裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

27日

金曜日

愛とは、ケチって航海しないこと

船の旅行よりまず結婚のための貯金よ。

朝7時半起床。入浴、メールチェック、日記つけ。今日が実はNHKのリハーサル日だという陽司さんから。

9時朝食、イチゴ3粒とミカン1個、卵を落とした味噌汁。食事中に陽司さんから電話、今夜の打ち合せ。自室に戻ってさっそく今日のゲスト紹介を書き、メール。

ブログアップ用の文章、いつもならI井Dに送るのだが、今日は彼はTBSの“五年目研修”ということで、朝から何だか修業場みたいなところに閉じこめられるそうで、
「堀江容疑者なみのネット環境のところにいる」
とのこと。本日キューをとることになっているS川くんのところに送るが、きちんとI井くんとの間で連絡とれているかどうか、心配。

日記つけなど。早め(11時半)に弁当使う。お菜は牛の佃煮。こないだ発作的に作った、剥き身アサリのどっさり入った味噌汁を二日にわけてやっと消費。

事務所へ出勤。そろそろ税金の申告の季節で、支払い調書毎日来る。相変わらず雑多な仕事をしている。へえ、ここでこんなに仕事していたのかと思うところあり、もっとしていたと思ったがこれだけか、と思うところあり。仕事量からいくと能率的には極めて悪いということになろう。

ブジオのサイトのぞくが、不安的中で、まだアップされておらず。ちょっとジレる。今日のゲストは岡田斗司夫や内田春菊のように名前でリスナーを呼ぶというのでなく、内容で聞かせるタイプなので、事前の告知が大事なのだが。I井くんのいるうちにゲスト確定しておかない私も悪いっちゃ悪いのだが。おぐりからも、ソウルフードコーナーについての報告、“I井さんが読めるでしょうか?”とメールあり。S川くんのアドレスを教える。

4時のミリオンの打ち合せまで、書き下ろし原稿をせっせとやる。時間なく、なんとかまとめたというレベルのもの(読むにはまずまず)をプリントアウトして、オノと一緒に時間割。Y崎くんと単行本打ち合せ。ダンドリのY崎くんらしくサクサク進んで、なんだかもう本が出来たような気になる。ソレダカラいかんのであるが。Y崎くんの話し方のソツのなさは噺家に相通ずる、とオノに話していたが、彼女、今日初めて会ってよっくわかった、と。イラストを誰に、というので、ラジオライフでコンビくんでるベギラマにぜひとも、と推薦。一端仕事場に戻ってその旨、ベギにミクメール。

まだブジオのブログアップされてなかったら電話を、とオノに命じておくが、5時45分に、やっとゲスト紹介アップ。
「ゲストは講談師の神田陽司師」
という無難なタイトルになっていたが、ここはやはり
「ライブドア被害者緊急出演!」
にしないとイカン。

時間早いが、昼飯を早く使ったので虫養いの蕎麦でもたぐってから、と赤坂に出て、長寿庵なる門構えだけは立派な店へ二人で。あられとじという池波チックなものがあったので頼んでみるが、ツユが甘すぎてダメ。半分残す。6時半にTBSに行ったらもう陽司さん来てロビーで待っていた。NHKのリハは結局休んだそうである。それは気の毒。

イニャハラさんも早めに入っていたのですぐスタジオで打ち合せとなるが、ずーっと陽司さんしゃべりっぱなし。ホリエモンとハウルの共通点など、アニメ評論もやっているこの人らしい視点。『アニメ夜話』に呼んであげればいいのにと思う。それにしても本番前に大丈夫かと思うほどで、かなりテンションが上がっているな、と思うと可笑しい。

今日のディレクター代行のS川くんもアガリ気味。いつものADの仕事(CDやキエモノ担当)もやりながら、だから忙しい。他の曜日の担当のADさんも助っ人に来てくれている。『デイキャッチ』のDさんも来てくれて、やはりこないだのツンデレの回も2ちゃんの実況板あたりの反応が凄まじかった、とお礼言われる。

おぐり、今日はかなり凄いメニューを用意しているらしい。不敵に笑いながらスタッフと打ち合せしている。小林麻耶、予想通り講談を聞いたことがないというのでちょっと陽司さんに修羅場をひとくさりやってもらう。張り扇の音快し。麻耶もイニャハラさんも感心して聞いていた。

「張り扇の音が聞こえるようだ」
というのは文章の批評の、しかもこれまであまり褒め言葉としては使われてこなかったもの。要するに大衆受けする通俗な、勢いだけのもの、という意味だが、このテンポやぐいぐいと読ませていく力、というものを失っていったことが小説の衰退につながったのだと思う。いじいじと内面の思索だけを連ねたような文章はごく一部の純文学信奉者だけの慰みものでよろしい。我ら大衆には張り扇を。

麻耶「なんで講談ってそういう風にパンパン叩くんですか?」
陽司「ここで息継ぎを実はしているんです。パンパンという音でごまかされるんで、そのまま息をつがずに語っている風にも聞こえる」
という説明にナルホドと思う。
「あと、続きを忘れたときもこれをパパンパンと叩いて、その間に思い出す」
というのには笑った。

で、本番。イヤホンから叫ぶように響くS川くんの
「じゃ、行きます!」
の声に耳が痛くなる。初キュー出しで興奮しているんだろう。陽司さんはプロなので、打ち合せでウケて“それ、行きましょう”と言ったネタを、本番でも寸分たがわずやってくれる。素人さんは、打ち合せでウケたネタを
「これ、前にやったから」
と本番でしゃべらない。本番では聞いているのは私や麻耶ではなくて全国のリスナーなのである。

とはいえ、ホリエモンネタというのはやってみると実に微妙。まず、ネタの中ではいいが、普通の会話の中では“ホリエモン”と言ってはいけない、と指示が出る。逮捕されたので“堀江容疑者”なのだそうだ。あと、あまりホリエモンを擁護してはいけない、とも。まあ、一般視聴者に反感かわないように、という配慮だろうがやはり放送というのはそこらへん、難しい。

ダンドリ的には非常にうまく行く。ライブドア事件をネタにするというジャーナリスティックなフックと、講談という、現代ではいささかマイナーな話芸を全国ネットで紹介するという演芸マニアな私の嗜好がピッタリとマッチした。私の口調もこころなしか講談調になっているのが御愛嬌。

ブログへのコメント書き込みも好調で、内田春菊の回に並ぶ。ネタとダンドリさえよければ高名ゲストを呼ばずとも(と、書くと陽司さんに失礼だが)眞鍋かをりさんの曜日以上に反応がある、ということを証明出来て嬉しかった。

おぐりのコーナー、今日はフライ。カツ中心だが、今日紹介の店は愛媛の『清まる』。その道(どの道)では超有名なユニークカツの店である。サイトでメニューを見てみると、「明太チーマヨカツ」などというものがあり、案外うまそうではないか、と思っていたらおぐりが用意してきたのが“バナナチョコカツ”、“あんこチーズカツ”などというもの。バナナチョコは案外いけたが、あんこチーズはどうも。小林麻耶はその逆だったようだ。……と、いうことはならせばどのカツにもファンがつく、ということではないかと思う。

“花火”と名付けられた激辛カツは美味!ミキサー室の中でもスタッフに大好評だった由。清まるという店はファンも多いらしく、この店に関する書き込みも多々。中には
「清まると神田陽司と、その両方を知っているのはリスナー多しと言えど私だけだろう」
というのもあった。
しかし、トドメに出された“トンカツパフェ”は凄まじかった。これは清まるのメニューをもとにおぐりが試作したもの。味は……まあ、御想像にまかせる。トンカツという食べ物はその完成度がかなり高い食品で、それをこういろいろいじるというにはよほどの度胸がいると思う。勇気あるなあ、ここの女主人。

放送無事終わり、S川くんの初演出にみんなで拍手。ポッドキャスティング、温泉。小林麻耶はまだ温泉旅行というものを(大人になってから)したことがないそうで、私の独り舞台となる。それでもまあ、面白くはしゃべられた。

今日はI井Dおらず、I垣Pもイニャハラさんも次の予定が入ってしまっており、S川さんを無理矢理引っ張って打ち上げに。居酒屋ビル2Fの、以前中野監督と行った店。S川、陽司、おぐり、オノ、私。S川くんにご苦労様、と。話題、今日の内容のこと、3月まででこの番組が終わるのは惜しいということ(S川くん曰く“絶対ヨソの局がさらっていく気がする”と)、ダンドリ組みの技術のこと、おぐりの一人鍋のことなど。テンションまだ上がっているので、あまり食べ物が腹におさまらず。酒ばかり飲む。

11時45分、おひらき。陽司さんをタクシーで送って、その後私も車で。くたびれている筈なのに、なかなかベッドに入り込む気にならず。別に苦労した放送ではなかったのだが、このハイテンションはなんだろう。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa