
『黄昏愚連隊』は、新人受刑者の古賀銀次郎を受け入れるが、
彼は演技に興味がなく、失敗しても失敗しても繰り返し、
脱走を企てては懲罰房入りさせられ、刑期も追加されていく。
困った男ではあるのだが、しかし、なぜか、その執拗なまでの
“自由への渇望”が、同じ劇団員はもとより、対立する囚人グループ
たちにまで、何故か気になる存在になりはじめる……。

で、この囚人たちを“演劇で”束ねるカリスマ的看守長の役が
渡辺克己さんである。理想主義者ではあるのだが、自分の理想の
ためには、それに逆らうもの、ことに脱獄犯を徹底して憎むエリート。
だが、その憎しみの裏には悲しい体験があり……という複雑な
キャラを、あの深みのある声で演じている。
お誘いを受けるときに
「あぁルナとは全く違う芝居です」
とメールにあったが、確かに異るところと、小劇団として似通った
ところもあり、楽しんで観てしまった。

監獄歌劇団の男役スターを演じる井田英恵が、まさに宝塚スターに
見え(後で調べたら本当に宝塚出身らしい)、圧倒的な肉体美を
誇る加藤幸司、そしてオリンピックの体操の最終選考に残ったという
高倉亜樹の体技など、舞台上の見所も十分。

欲を言えば、“モビィ・ディック”が海上に浮かぶ孤島である
という設定をもっと活かして脚本に反映させた方がいいと
思ったし(主人公の銀次郎の脱走が、ただ塀を越すだけ、というのでは
海上の刑務所からの脱走は不可能だろう)、また個々の劇団の
カラーの違いをもっと際立たせてほしかった。ことに監獄歌劇団の
(ストーリィ内での)存在理由が薄い。
また、スペシャル・ゲスト役の島田洋八さんが、スペシャル・ゲスト
だから、という理由で(それ以外に意味が見えない)役を重くされており、
不自然さが感じられる。……といった欠点はあれど、
とにかくパワーあふれる芝居で、元気がもらえるものだった。
カーテン・コールのとき、渡辺さんが私の名前を呼んだので、
立ち上がって挨拶。

渡辺さんと出るときちょっと話し、辞去。
携帯が鳴ったので出るとテレ朝で、橋下弁護士の当選が確実に
なったとか。マニフェストに目を通しておいてほしいとの電話。
JR、地下鉄と乗り継いで帰宅。途次、サントクで買い物。

帰宅して、メール等整理しつつ、夜食。
小柱、ハマグリなどで貝味噌。
それと、釜揚げ桜エビ。
明日の予定として、スパモニ終わったあと、京王多摩センターまで
行ってパルテノン多摩で溝口健二の無声映画を見る予定で、
オノにそう伝えておいた。7日にシアターχでお会いした
柳下美恵さんからチラシを頂いていたのである。
ところがオノから、
「ネットでいくら調べてもそういうイベントをやっていない」
と言ってくる。おかしいと思って、チラシをもう一回見ると
“1/28(日)”とある。
「あ、ごめん、カン違いで今日だった」
とメールすると、折り返し、
「でも、明日が28日ですよ」
とのこと。もう一度チラシを見返すと、
「2007/1/28(日)」
とあった。柳下さんは、自分の活動の資料としてこのチラシを
くださったのだろう。私はてっきり、渡された時期から
言って、直近のイベントだと思ってしまったのであった。
うーむ。
ホッピー三バイ。早く寝なくてはならないのに、
12時半まで起きていてしまった。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa