裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

6日

水曜日

レスリー・チャン大ショック

 彼がボクをふるなんて!(自殺の真相)。朝8時まで寝こけ。食事のベルで目を覚ます。これは寝坊というより単に昨日の夜更かしのため。おまけに当然二日酔い。目も顔 も腫れぼったい。収録が夕方からでよかった。

 朝食、風呂。出て体重測るが、昨日の暴飲にもかかわらず増えてはいず、ホッと。太ると頬が垂れてきて悪相になる。ミクシィ日記書くが、途中で全部消えてしまい、しばらく何もする気がなくなる。気を取り直してもう一度書き上げ、それで時間がなくなり急いで家を出て、代官山エド・エド。菅原先生に髪をセットしてもらう。

 ここの店のマスコットの犬、ときどき休暇をとって家で寝ているそうである。ロクに休みがとれない私など、犬にも劣る。渋谷に戻り、雑用いくつか片付け。3時ジャストに本日マネージャー兼付き人をお願いしているツチダマさん来て、彼女にサイフその他預け、サムラートで腹ごしらえして、タクシーで有明スタジオ。

 フジテレビにはしょっちゅう行っているがこのスタジオは初めてで、ちょっとどこから入ればいいのか迷う。入り時間より30分以上早めについてしまった(高速が空いていた)こともあり、迎えも出ていない。入ったら“唐沢俊一さま”という張り紙があったのでとりあえずそこの楽屋に入って待つうち、いるのを見つけた制作プロの女性があわてて挨拶に来た。

 やがてディレクターと放送作家氏も来てざっとうちあわせ、どんなことを話すかを決める。モニターで前の回の収録を見ると、小堺一機が収録終わったあと、お客相手にしばらくしゃべっている。これがモロに小堺一機ワンマンショーみたいで、実に面白い。サービスでやっているのか、客を休息時間中に冷やさないためにやっているのか、この気遣い、気配りの苦労たるや大変なものだろう。これじゃ病気にもなる。

 5〜6分しゃべったその後でやっと、盛り上げ要員のマエセツの若手漫才と交替したが、当然のことながらさっきまでの小堺のトークの方が格段に面白いわけで、なんか逆に客席が静かになってしまった。やりにくいだろうな。 マエセツは二組いて、もう一組の“アンバランス”をツチダマさんが
「オンエアバトルで見たことある」
 と言っていた。コンビ歴13年と言っていたが、なるほど達者。それでもマエセツであり、私や中村玉緒みたいに業種の異なるゲストのときはともかく、森三中なんかのときは、プロダクションの力の差もあるとはいえ、心中ツラいものがあるんじゃないか。別の方のコンビは“年収12万円”とか言っていたし。このマエセツ漫才師を主役にペーソスものの芝居が一本書けるね、などと雑談。

 やがて時間、一本目。川野太郎、中村玉緒。出を待つ廊下で挨拶、雑談。シロウトは私だけだが、『トリビアの泉』の御利益はやはり大したもので、川野さん宅でも子供たちが熱中して見ているというし、玉緒さんなどは
「今週はやってはりませんでしたな。お休みですか」
 などと、詳しい々々。

 本番では打ち合わせと全く違う展開になったが、もう私もバラエティずれはしている人間で、今更何をふられようと驚くこっちゃない。と、いうかこの番組、いかに入念に打ち合わせしようとネタを決めるのはサイコロ、そのネタからどっちへ行くかの方向性は小堺の思惑ひとつ、準備などいくらしたって無駄。いきなり日本の最新技術に関するトリビアを言え、とフラれたが、なんとかクリア。

 三十分、しゃべくって収録終わり。この番組は“生放送風”番組なので、あまりつまむことをせず、30分番組の収録は基本的に35分から40分。しかし、中にはそういうトークが苦手なゲストもいるだろうし話があっちゃこっちゃに飛んだり、さっぱり面白くならないゲストもいるだろう。そういうさまざまな人たちから話を引き出し、方向性を整えていく小堺一機の神経に感心。関西芸人の場合、さんまにしろ松本にしろ、自分が前に出て仕切ることで番組を統括するのだが、小堺は萩本欽一ジコミで、あくまでホストとしての自分の位置をキープして、ゲストから話を引き出すことで番組を進行させていく。
「こういう人におぐりゆかカマせたら、いい番組が出来るだろうなあ」
 と楽屋で話すが、しかし考えてみればこの番組に出るにはまず、別のところで名前を売らなきゃならない。

 二回目収録、川野太郎が抜けて、森三中が入る。森三中の大島は前から思っていたが、大恐慌劇団の正狩炎に似ている。顔がパンパンに張っているところや、ホクロの位置までそっくり。妹か、と思うところだ。コントが放送向けでないところまでそっくり。しかしフリートークはいまいち苦手らしく、ギャグのいくつかは仕込んでいたぽい。

 中村玉緒さんの方がそこらは達者。ホテルでの失敗談で沸かせたあと、私の隣の席に戻って、耳打ちするように
「……あのなセンセ、今のよりもっとおもろい話がありまんのや。それ、この次に話しまっさかいな」
 私に耳打ちしたって仕方なかろうに。ああ、この人ってホントに、テレビでのキャラそのままの人なんだな、と感心した。

 今回サイコロは“ああ、やっちゃった”の目。本の棚買いの話を。で、休息またはさみ、玉緒さん抜けて三回目。今度のゲストはパンチェッタ・ジローラモさん。以前『世界一受けたい授業』で一回ご一緒したが、ちゃんと覚えていて
「センセイ、今日ハしっくナ服ダネ!」
 などとお世辞を言う。いい人だな、とは思うが、さて、この人の正体って何か?

 三回目になると大分様子も飲み込めて、脇の席からもどんどん口を出し、“へぇ”を小堺さんから引き出す。……しかし我ながらよくしゃべるモノカキである。森三中よりアドリブが利くというのは果たして褒められたことか? 単に威厳がないおしゃべりということではないか? まあ、その通りだろうが。ただ、ディレクターや制作プロダクションには喜ばれる人材であろう。

 いよいよ最後の告知コーナー。開田さんの描く『ただいま!』ポスターが、パネルになって用意されている。前二回、川野さんと玉緒さんの告知の様子を見ていたが、最後のコーナーでしゃべりすぎると告知の時間が短くなってしまい、50秒とかしか与えられない。そこで、最後のコーナーでの私のしゃべりは、インパクトある話題をふってまず笑いをとり、短くまとめるようにした。この作戦が効を奏し、告知時間が1分50秒という長さで与えられた。こっちが基本的なことを告知し終わってもまだ時間があったらしく、小堺さんが
「千葉が4月の22、23で、5月の3日から5日が紀伊國屋ですね!」
 とダメ押しの告知までしてくれる。秘かにココロの中でVサイン。これでこの番組に出演した目的は達した。残念なのは唯一、『今週のあたり目』を出せなかったことか。玉緒さんも
「“あたり目”、出まへんなあ」
 と何度も言っていた。出したくなるモノ、であるらしい。

 そう言えば玉緒さんも登場する『星を食った男』を差し上げたいと思っていて、忘れてきてしまったのも後悔。……やはり緊張していたのか、まだ一、二時間くらいしか経っていないような感じだったのが、もう8時半。驚く。そして、さすがに全身に疲労感。つくづく小堺一機、凄い。

 タクシー呼んでもらい、渋谷まで。収録終わったとたん、各編集部から携帯に連絡入り、原稿の催促やらゲラチェックしてくれとの依頼やら。ゲラチェック確認のみ仕事場でしたあと、ツチダマさんと食事でも(アサ芸のお礼とお祝いも兼ねて)と思っていたのだが、タクシー車中で村木座長から電話、可哀想に、彼女はそのまま千葉へ直行となった。美女との会食を一回フイにさせて、村木藤志郎、うらむぞ。

 仕方ないので仕事場でゲラ直ししたあと、家に帰って食事。ちょうどパイデザ夫妻が母のパソコンのケアに来ていたところ。すき焼きの残りとキンピラゴボウで酒。ご飯はパス。トークの後もそうだが、テンション上がっているときは腹をあまりふくらしたくなくなる。自室に戻り、テンション下げのために水割り缶もう一本飲んで11時過ぎ、ベッドに。やれくたびれた。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa