裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

18日

木曜日

SHOW ME期限

森川由加里もそろそろ……なあ。

※『ポケット!』打ち合わせ 相模大野『八起』

朝8時起床、入浴等あわただしく、9時朝食。オレンジ半個、ミルクティー、青豆のスープカップ一杯。いろいろと雑用。

読売新聞人生案内、昨日に引き続き今日もなかなか。30代の愛書家で“今まで読んだ本が宝物”という今日び感心な男性だが、“本が好きすぎる自分”に困っている。
「本が大事なため、本棚はすべてガラス扉付き、光による変色を防ぐため、その上をカーテンで覆っています。読む前は、せっけんで手をよく洗い、読んでいる間も、ページを折らないように気をつけます。せき、くしゃみにも注意します。読書に集中できず、とても疲れてしまいます。書店でも、少しでも本の角がつぶれていると、買うのをやめてしまいます」

電車の中などで気軽に本を読んでいる人がうらやましく、もっとどんどん本を読みたいのだが、汚れや傷みが気になってどうしてもできない、どうしたら気楽に読書ができるでしょうか、という相談。これはもう本好きというより精神病の範疇だろう。以前、ネットで、“本は横に寝せて所蔵しろ”と怒っている人がいて、何となれば縦に置くとページとページの隙間にホコリがたまるからである、と主張して、いや、それはしかしと反論してケンカになったことがあった。その人もこの人も、困った病気は病気なのだが、しかし人がこれだけ本を読まなくなった昨今を見るに、こういう愛書病みたいな人種もだんだん減っていくのかな、と思うと、ちょっと悲しい。

昼は母の室でキャベツオムライス。ライスほとんどなくてキャベツの卵とじといった感じ。タケノコの繊切りの入った中華風スープも出たが、これが塩味がきいて美味。

梅田佳声先生から心のこもったお礼状いただき恐縮。今年も、紙芝居の芸術としての認知に心を砕こう、と改めて決意する。また、名古屋の明木先生から『社会派くん』号外の原稿をお褒めいただく。会心の文章、という出来のものではないのだが、それだけにインパクトはあった模様。

2時、家を出て事務所。タクシーの運転手さん、
「唐沢俊一さんですね。私も雑学好きで……」
と話しかけてきた。私とほぼ同年齢で、バブルで会社をつぶし、タクシーをはじめて8年。あと2年で個人タクシーを始められるので、そこから第二の人生をやりなおすつもり、なのだそうだ。

事務所で仕事ちょっと。『鉄人28号』に頼まれていた推薦文、いくつか考えて送る。3時、打ち合わせに時間割。まあ、明日は省吾さんなので、どんな話題ふってもまず、大丈夫だろうと話す。終ってまた事務所に戻り、6時まで雑仕事。

6時、オノとタクシー乗り合わせて新宿西口、小田急線改札。ロフトの斉藤さん、開田夫妻と待ち合わせて、ロマンスカーにて相模大野。斉藤さんのたっての希望で『八起』ツアーである。車中、『コミックガンボ』の江川達也の『坊っちゃん』、第一回が予告編だった、という話をする。予告編がないと『坊っちゃん』というのはストーリィがわからない話か?

八起で酒井一圭くんと合流。“あの”ガオレンジャーのガオブラックであるが、河崎実のトンデモホラーにも主演してくれている。彼もまた焼肉が好物で、ここには期待しているらしい。斉藤さんのはしゃぎっぷり、凄い。ここの肉には麻薬成分があるのではないか。

お母さんお父さんに挨拶。肉に関しては、もう縷々、ここの店のことは日記に記してあるが、いま一度記す。まず最初が豚トロとタン。タンに指し世にレモンをかけまわしてから焼くのが秘訣で、こうするとえもいわれぬ甘味が増す。もっともかけなくても気づかずうまいうまいと食ってしまいそう。

それからカルビ、これはもう、普通に極うま。そしてロース、これが小ステーキほどの厚みがあり、焼けていくのを横から眺められる。さらにハラミ。ハラミなんて肉のうちに入れねえ、と普段は思っているのだが、ここのハラミはきちんと“肉”の味と匂いがして美味。あと、レバ焼きも、ぺろぺろといく。

それからいよいよおまたせのレバ刺し。口の中にレバ刺しの方から飛び込んでいく、といった感じ。角切りレバ刺しは塩で。全く血の味がせぬ。甘味のとびきり純粋なものが舌の上にひろがり、じんわりと味蕾の中に染み渡る。

あと、ホルモン、ラム、ラムチョップなど次から次へ。もうそこらで、私は斉藤さんと一刻者をロックでがぶがぶ(斉藤さん、一升瓶を佐渡酒造がかえしている)やって、かなり酔う。斉藤さんは肉と酒に酔いまくって倒れてしまった。この日を期してずっと野菜ばっかりしか食ってなかった、というのがたたったらしい。壁に張ってある樋口真嗣さんの写真を見て
「あはは、酔ってる酔ってる。ばーか、ばーか」
いや、酔ってるのはおまえだ、とツッコミつつ。

最後はイノシシの鍋だが、残念ながら腹が破裂一歩手前で入らず、おみやげに持って帰らせてもらう。もう立てない状態の斉藤さんもおみやげに持って帰る。ベッドに寝かして、添い寝してやるが指一本触れず。なんと自制心の強い男か、と自分を褒めたいが、しかし寝ゲロして髪にそれで寝癖ついている女性に何かする気にはなれない。“こういうこともあろうかと”寝ゲロしたのなら、凄いバリヤー。夜中に目が覚めて、こういう状況にあることに驚いたらしく、帰りまーすと帰っていった。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa