裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

11日

日曜日

エビチリ自殺

 口の中いっぱいにエビチリをほおばってねえ……。朝7時半起き。台所で朝飯を作りながら、仮面ライダー少しだけ。ソバ粉焼き、フジリンゴで朝食。ネット、と学会でMLで昨日のアタックNO.1の件のレスを見る。そこから派生して放送禁止用語の話になり、鉄腕アトムの四足教授のことになり、ポルノでも四つん這いがダメで、“ワンワンスタイル”と言い換えるという話になり、じゃあ源義経の鵯越での台詞は“鹿もワンワンスタイル、馬もワンワンスタイル”か、という書き込みに笑う。

 扶桑社『オタク大賞』原稿をチェック。座談会形式原稿とはいえ、まるまる一冊ぶんの赤入れはかなりの量。昼はラム肉炒めの卵かけ飯。と学会本で批評するはずの本が見当たらなくなり、仕事場の本の山を探し回る。これが精神的あせりもあって、一 番くたびれる作業である。

 1時半、なんとか一区切りつけ、タクシー飛び乗ってお台場ビッグサイトに。骨董ジャンボリーである。東館の片側のみの使用だが、どのブースもだいたい同じ感じの外観であるコミケと違い、店舗々々で全然イメージが違う骨董店がズラリと並ぶ様相はやはり壮観。あまり金を使わないつもりでいたが、会場を歩くうちに古いモノ好きの血が燃える。仕事に使うもの限定、というシバリを自分に課して回ったが、古雑誌やヘンテコな塗り絵類、何に使ったものかわからぬ少女の画像数枚組など、あれこれと買いまくる。チャーリー・マッカーシー人形(腹話術人形)の、大きくていいのがあったが、これは悩んだ末に買わず。帰り間際に、掛け軸を商っている店のところをちょいとのぞく。掛け軸なんぞはまったく私の興味の範疇外なので、見てるだけ〜という感じであったが、そこに大正時代の(ものだ、と店主が言っていた)男女修身之図の掛け物があり、これが今の眼で見るとナンセンスで大変いい味。お値段もウン万で、まあ他の商品に比べると(買い手がないのだろうが)お得。すぐ購入。やはり、 かなりの金額を使ってしまった。

 規模はコミケに比べると数分の一だが、あたりを覆う空気の濃度、粘度は数倍はするといった感じである。並べてあるものの醸し出すムードにもよるし、骨董にノメりこんだ人間のオーラというのは、これは古書とも違う、何か独特なものがある。和服姿の若い女性がかなりの数いたが、これは古着物マニアたちであった。古着、古着物がさらに発展した古裂(こぎれ)マニアというジャンルがまた、非常に特殊で濃い世界を形作っている。辻村ジュサブローのあの世界にひたっている人々である。

 りんかい線使い、帰宅。家に戻ったのが4時半過ぎ。深い満足感と、歩き回った疲労感に陥る。戦利品を眺めていたら、ピンポンとチャイムが鳴り、出ると青い顔をしたミリオンNくんが立っていた。私の顔を見て、“ア、よかった〜”と言う。電話が全く通じなくて、死んだのではないかと思って、他の編集者にも言われ、確かめに来たとか。電話に出ないと言ったって、午前中とかは確実にいるわけだし、と言うと、イヤ、いつかけても、呼び出し音が鳴るだけで全然出ない、という。それはおかしいと、その場で携帯からかけてもらって確認してみると、確かにベルがチリンとも鳴らない。モデムが接続不良になっていたらしい。つなぎなおしたら即、扶桑社Yさんから電話。そうか、正月あけからこっち、妙に電話が少ないと思っていたのはこれか、 と呆れる。

 扶桑社Yさん、日曜で社のバイク便が使えないということで自ら取りに来る。渡したあとで、一部分が最初から(?)すっかり抜けていたことに気がつく。ファックスしてもらい、それに手を入れて返送。その間、と学会本原稿書き。私の本来のなわばりうちの書籍ではあるのだが、いざ、本格的にある程度の枚数で批評するとなると、実に神経を使う。いつも言っている内容は基本として押さえねばならず、かつ、新た に原稿を起こすのだから、新たな視点も加えねばならず。

 9時、中断して下北沢虎の子。女の子たち四人のグループと同席。話を聞いているようなそぶりは失礼だと思うし、かといってまるで知らんぷりもわざとくさく、しばらく落ち着かず。やがてK子が、I矢くんを連れて来る。彼にホームページのメンテをしてもらおうとしたのだが、結局一日かかってまったく出来なかったそうで、I矢くんは大恐縮、K子は何かと突っつく。詳しい事情はK子日記で。東京大会用MLの立ち上げのことなどをI矢くんに相談。虎の子のキミさんに、札幌の空港で買った手 まり筋子をおみやげに。酒は黒龍。

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