裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

26日

金曜日

プリクリプリクラ

 誰も撮る。朝7時半おき。卵も野菜も切れているので、ホタテ缶を開けてスパゲッティを作る。外務省の使い込みのヒトの顔写真、やっと出るようになったが、かなりの斜視である。似顔を描く人はここらへんが苦労だろう。届いた『Memo・男の部屋』の最新号に目を通す。K子のイラストの睦月さんの絵に大笑いする。

 日記をUPし、今日〆切のWeb現代の原稿(画像取り込み、ウェブ主催者への連絡などの作業があるので三週前に出さねばならない)を書く。編集部一同から、今回はエロサイトにしてほしいという要望があったため、いくつか回ってのぞいてみる。ところが、その作業の最中、一度回線を切って用を済ませ、さて、と再びつなごうとしたら(その間七〜八分くらい)、まるきりつながらなくなってしまった。搬送波が返ってきませんでした、という表示が出るのみ。コントロールパネルを開いて調べてみたが異常ナシ。と、いうことは回線がどこかで切れているんだろう、と、つなげ直してみたりしたのだが、サッパリである。あわててメーカーに電話し、問い合わせてみたが、サービス担当のものが今日から厚木へ五日間ばかり研修で出払っているという。代替機もK子の職場に持っていってしまっているし、仕事に差し支えて困るのだが、と頼み込むと、ではなんとか連絡取ってみましょう、と言う。イライラしながら待つこと一時間、やっと、厚木へ自宅から出かける途中の下北沢でつかまったとのことで、連絡がつく。

 電話口で説明したが向こうも理由がわからず、たぶんモデムのせいでしょう、別 のを持っていきますから、と、下北から会社へとってかえし、渋谷へ来てくれる。これで私の住まいが郊外の方だったらこう早い対応は無理だったろう。都心に住んでいる幸運を思うこと頻り。で、やってきてくれた係の人、とりあえず、とファイルなどを調べているうち、素ッ頓狂な声で“アレッ、電話番号が書き換えられているぞ!”と叫ぶ。見ると、ファイルの自動設定の中にある、ニフティの電話番号がダイヤルQ2のものに入れ代わっている。
「こういうの、あるんですよ。エッチサイトなどに多いんですが」
 というので、そうそう、今朝、仕事で回った、というと、多分ソレですね、とうなづいた。昔はISDNや、マックでは滅多にそういうことが出来なかったが、最近は出来るシステムが出てきたのだそうだ。急いで修正し、ガードをかける処理をしてくれる。それにしても、この人が以前もうちに来ていて、私の職業を把握してくれている人でよかった。そうでなければ、“この野郎、朝からエロサイトを覗いていやがったな”と思われるところである。作業の途中で当の仕事の依頼主のIくんからも電話がかかってきて、証明してくれた。ともかくも、冷汗をかいた。

 昼は母から送ってきてくれた鳥手羽と大根の煮物で。海拓舎とWeb現代、平行して進める。エロサイト、ユニークなところがあまりないので、アロマ企画のサイトにする。ネタもよし、しかもわが縄張りうちの内容で、書きながら自分で笑ってしまうものになる。自分で書く自分の文章が面白いというのは実にうれしいことだが、また注意も必要。“書くことが好き”なのはモノカキの最低条件であるが(実際は書くことより遊ぶことの方が好きなヤツの方が多い)、“自分の書いたものが好き”の度が過ぎると、文章がまるで上達しなくなる。自分の好きな文章が、一般読者のお歯にあわぬ場合、それを変えていくことがまるで出来なくなってしまうのだ。金を取るための文章というのは、自分の書きグセと、読者の評判をスリ合わせて、微調整を常に怠らないようにしていく必要があるのだが、時にナルシスト的なまでに自分の文体に愛着を持つヤツがいる。こういう傾向のあるライター志望者に、“こういう言葉使いは直した方がいいんじゃない?”などというと、“イエ、それはボクの個性ですから、絶対直しません!”などと怒られる。個性があるのは結構だが、それに加えてある程度使い分けが出来るフレキシブル性がないと、モノカキてのは食っていけないんだがなあ。

 そのフレキシブル性の問題で、5時、時間割で福音館書店『大きなポケット』Tくんとやりとり。子供向けの雑誌だけに、細かいところでさまざまなチェックが入る。今回は、ペットのカメに飽きた子供が、それをトイレに捨てようとする、というシーンにダメが入った。刺激が強すぎるという。ここは以前、なをきが仕事して、とにかく毎回チェックが入り、ホトホト困じ果てたというところである。唐沢兄弟の作品で毒があっていけない、というのは八百屋にダイコンを売ってはいけない、というようなものであろう。とはいえ、引き受けてしまった以上、その雑誌の方針にあわせざるを得ず。

 新宿にちょっと用足しに出る。伊勢丹で、明日の朝食用のものなどを買い込む。帰宅、また海拓舎。8時、K子と駅前の中華屋に行くが満席。広い店なのに驚いた。仕方なく、同じ駅前のうなぎ屋でうな重食って帰る。今朝の、ダイヤルQ2に何度もアクセスしてしまった件につき、ニフティから気をつけろというメールが来ていた。オレのせいじゃないってのに。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa