裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

4日

木曜日

暑くてどうも、の記

 朝6時半起床、寝床で山下主一郎『イメージ連想の文化史』(新曜社)読む。どくろの海賊旗の起源やその愛称“ジョリ−・ロジャー”の意味など、自分がそれに興味を持って、いろいろ調べて“これなのではないか”という結論にたどりつく、その過程が面白い。
トリビアにすれば数行のものだが、それを仕入れる苦労の過程をきちんと書いた本はなかなか珍しい。
専門家もわれわれ素人もやっていることは同じなのだな、ということがわかるのも嬉しい。
とはいえ、やはり退職したおじいさん(中央大学名誉教授)の暇つぶし、という感じがする本ではあるが。
ただの物知り、ただの雑学家はゴマンといる。そこに“なぜ物は知らないといけないのか”“どうして雑学が面白いのか”という、いわゆる存在意義認識があってはじめて、それが“文化”として世間に認識されるし、それを語った人間がその分野でのリードをとれる。
7時半入浴、ミクシィ。
9時朝食、キヌカツギと桃。
昨日のオタアミ見た人からの感想メールなどたくさん。昔仕事した編集の人などがだいぶ来ていた。
竹書房のSくんからはマイミク申請が来た。
『世界一〜』から電話。まだ収録日程最終決定にいたらず。最終決定いたらずと云えば某イベント企画も、今月末ではありながらまだ日程もフラついている。六花マネもややジレ気味である。
なんだかんだで時間過ぎ、出るのが12時を超してしまう。
管理人さんが私に
「センセイ、このごろテレビしょっちゅう出てるね!
見てるよ!」
と近しげに話しかけてくる。こういう馴れ馴れしさは微笑ましい。人に顔知ってもらってナンボの商売で、しかも売れはじめでファンと距離を置こうなどとするやつの気がしれない。
仕事場でシャケで茶漬け。
仕事場のパソコンのマウスをスクロールホイールつきのものに変えたので快適。
そのかわり、自宅のはマックOSをバージョンアップしたらスクロールホイールが使えなくなってしまった。
2時、三才ブックスT氏来。
新連載用の写真撮影。
空調は入れてあるのだが、T氏額にも腕にも汗びっしょりで気の毒なようである。
撮影は三十分ほどですむ。とにかくうだるような暑さと湿気。体力消耗、精神的ストレスで肩も張る。早めに、と思い3時、タントン。
財布はもどったがカードは用心のためすぐ会社に電話して切ってもらったので、新しいのが届くまで使えない。ガスエポックから催促電話。
文化放送から収録日メール。
『猫三味線』台本、なかなか進めない。9時過ぎまでカリカリやってやっと完成。送ろうと思ったらイマジカSくんから
「まだでしょうか」
のメール。すぐ送る。
こういうときはザマアミヤガレ的気分。長野のヒコク氏からもらった桃をかついで、タクシーで中野へ。
運転手さん
「受かりましたよ!」
と報告。
何のことかと思ったがすぐ思い出した、以前同じタクシーに乗って雑談したとき、
「いま、息子が就職試験中で……」
という話を聞いた運転手さんだった。
息子さんは一橋大だが在学中就職活動をほとんどせず、そのため今になって苦労しているという話で、いくつか、受けるつもりの企業名がそのときあがり、ANA、みずほ銀行、博報堂、そしてNHKがあがった。脈絡のない選び方だな、と思いつつ、私はそのとき息子さんの趣味傾向を聞いて、それならNHKが一番向いているんじゃないか、今の時期入社するという人を向こうも決して粗略にはしないだろうし、と推薦(?)したんであった。それで、上記の各社からはいずれも内定があったが、結局NHKを選んだんですよ、と運転手さん、嬉しそうに言う。
「お客さんにはお礼言っておこうと思ってね」
とのこと。
「そりゃよかった。数年はまず地方局に行かされるだろうけど」
と。いろいろ雑談。
今度はいろいろネガティブな情報も聞かせて、心配もさせておく。
新中野、母に桃をあずけ、ひさしぶりに家でメシ。小鍋のすき焼きに冷や奴、キヌカツギ。ナス漬け物で御飯小茶わん2/3。
自室でDVD『ザ・ベスト・オブ・マルクス・ブラザ−ス』見る。初期作品のマルクス兄弟映画の、映画としての乱調ぶりの凄さはちょっとない。
藤本和也さんから二見『雑学授業』のイラストが全部あがったという報告とお礼メール。
オチつきのイラストを40本以上描いた反動で、コミケの同人誌(友人のものに寄稿)には凄まじく暗いものを描いてしまったそうだ。
売れるために商売用のものを書き、自分の本質的なものは同人誌に描く。
基本中の基本みたいなことだが、最近それが使い分けられない人が多いのだねえ。藤本さんはプロ、である。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa