裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

15日

金曜日

森と小泉に囲まれて

 うるさく郵政民営化を急かされるブルー・ブルー・ブルー平蔵。朝3時ころまた目が覚める。再度寝て起きると寝汗ぐっしょり。極端な体力の低下を感じる。ノドのゴ ロゴロが気に障る。朝食食べてまたすぐ横に。

 中国の反日デモをマスコミがやたら大問題のように扱っているが、日本としては、在中国の日本人の安全さえ確保できるよう注意すれば、そう大した問題にはならないと私は思っている。あんなもの、報道されればされるほど中国政府の国際的信用が落ちるわけだし、どうみたってバブルで足元のあやうい今の中国ビジネスなんかからはさっさと手を引いた方が日本企業のためでもある。食玩などはもうかなり前から、中国は作業員の手間賃が上がりすぎて使えないと、次の持っていき先を探していたので はなかったか。

 母が高円寺のクイーンズ・シェフから買ってきてくれた黒豆納豆を持って仕事場に出勤。『創』原稿を書き出すが進まず。気力が充実しない。1時、『ごきげんよう』私出演の最終回。最後の告知は日時にアナウンスがかぶさりもせずパーフェクト。ただ、パネルにスタジオのライトがあたりすぎて白くヌケてしまった。下手にパネルに せず、ポスターをひろげて手に持っただけの方がよかったかも。

 体がぐったりしているので、ちょっと横になる。寝るというでなくうつらうつらしていたつもりだが、気がついたら寝ていたのだろう、ふと時計を見ると5時である。原稿は今日はあきらめ家を出て、東大島へ。駅から10分ほど、いかにも郊外のベッドタウンという雰囲気のところを歩いてうわの空の稽古場になっている小松川さくらホールなるところへ。まだ私の役は出来ていないのだが、雰囲気だけでもつかんでお かないといけないと思って。……というよりはやはり逃避だと苦笑。

 小松川と聞くと私のような人間はどうしても小松川女子高生殺人事件と、それをモデルにした大島渚の『絞死刑』を思い出すところだが、現在の小松川は再開発で、かつての貧民街の面影はまったくない。ちなみにコマツナというのは昔、この近辺で栽 培されたところからそう呼ばれた。へぇ。 ホールもいかにもこういう街の文化ホール的な、新しくて立派なところ。要するに作ったはいいがあまり利用し手のないという。エレベーターを待っていたら、扉が開いて中からおぐりゆかが出てきた。ノーメイクの普段着で、なんだか、古い倉庫から埃っぽい子猫が飛び出してきたみたい。これはこれで可愛かったりするが、これから この子を売り出そうとしている者としては
「なんだそりゃあ」
 である。いや、まだそんな外の目を気にする必要はないといえ。

 橋沢さんとこないだの飲みの挨拶、こないだから参加のWAHAHA本舗の清水さんとは初対面の挨拶。本格的な稽古の前に、どうしても芝居の中にスムーズに入って来られない金沢柱くんに、いろんな即興エチュードをやらせて慣れさせている。焼肉 屋に久しぶりに行った家族、という設定で、おぐりが
「上ロース頼もうよ、上ロース」
 とはしゃいで言うと橋沢さんのお父さんが
「バカ、うちは貧乏なんだ、そんな贅沢が出来るか」
「えーっ。じゃあ下でいいよ。ゲロース、ゲロース!」
 とやって、観ていたみずしなさんと私、二人で爆笑。上ロースの反対語で下ロースという発想がそもそも、簡単なようでいてなかなかひょいと出てくるものでなし。改めて凄い子だなあと感服し、このノリの中に入り込めと言うのも金沢くんに酷なよ うな気がしてきた。これは大部分、天性のものもある。

 そこらへんから本格的な稽古、こないだ島さんがやった役を正式キャストの清水さんがやって、合わせていく。まだ役が私同様固まってないみずしなさん、三橋さんはただ観ているだけ。ここらあたりのスリリングさもうわの空一座の醍醐味(?)。そ れでも私の役の衣装などについて、ざっと打ち合わせが出来た。

 稽古後、秋葉原に移動。毎週金曜のうわの空のネットテレビ放送『ふらない・うわの空』。今日は座長が所用で来られないので、急遽私が代役で出演ということに。それを思うと、来てよかったという気が。近くの喫茶店で打ち合わせのあと、スタジオ入り。みずしなさんが画用紙に座長の似顔を描き、器用にお面をつくって金沢くんに かぶらせる。ここらへんの器用さにも感服。

 全員、かなりの緊張の中、放送開始。土田さんのキャラにまた感服。みずしなさんがリードし、島さん奈緒美さんもかなり頑張っていた。私はあまり役に立たなかったな。まあ、そこにいるというだけで。劇団の人たちというのは、セリフがかぶらないとか、ダンドリがきちんきちんと進むということを重視するが、私はトークライブ畑なので、セリフのかぶりはトークの出演者の熱さの証拠、ダンドリの乱れはアドリブ が活発だった結果と、それほど気にしない方なのだ。

 終わって12時、総武線でおぐりや島さんとは反対方向に別れ、金沢くんと一緒になる。メシを食い損ねていたので彼を誘って中野のとらじ。下ロースとはさすがにいかず上ロースだったが、なんだかんだくっちゃべりつつ、私一人で真露飲んでごきげん。2時半、タクシー相乗りで帰宅。風邪はテンション上げたせいか、かなり軽減。うわの空は風邪薬になる?

Copyright 2006 Shunichi Karasawa