裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

16日

金曜日

源内源内ベイビー

きっといつかは 江戸のパパも
わかってくれる エレキテルの効果を

※室蘭講演

朝7時に起床、寒い々々。
こういう寒い朝に温泉旅館とかだと寒さがご馳走になるのだが
このホテルニューバジェットはビジネスホテルなので
そんなぜいたくも出来ず。

せまい浴槽につかって髪を洗う。
それでもサッパリはした。
大学時代、下宿の婆さんが気学に凝っていて、
なをきが上京してきた日に“その日に北から来るのは
方角が悪い、別のところに宿をとってから来てください”と
言われて、一番安い新宿のビジネスホテルに泊まったら、
なんと浴槽が三角だったのに仰天したことがある。
結局、あまりにひどいのでキャンセルして
オールナイトの映画館で夜明かしをしたが、
あの三角浴槽には一度浸かっておけばよかったな。

支度すませ、出て階下の喫茶で朝食。
と、言ってもここはパンとコーヒーのみ、ただし無料サービス。
ハムパンとクロワッサン。ジャムくらいあればいいのに、と思うが。
コーヒーもミルクなし、自動販売機コーナーで牛乳買って
コーヒーと飲む(ただし牛乳は町村牛乳で大変おいしい)。

食べ終ったら昨日のNHKのKさんら迎えにきていて、
そのままタクシーで会場の中学校まで、約30分。
寒くて、玄関前の水たまりはカチカチに底まで凍っていた。
こういう凍った水たまりを見るのも北海道離れてから
久しぶりである。ここまで乾燥した寒さは北海道独特のもの。
雪もゆうべはチラついたらしい。
昔の札幌を思い出し、ちょっとキュンとなる。
しかし、寒いってだけでノスタルジーにひたれるとは。

講演先の中学校、まるで映画のセットかと思うような古び方。
ゲタ箱も木製、教室の掃除用具入れも木製。
NHKスタッフの女性たち二人(共に本州出身)が、
「私たちの中学校時代にももう、こんな木製の用具入れなんか
なかったですよ」
と言っていた。スチール製だよなあ、それは。
ストーブは流石に灯油ストーブだったが、
つい数年前に変わったらしく、壁に貼ってある注意事項は
まだ石炭ストーブのもの。
じゅうのう、デレッキなどという懐かしい単語はじめ、
「朝、コークスまたはホットコールを準備しておいてください。
準備していないストーブには点火出来ません」
などと書いてある。

コークスとは石炭を乾留(蒸し焼き)にしてタール分を
抜いたもので、高熱になり、また煤煙が少ない。
私が小学校のころ、札幌市内の全公立施設の石炭がコークスに
変えられるという発表があり、さすが文化都市、サッポロ! と
みんなが大感心していた。何か自分が前時代の遺物のように
思えてくる話だな。ホットコールというのは、
やはり熱量の高くなるようにした石炭なのだろうか。

「どうぞストーブの側へ、と勧められるが」
いや、ストーブに近い席は熱くてズボンが焦げたりするんです、
と昔語りをする。実際、ストーブ前の席に座って、
プラスチックの筆箱が溶けたことがあった。
思えば凄い環境で勉学をしていたものだ。
モバイル開くが、エアHの調子悪く、通信できず。

何か、今日のお客さんで私に会って本を渡したい、という
人がいるという。会って見ると、苫小牧市の中学校の先生で、
『M78星雲より愛をこめて』という本を文芸社で出された
神谷和宏という方。あ、どこかで聞いた名前だと思ったら
原田実さんのサイトからリンクされている人だ。
中学校教師でありながらウルトラシリーズの大ファンで、
文学的な観点からのウルトラマン評論を書いたのである。
朝日ソノラマから二冊目の著書のオファーもあったが、
ソノラマ自体が消滅してしまったので宙に浮いているとか。
いただいて、帰りの車中で読むことを約す。

で、講演。『第59回放送教育研究大会 胆振・室蘭大会』
という名目で、私のは特別講演。放送教育ということで
NHKが協賛し、地元の中学校の先生、父兄、そして生徒たち
200人ほどが聴衆。何でも私を講演者にするにあたっては、
先生や父兄の大きなプッシュがあったとか。
ちょっと緊張。
テーマである雑学とコミュニケーションについて、いろいろと
実例を出して話し、後半はトリビアクイズをマドに作ってもらった
画像を画面に映し出してやる。
昨日、Kさんから“室蘭の聴衆というのはおとなしくて、あまり
反応がないかもしれませんが……”と聞かされていたが、
反応極めてよく、最後列に並ばされた中学生たちからも盛大に
「へえー」
などと声があがり、多いに盛り上がった。
PTAのおばさまたちも身をよじって笑っていた人とかおり、
わたし個人としてはまだ改善の余地アリだが、しかしこの手の講演では
最も成功した部類かも。
やはり堅苦しい話より、こういうのがいいよね。

花束もらい、謝辞(これが苦手だが)受けて、控室に。
Kさんが“昨日の(講演の)反応とは全然違いました!”と。
校長先生に挨拶し、バンでまた2時間かけ、空港まで。
車中、昨日の運転手さんと北海道グルメで話がはずんで
退屈せず。

1時に空港着。
飛行機が3時半でまだ間があるので、昼食をとる。
ウニ丼を試みる。
2400円と高いが、まずまずであった。
オミヤゲ類買い込んで、『M78星雲から〜』読みながら飛行機を待つ。
誠実にウルトラシリーズに取り組んでいるところに
好感が持てる。インパクトが少し、プロの評論家の書いたもの
に比して弱いかな、という感じがするのはやむなしだろうが、
しかし上原正三をウルトラシリーズ最大の功労者、と
論じているのは慧眼である。ここに絞って一冊にしてもよかったの
ではないか。

帰りの飛行機もスーパーシートの同じ席。
機内サービスはあられ。
朝日新聞の書評用本を読みふけりながら。
リムジンバスで新宿。首都高がちょっと渋滞していたが
大したことなし。京王のデパ地下で買い物ちょっとして、
疲れたのでタクシーで帰宅。

汗をかなりかいた。
風呂入れてじっくり熱めの湯につかって、疲労を取る。
それから夕食、千歳空港で買った『ホッキ貝ご飯』、
ししゃもの燻製、ズワイ蟹爪(これは通販)などでビールと
ホッピー。『透明人間と蝿男』ビデオで見る。なんでかと
言うと、主演の北原義郎が室蘭出身であると調べてわかった
からである。さすがにこの映画はマニアックすぎて設問には
入れられなかったが。

以前見た時は退屈な映画だ、としか思わなかったが、改めて見てみると
戦後風俗への興味もあってなかなか面白い(蝿男が身体が縮小した
だけで飛べるとか、透明人間を蝿男がやたら恐れるところとか、
辻褄の合わない部分も、今見るとご愛嬌である)。
しかし、こういう変身人間映画にストーリィには、戦争というものが
大きなファクターとして関わっているものが多い。
戦争が人間というものを大きく変えていったことのメタファー、
としてとらえられなくもない。……まあ、実際は戦時中の軍の研究、
とか言えば設定が作りやすいからであろうが。

酒進み、もう一本北原義郎のを、と『ガメラ対ギャオス』。
雑誌など読みながらぼんやり見ていたが、ラストのガメラマーチで
不意に感情が込み上げてきて(湯浅監督のこととか、あるいは
子供時代のこととか思い出して)嗚咽してしまい、しばらく止まらず。
ガメラ観て泣くとは思わなかった。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa