裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

14日

日曜日

 ドンドンファンファン、ドンファンファン

 俺の親父は色事師、お前の親父も色事師。朝8時起き。何回か目覚めてまた寝て、そのたびにつまらない夢を見て。寒気甚だし。朝食、カキフライサンド。こないだ試写会の帰りに三越地下で揚げたてを買ったのを忘れていた。ワイドショー、今週はずうっと殺人点滴事件と、成人式のクラッカーばかり。いいかげん飽きた。逮捕されたクラッカー犯人たちの“大変なことをしてしまったと今では反省している”というコメントの情けなさに失笑。こういうの、いかにも日本人的な心情とは言えないか? 考えてみれば太平洋戦争の反省だって、心底、問題の根本まで踏み込むことをしないで、“大変なことをしてしまったと今では反省している”と言ってばかり。日本人てのは、変わらないですよ。

 母から電話。看病と、薬局のこととで、だいぶ精神が参っているよう。話を聞きながら少々、オロオロする。看病というものは因果なもので、病人の脇にずっとついていたい、と思うほど病人のことを思っている人ほど、病人の脇にいて参ってしまうものなのだ。薬局へ出ていくのは母にとって逃避なのだろう。ただ、母の場合、彼女が立場的にも人間的にも強い女性であることで、自然、彼女のがんばりが、豪貴をスポイルすることになる。それは困る。豪貴は豪貴で、今後の薬局の命運を双肩にいきなり背負わされて、かなりのプレッシャーでガチガチになっているだろう。この二人をいつまでも一緒にしていてはいけない、という気がする。

 K子にひさしぶりに弁当を作る。NHKのYくんから貰った讃岐ウドン(全部食ってしまった)の具のエビ天の残ったのを、甘辛く煮る。これ、母がよく作ってくれたオカズだよなあ。自分は風呂入って日記つけ、エンターブレイン本原稿チェックして1時過ぎ、昼飯を食う。炊いたゴハンにカキフライ、時鮭の粕漬。大根とクレソンで 味噌汁を作る。

 ずっとエンターブレイン本チェック。メシを食った後は大概眠くなって困るものだが、今日は眠気もささないほど肩が凝って痛む。寒い、ということもある。仕事をしているパソコンが窓際にあるのだが、窓に接している左側の腕や肩がシンと冷えて、ズキズキ、という感じで痛む。400字詰め原稿用紙40枚分ほどチェックしたところで、限界となり、電話して、新宿でサウナに入り、マッサージしてもらう。整体師さんに、かなりひどいですねえ、と言われて、そうだろうそうだろうとうれしくなるのはどういう心理か。痛むところを診断され、大したことないですよなどと言われると、貴様なんかにオレの体がわかるか、という気になるのである。人をなぐさめるときなど、この原理を知らない者がやっても絶対うまくいかないだろうな。

 サウナの後、休息室に寝転がって三島由紀夫を読む(天人五衰)。原稿チェックの参考資料に書庫から引き出したものだが、文章の古風な美しさに感心はするものの、それほどのものとは(三島の作品全般にわたって)私にはどうしても思えず。昔から三島作品は一部のエッセイなどを除いて、小説的にはどうも性にあわなかった。

 8時、新宿伊勢丹上のレストラン街でK子と待合せ。天ぷらを食べる。今日は魚類がうまく、公魚が旬だけあって最高。メゴチ当然ながら美味、アマゴ、スミイカいずれもおいしく、野菜類は蓮にタラの芽、ナスなど。考えてみれば、最後までエビを食べなかった。天ぷら屋に入ってこれは珍しいことである。

 帰宅したら直樹から電話。母のこと。彼のもとにも電話があったそうである。善後策を二人でしばらく話し合う。夜さり、豪貴にちょっと長いメールを書く。いろいろと思うところあり、自分の人生設計というものをふりかえってみたところもあり。あと、談生のHPにも書き込む。先日の私の日記を、談生と論議している書き込み者氏が読んで、態度を硬化させているらしい。このままHPでこの騒ぎが大きくなると、談生の芸人生命自体、危なくなりかねない。志加吾も高座で言っていたが、ネットというものの恐ろしさを、談生も少し理解した方がいい。オヤカシといて水をかけるようだが、先日の“業”の問題とは別に、芸人として高座に上がり続ける責任も、彼にはあるはず、なのだ。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa