裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

24日

火曜日

女は回教

やはり女性はアラブに限るよ。朝、8時15分起床。この期に及んでライブドアと敢て事業提携しようという夢を見る。なんかその夢の中では実はすごく裏で利益となるカラクリを自分で自分に説明していたんだが忘れた。

ノドのイガイガ、朝だけだがかなり感じ強く、咳もちょっと出る。入浴してすぐ朝食。いまだ朝は寒気凛冽。

9時朝食、ホワイトアスパラガススープとバナナ。ライブドアのニュースに“提供・探偵ファイル”と出て笑ってしまう。ついにテレビが探偵ファイルから情報貰うようになりましたか。それにしても、ライブドアの忘年会の光景はイタい。私の一番嫌いなプチカルトのノリ。山崎晃嗣の光クラブとの類似、という指摘をテレ朝でやっていた。母、それ見て曰く
「顔が違うわよ! 山崎晃嗣はほれぼれするようないい男だったもの!」
と。

自室で日記つけ、原稿。10時、TBSラジオから電話でツンデレの話。これからはツンデレでなくツンツン、というようなことを。そのすぐ後でまた携帯に電話、
「俊ちゃんかい〜?」
という陽気な声。大島のHさんだった。変わらない。

もう今から20年近く前か、まだ私がオノプロで金策に走り回っていたころ、スポンサーの一人として紹介してもらったのがHさんだった。大島に住んでいる実業家、というだけで、どういう仕事をしているのか全くわからないが広告業界に縁の深い人で、訊ねた大島の家もいかにもそういう人が好みそうなログハウスだった。伯父の名代として、早い話が資金繰りの相談に出かけたのだったが、どういうものか私を個人的に気に入ってくれたらしく、飲み明かしにつきあわされた。

「ボクの友達が今度この大島に別荘を建てるんだけど、そこの棟上げ式に、みんなをアッと言わせる御馳走を出したいんだ。何かいいアイデアない?」
と訊かれたので、北海道からタラバガニのデカいのを送らせたらどうです、と言ったらソリャいいや、と手を打ち、
「じゃ、俊ちゃん、手配お願いするよ!」
となり、札幌の母に頼んで特大タラバガニを送ってもらい、大島にはその頃宅配便がなかったのでヨイショコラショとかついで持っていったものだ。

その別荘を建てる友人というのがマガジンハウスのターザンのデスクだったかで、いかにもマガジンハウス的に、みんなで金槌持って屋根に上がって板を張り、その上で10人くらいで集合写真を撮った。「この写真、絶対10年後くらいに価値が出るよ。“若かった僕ら”とかキャプションがついてさ」と誰かが言ったのはいかにも60年代ぽい青年像のコピーで気恥ずかしかったが。その別荘の主に、私もマガジンハウス出身で、と自己紹介したら、脇で聞いていたHさんが
「なんだ、マガジンハウスで仕事してんのか! 俊ちゃん、売れっ子ライターなンだね」
と大喜びしてくれた。

もちろん、大タラバはみんなにバカウケで、Hさんは浮かれまくり
「飲んでよ、飲んでよ、嬉しいなあ、飲んでよ」
と自慢の酒を茶わんに注いでは私に勧め、私は記憶を失ってその夜、そこの現場で野天で寝て(空の星が美しかったことはいまだに覚えている)、翌朝目が覚めるとメガネのツルが片っぽちぎれてなくなっていた。どういう酔い方をしたものか。今にして思えば、私の人生の中で数少ない、いかにも青春と言った感じの体験である。これを思えばホリエモンの忘年会を青臭いとは笑えないか。

その後Hさんは大島を引き払い、家族揃ってフランスに移住してしまった(だから厳密には呼称が“大島のHさん”では不正確なのだが私の頭の中ではずっと“大島の”なのである)。数年に一度は電話があったが、
「懐かしいなあ。いま、フランスと清水を仕事で往復しているンだ。たまたまこないだテレビつけたら俊ちゃんが出ててさア……」
と。もし東京に出てきたら是非飲みましょう、と約束する。もうあの年代が気恥ずかしくもない年齢になった。

12時半、出勤。この時点では日がさして暖かく、各家々の屋根から雪解け水が音を立てて落ちていた。仕事場でオノさんと打ち合せながら弁当(ノリとスジコ)。単行本原稿書く。途中で依頼されていた『クラッシュ』の推薦文、今日までだったことに気付き三つほど文案作って送る。

5時、時間割にて編プロMさん。昔アスキーで『ガメラを創った男』を担当してくれた人。これももう10年前なんだなあ。今度の『小さき勇者たち〜GAMERA〜』公開と旧作ガメラのDVD−BOX発売に関連して、それを復刊させたいと角川が言ってきたとのこと。旧単行本のミスを訂正し、データを補充して、あと村瀬継蔵さんとの対談を入れたい、と希望を言う。表紙は開田さんにお願いしたいというので、明日会うので話してみましょう、と言っておく。

一端家に帰り、連絡事項二、三済ませてタントン。今日は柔らかく揉んでくれる先生なので途中でオチる。そう言えばポーランドのげらっちさんから、先日日暮里に行ったという日記の記述を読んで、そこの有名な整体の先生を紹介するメールを貰った。かなり深い揉み方をする先生らしく、げらっちさんはこのあいだの来日の折りにひどい風邪を引いたのをここの整体で治したそうである。ただし、揉まれたあと、酒も食事もとれないほど体がグダグダになり、20時間以上爆睡するのだそうである。帰宅時に脇にいてくれる人を確保して、そのあと二日くらいは予定を入れないでおかないと怖くていけないか。

その後、東急ハンズなどで買い物。途中でオノから電話で、講談社の週刊現代からゲラが来ているが、三ヶ所ほど校閲のチェックが入っているので至急確認してほしいとのこと。急いで帰って見てみるが、句読点を入れるか入れないか、という問題だけだったのでホッとする。マイミクさんにも校正者の人がいるが、講談社の校閲は以前『パーティ(アフタヌーン増刊)』の連載のときにほぼ毎回大げんかしていたところであり、ちょっと神経質になるのである。

帰宅して家でまだちょっと小書き物。ニュース見ながらメシ。豚バラの水炊き風。それにマイミクのすなむしさんに教わった厚揚げの塩胡椒焼き。007のビデオなど見ながら12時に寝る。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa