裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

2日

月曜日

早く来い来い押尾学

“まなぶ”ではなく“がく”と読むこと。朝7時起床、空模様悪し。もう少し寝ていようかと思ったが起き出していつものようにmixi。

8時入浴、9時朝食、のはずが二日続けて母が寝坊。いや、これは昨日の接待で疲れ果てたのだろうと思うが。朝食、バナナ、リンゴ、スープ変わりに落とし卵。

今日、昼にパイデザが来るというので、一緒に昼飯を食うことにする。自室に戻り、朝届いた『社会派くんがゆく!』対談の赤入れ。30000w(2ちゃんねる用語の“w”ではなくワード、字数の意)で、原稿用紙にすると75枚。毎回原稿に起こすK田くん、正月早々ご苦労さま。送ってまた酒。

だらりだらだら。ビデオで『赤穂浪士』(1956)。やはり昨今の大型時代劇よりこっちの方がずっと面白い。もう五回は見ているビデオだが、最初見たときは内蔵助とは別個の忠義で策をめぐらす小杉勇の千坂兵部役の好演が大変印象に残った。今回はお犬医者の丸岡朴庵を演じた三島雅夫に魅かれる。

箸削りだったのがたまたま犬の薬を発見したために出世して、吉良に取り入ったりするが、しかし最後に討ち入りを果たした浪士たちの行進を、生まれたばかりの赤ん坊を連れて見に行き、赤ん坊を高く差し上げて
「ほーら坊や、大石さまだ、よッく見ておくんだよ」
と素直すぎるくらいに彼らをあがめる。この無節操なまでのしたたかさが庶民の強さの根源であり人間というものの姿だろう。浪士たちを見て
「あの男たちこそ、いつまでも死ぬことのない人間だ」
と千坂兵部がラストで言うが、真実いつまでも死ぬことがないのは、この朴庵のような庶民たちだろう。大石内蔵助のような人物は現代にはいないが、朴庵のような庶民はいまだちゃんと生きている。

昼1時、母の室でパイデザ夫妻と昼食。外はかなりの雨。黒豆、なますなどおせちっぽいものと粕汁、雑煮など。食べながら同人誌ばなし、サイトリニューアルについてなど。めぐみさんは母の料理ひとつひとつに感嘆していた。適度に悪口にもつきあえ、社会的常識人としての対話も出来、こういう人が母の近くにいてよかったと思う。結局、私とかではやはり業界人として奇矯すぎるのである。

部屋に戻り、メールなどチェック。開田さん夫妻から、あのカバンはタクシーのトランクから、自分たちの荷物と一緒に間違えて持ってきてしまった運転手さんのカバンではないかとメール。百円玉の棒が入っているのもお釣り用と思えば納得で、まずそんなところだろう。昼寝と読書。

ディクスン・カー『パンチとジュディ』読了。カー作品の特長であるオカルティズムがそう濃厚ではない分、ファースが基調だがこれもヌルい。
と、思って読んでいたら最後でドーンとオチが来ました。K子からメール、今夜は伊勢丹会館の三笠会館で、と言ってあったのだが、なんと
「三笠会館はなくなってました」
とのこと。

うーむ、手軽く西洋料理(という感じだった)が食べられる重宝な店だったんだけどなあ。確かに客数がいつも少なくて心配していたんだけど、堺屋太一を見かけたこともあるし、案外客筋もいいと思っていたんだが。

新年早々残念なニュース。仕方なく、伊勢丹の天一にしようと返答。仕事していたらK子から電話で、正月は天一は予約が出来なくて、いま空いているので席をとって待っているからすぐ来て、と言う。

あわててタクシー飛ばして新宿。天一のカウンター席、ついて見ればなんのことはないガラガラ。さっきまでは満席だったそうだ。

めごち、エビ、スミイカ、ワカサギなど。K子の簿記の野望など聞き(笑)、ビール小2杯と冷酒。帰ってさらに二人で飲み直し。ホッピーやりつつ、K子お気に入りの『丹下左膳余話・百万両の壺』を見る。

『猫三味線』の前半の主人公・高大之進の名前、これからとられていると佳声先生から聞いたが、なるほど、柳生の里からやってくる用人が確かに高大之進であった。
このDVDには、戦後にカットされて行方不明になっていた、左膳がおしゃかの文吉と立ち回りをするシーンが発見され(無声)、幻の場面としてつけ加えられている。

とはいえ、これはなくもがな、と思える。剣の達人・丹下左膳が主人公の映画で、実際に左膳がチャンバラの腕を見せるのは柳生道場での道場破りのシーンだけ、というのが、偶然にはせよ極めてシャレた演出になっているので、ここのチャンバラは不要に思えるのだ。

いろいろ話しながら、半身浴用に湯を浴槽に満たすが酒が回ってタルくなり、そのまま寝る。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa