裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

12日

金曜日

アラモきれいとよく見たら

♪うちの砦にゃ兵がない 隣のメキシコ軍にゃ兵がある(デビー・クロケット談)

※『ポケット!』収録 通販生活打ち合わせ 『DVDデラックス』打ち合わせ 廣済堂ゲラチェック

朝、8時半起床。風呂入る。湯を抜くのを忘れていた×2日目。二度目の温め治しなので、さすがに湯が汚れている。なぜ抜くのを忘れていたかというと、部屋の乾燥防止のため(加湿器はK子が新事務所に持っていってしまった)湯をはった状態でしばらく浴室のドアを開け放しておくからである。で、時間で急いで打ち合わせに出かけたりするので、つい、湯を抜くのを忘れてしまうのである。

母が札幌に孫の顔を見に帰っている(安いチケットを買って朝6時台の便にしたら、既存の交通手段では間に合わないことがわかったので、前夜から飛行場に泊まり込むそうである。コミケみたいだ)ので、朝食は買っておいてくれたパン。見るとベイグルである。

ベイグルならやはり付け合わせはスモークト・サーモンとクリームチーズであろうと思うが、買いにいくのも面倒くさいなあ、と思って冷蔵庫をのぞいたら、なんと二つが二つとも、酒のつまみ用に別個に買ったものがあった。魔法で出したみたいな気分で、たっぷりのコーヒーと共にいただく。ニューヨークのユダヤ人レストランで昔とった朝食を思い出す。晩年のジョン・キャラダインみたいな顔をしたウェイターの爺さんが、自分は以前オオサカに住んでいた、と言って、“オーキニ、オーキニ”とか挨拶してきたっけ。

日記つけ、メール連絡いろいろ。それやこれやであっと言う間に10時過ぎ。急いで家を出て、赤坂TBS。玄関先で植木不等式さん(本日のゲスト)がタバコ吸っていた。

スタジオに入り、打ち合わせ。今日は植木さんをお呼びして食べ物の話、と思っているのだが、食べ物と言えば、とADのS川くんが、本日発売のメガマックを買ってきた。これを海保さんと三人、齧っているところを写真にとってブログに挙げる。確かにデカいが、しかし味は要するにビッグマックを二つ重ねました、みたいなもの。佐世保バーガー的なジューシーさもなし。調整室のハルミさん曰く、
「三人とも、食べているうちに急に顔色が白くなっていった」
植木さん分析して、
「胃に血がいったからではないか」
と。

収録自体は、植木さんの知性と教養のおかげで大変快調に進む。ただし、私も植木さんもと学会ノリで、かなりゲテものばなしになったので、海保さんがそういう話題のときはあきらかに引いていた。

収録後、予定では前に橋沢さんたちと行ったベトナム料理店で昼食の予定だったが、メガマックでお腹が膨れているので、見附近くのアパヴィラホテルのイタリアンカフェでお茶。今年、植木さんに依頼されているお仕事の話や、例の企画の話。

この店、カプチーノのクリームでコーヒーの上面に絵を描いて出す。見ると正月らしくイノシシの絵であった。料金支払いのときに、作っているところを見たが、大道芸みたいな技術である。

2時過ぎ、別れて事務所。いろいろ雑用あり。『八起』にロフトさいとうさんと行く会の予約。挨拶文も急いで書く。それから4時半、時間割にて通販生活&ヤマセイ打ち合わせ。最終的な商品見本出来、あとは契約。しかし、改めて製品が椅子の上にごろんと置かれているのを打ち眺めると、“奇妙なもの作っちゃったなあ”という感あり、笑えてしまう。願わくは思惑通り金を生んでもらいたいもの。製品に同梱する小冊子の件につき打ち合わせ。

一旦事務所に帰り、オノと細かい打ち合わせ、それから『DVDデラックス』打ち合わせに改装なった東武ホテルへ(今年初東武)。ちょっとオシャレにワインの空き瓶などを飾るようになっていた。

打ち合わせ用に、次回ネタ候補雑誌何冊か持っていったのだが、編集のKくんがパラパラとその内の一冊を見ていて、“これなんか凄いですね”と指し示した記事が、私の見逃していたもので、今進行している別の仕事の資料にドンピシャ、というものだった(しかも二つも!)。“波に乗る”とか“有卦に入る”ということは実は錯覚に過ぎず、成功が連続することが次の失敗の確率を低くするものではない、ということはT・ギロビッチ『人間 この信じやすきもの』の中でしっかり語られていたことであり、充分に理解しているつもりであるが、しかしこういうことが続くとやはり人間、
「今年のオレはツイてるんじゃないか?」
と興奮せざるを得ず。

Kくんと雑談。今の若い世代(20代以下)はすでに、ネットのエロ画像ではなく、携帯のエロ画像でヌイているという話。紙媒体のエロなど、すでにマヤかアステカの絵文字くらいにしか思っていないのかもしれない。若い社員がほとんどマンガを読まないので、マンガ読まないの? と訊いたところ、“マンガは難しくてよくわからない”と答えたそうである。

確かに最近の少年マンガなどは、そういう読者用にセリフなどがあまりに説明調で親切すぎて、ちょっと幼稚な感じがしてしまって、この年になるとよく読めない。それへの反発でアート的な表現をしている青年マンガの方は、今度は表現が高踏的(っぽ)過ぎて、何を言わんとしているのかが極めて伝わりにくいものが多い。評論を飯のタネにしておいてこういうのはナンであるが、昨今の、マンガを高度に読み解こうなどという評論類が、さらにこれに拍車をかけ、若者のマンガばなれを加速させていることは確かであろう。マンガの基調はお約束の集積による通俗娯楽でなくてはいけないのだが、その“お約束”が通じない世代が現れていることをもっと問題視すべきなのではないか。

仕事場に帰り、廣済堂の単行本残り半分ゲラチェックをやる。案外書き足し・書き直し部分多く、バイク便が8時に取りに来たが、まだ全部は出来ず。仕方ないので、出来た部分のみ渡し、編集のIくんには残り部分はメールで8時半に送る。やっとこれでこの本も主な作業終わり。

今日はちょっとハードだったので、久しぶりに東北沢の『和の○寅』で夕食。小柳津母子に新年の挨拶。いろいろと、マイミクさんの常連さんのこと話しながら、白子とアン肝のポン酢、寒ブリ、ウニ、コノシロ酢じめのお造り、サヨリ一夜干しで酒。最後は新巻き鮭のお茶漬け。アン肝、コノシロ美味し。かなりどちらも手を加えている一品と見た。サヨリは池袋のふるさと物産展で購入したものだそうだが、皮のあたり、非常に甘味あり、絶品。それほど飲まなかったつもりだったが、かなり酔いが回った。帰宅して、何も出来ずにベッドに倒れ込む。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa