裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

19日

木曜日

早川ポカミス

あ、誤植発見!

※書き下ろし原稿 アスペクト用コラム 『ギララの逆襲』試写 新橋落語会

『HEROES』みたいな、超能力者グループが
主人公の映画を試写会で見る夢。
ところが、主人公は最後、エネルギーを使い果たし、
全ての能力を失い、発狂して死んで終り。
「こんなアンハッピーエンドの映画はいかん!」
と映画評を書き、それを開田さんに
「大変わかりやすい文章だった」
と褒められる。

朝8時15分起床。
忙しいというかあわただしい一日になりそう。
気圧は乱れ気味。

9時朝食、ヨーグルト、スイカ二切れ。
カブのスープ。
母に村岡花子の本(孫娘の書いたもの)を見せる。

入浴して、日記つけ、今日の予定をオノとメールでやりとり。
今日も原稿二本、試写会、落語会出演と忙しいが、
来週の予定を聞いてかなりブルーになる。
日曜の名古屋落語会出演を皮切りに、テレビ関係の打合せが2本
(どちらも火曜)、イベント出演が1本(これも火曜)、
原稿用の試写会が1本、テレ朝特番の収録が1本。
とはいえデート予定も1本入っているので、それをエネルギーに。

書き下ろし小説原稿一章分、なんとか今日のノルマを達成さすべく
ちゃきちゃきと。昼の弁当(カキ佃煮飯)はさんで、2時間際に
完成、メール。ギララの試写に行かねばならないのだが、
招待状がどこへ行ったかわからない。まあ、河崎組だから顔パスで通れるとは
思うが、場所と時間がわからない。

半ば諦めて、アスペクト広告誌用コラムの方にかかる。
その最中にオノから試写会場の報せが入る(何故か間違って招待状
をオノが持っていた)。今から行けば間に合わないでもない
時間ギリギリ。コラム、何とか仕上げ、大至急メールしてから
家を飛び出し、タクシー使って東新宿、松竹試写室。
車内で阿佐ケ谷ロフトAの児玉さんにメール、オタアミの
出版用イベントの日時を押さえてくれるよう依頼。
即、OKの心強い返事。まあ、9月であるが。

タクシー、ベテランらしい運転手さんで途中まではスイスイ
すすんだが、最後の最後で松竹本社と新橋演舞場を間違えるという
大チョンボを犯す。途中で止めさせて走るが、今度は私が、
試写室のある3階と、松竹映画本社のある9階を間違えるという
チョンボ。試写室に飛び込んだのは、もうフィルムが回り初めて
いる、というギリギリもいいところの間際であった。
破裏拳竜さんが私を見つけて、急いで! と中に入れてくれた。
2秒遅れたらもう、NGのところだった。いや、スリリング。

試写室満席、脇のところのパイプ椅子に座って観る。
冒頭からカメラアングル、主人公紹介、話の導入部のパターンなど、
“イマ風”の、要するに平成怪獣映画のダメパターンを全部なぞっていて
「おやおや、河崎実も、まっとうな特撮映画を撮って評価されたいと
いう欲が出てきちゃったか?」
と心配になったが、それは前フリ。札幌の町にギララが出現し、
なぜかギララなのに伊福部マーチを露骨になぞったテーマ曲が
流れてからは、一気に映像は昭和怪獣モノへとタイムスリップして、
いつものバカ映画の巨匠の面目躍如となる。

ギララ命名のところのアレとか、落とし穴のアレとか、
そのアレをアレするパワーショベルのアップとか、英国首相の
アレなセリフとか、地球防衛軍のキャストのアレとか、
カメオで監督が特出するアレのシーンはやはり小松左京か、とか、
たぶん、ほぼ全てのシーンの演出指示が、
「ここは○○(過去の怪獣映画)の△△のシーンでやって」
でなされたのではないか、と思えるほどの過剰なオマージュが
昭和特撮オタクには心地よく、ザ・ニュースペーパーによる
アレな人物のセリフも、薄っぺらい政治風刺か、と思わせておいて
実はアッと驚くどんでん返しにつながる(ジーコ内山はこれが
持ち役になるか?)。

まあ、洞爺湖サミットにぶつけて作ったキワものバカ映画と
いう評価に何ら間違いはないのだが、それがなぜ、こんなに肩の凝りが
ほぐれる心地よさがあるのかと言えば、
「これが流行りだから、急いで撮っちゃえ!」
という、映画、いや、娯楽興業というもの全ての原点のパワーが
つまっているということ(『ゴジラ』だって、第五福竜丸事件の
わずか半年後に公開された大いなるキワモノ映画なのだ)、
そして、客を引っ張り回してラストまでつきあわさせればそれで十分、
よけいなテーマなどいらんわ、という潔さだろう。
ああ、そう言えば“エコ”ってテーマが入っていない和製怪獣映画を
ひさしぶりに観た!

まあ、欲を言えば“カナダは何のためにいるのか”、そこらも
ギャグにしてしまえばよかったと思うし、昭和怪獣もののいくつかの
作品の欠点である、主人公と怪獣がからまない、という
ストーリィの構造的欠陥が露呈したりもしているのだが、
そこまで望むのも何か野暮、という気がすごくする。
終わったあと、河崎監督が近寄ってきて、
「この映画が当たんなかったら終りだよ!」
と言った。へえ、それくらいこの作品に自分を賭けているのか、
と驚いたら、
「これが当たらないと日本は終わっちゃうよ!」
というので吹き出す。この大いなる自信こそザッツ・河崎実。
奇しくもこの作品、水野晴郎の遺作となったが、彼の後を継げるのは
河崎実しかおるまい。

なをき夫婦も来ていたが、人ごみの中で破裏拳さんなどに
挨拶していたら見失ってしまった。
外は雨がぽつぽつ、ちょうど時間的にはこれから新橋に向かえば
ちと早めに入りが出来て、食事もとれる。
日比谷線で銀座、銀座線に乗り換えて新橋。
今日の談之助さんの落語会の場所である新橋ZZの場所がいまいち
認識出来ていなかったので、携帯で住所を検索、構内の周辺地図で
確認して迷わずたどりつく。便利な時代になったもんだ、などと
書くと笑われるだろうが、先天性方向音痴な人間には、一回も
迷わず目的地にたどりつけるというのは凄いことなのだ。

店に入ったら一番のりだった(時間配分に無意識に迷う時間を
加えてしまっている)ので、談之助さん来るのだけ待って、
近くのラーメン屋でつけ麺。なんか有名な人がプロデュースする
店ということだったが、モヤシが甘くてうまかった以外大した
ことなし。

店に帰って、ネタを再確認。
客入り、せまい店内に25人ほど。
jyamaさん、しら〜さん、IPPANさん、藤倉さんなども
来てくれていた。それと、坂本頼光さんもわざわざ。
『雑学落語対決』ということで、私のネタは某番組の裏側。
とても言えない内容ばかり。

談之助は『お血脈』前半。
つまりお血脈の本題の五右衛門のところ入る前までで、
あまりに宗教系ネタの雑学が入りすぎて、
マクラだけで1時間以上いってしまった。
落語界随一の知識人の面目躍如。

その後、対談『あの落語ブームは何だったのか』。
夏コミの同人誌『本家立川流』用の対談だったが、これが案外
深いところまで落語の本質を語った内容になった(と、自分では
思う)。店のスタッフが終わったあと
「盛り上がるもんですねえ、ああいう話!」
と言っていた。

アスペクトK田さん来ていて(原稿上げてきてよかった!)、
大銀座祭で販売する談笑の本にサイン、10冊ほど入れる。
終わって、頼光くん、しら〜さん、jyamaさん、K田さん、
QPさんなどとそこらの店で打ち上げ、と思ったが、
新橋というのはビジネス街で、店のカンバンが早い々々。
やる気茶屋が11時閉店、日曜休業で、みんな
「やる気ない茶屋じゃん!」
と。

なんとか新橋駅の方まで歩いて、『千年の宴』を見つける。
ここは朝3時までやっている。
話は自然、こないだのトンデモ本大賞の頼光さんのバカウケに
行き、しかしあまりああいうマニアックなウケに感動しすぎると、
営業用のウスいネタが作れなくなる、という頼光さんの悩みに
いろいろと知っている限りのことを。

大賞の打ち合わせ会で私が頼光さんに与えたアドバイスが
大変に参考になり、目からウロコでした、とお礼を言われ、
こっちがほとんど記憶していなかったので恐縮する。
ただ、偶然だが同じようなことを今日の対談でも私は口にしていた。
要は理論武装の必要性。そして、対外のための理論に自分が
酔わないことの必要性。マスコミ等に注目されるための戦略として
理論武装は絶対必要だが、自分がその理論に振り回されては
絶対いけない。前半をわかっている人は多いが、後半をわかっている
人間が少なく、たいていが自分の立てた理論に自分で囲い込まれて
現実に対処できず、ダメになっていく。

どの分野でも成功者の大半を見てみると、
「言ってることとやってることが全く違うじゃないか」
と言われるヤツであることは、これが理由である。
顕著な例に立川談志がいるが。

一番笑った話は、ロリの談之助が“女の子を女の子を”と
願っていた妊娠中に、トンデモ本大賞の打ち上げ(一昨年の)で
さいばらりえこが奥さんのお腹をさすりながら唱えた呪文。
「五人〜続けて〜男の子〜」

12時45分、お開き。
頼光くんは若いだけあって、これから歩いて帰るという。
「1時間半くらい歩けば帰れますから」
というのは凄い。私は談之助、しら〜さんとタクシー相乗り。
芸人モードなので代金はしら〜さん持ち。
ありがたやありがたや。
メール等に返事を出し、就寝3時近くになってしまった。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa