裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

9日

金曜日

イイダコのお嬢さん

 われわれミズダコとは家の格が違いますからねえ、あそこは。朝7時20分起床。ソバ粉焼きで朝食。新聞に自衛隊派遣決定のニュース。民主党などの反対論大ブチアゲにも関わらず、国民にほとんど騒ぐ様子が見られないのは、本音では誰も、これが国際社会のしがらみの中で仕方ないこと、と思っているからだろう。菅直人氏は“小泉首相は国民への説明責任を果たしていない”と言うが、菅氏は、もし自衛隊派遣をせず、米英から日本の責任放棄について抗議が来たときにどう対処すればよいか、そ の点についてちゃんと説明責任を果たしていると言えるのか。

 午前中かかって原稿書き上げてメール。17枚半を二日で書いた勘定。もう少し、ペースを上げないとな。昼はサムラートのチキンバターカレー。東急ハンズ行き、今日のロフトで使用するものなど買う。それからずっと、ネタのコピーなどに費やす。『さぶ』誌の『月光仮面劇場』を紙芝居風に読ませるアイデアがあるので、その選定をする。いろいろとアイデアが湧くのがいつでも間際、というのが困ったものだが。

 5時半、家を出て新宿ロフトプラスワン。ベギラマがすでに来ていた。まだお腹は目立たないが、やはり争われず、ちょっと顔のあたりがふっくらしていた。とにかく腹が空くらしい。虫養いにマクドナルドのリブバーガーを買って持ってきたのだが、“半分食べる?”と訊いたら、“あ、いいんですか”と、半カケをうれしそうに受け取ってムシャムシャやっていた。家族の話を聞くが、これが抱腹絶倒。この娘にしてこの母ありというか。斉藤さんと年始の挨拶、拍子木を手に入れてきてくれる。紙芝居はやはり拍子木がなくちゃダメ。カチカチと鳴らす訓練。児玉さん、初見での朗読となって気の毒だったが、ボーイズラブ大好きの人で、林月光の絵を喜んでいた。

 開田あや、談之助両人は同人誌販売。他に知り合いの顔、多々。福原くん、QPさん、笹公人さん、近藤ゆたか夫婦。モノマガSくん、プリン持ってきた。例の連載のどたばたへのお詫びらしい。プリンで詫びられてもなあ、と思ったが、おいしいプリンだったらしく、楽屋でベギラマと児玉さん、大喜び。あと、催促兼様子見のワニマガジンKさん。それから、梅田佳声先生が息子さんと来場。後半での飛び入りをお願 いする。

 7時半、開始。今日のネタ、まず『人造人間キカイダー』の紙芝居(こないだ古本市で買ったもの)。絵がとにかくいいかげんなのが笑える。続いてこれも伊勢丹古書市で150円で手に入れた、中国の連環画『紅燈記』。大戦中、地下抗日運動をしている共産党員の主人公が、ほっぺたがふくれた顔といい、太いまなじりといい、市川右太衛門そっくりという顔(実際のオペラ歌手の似顔らしい)。もちろん説明は全て中国語なので読めないが、たぶんこんな話だろう、と、アドリブで数ページ紹介していたら、案外すらすらと口をついて台詞が出てきて、しかもいいかげんに思いつきでしゃべっても、だいたい話がつながってしまう。これには自分ながら驚き、ちょいと の紹介のつもりが話の半分近くまで演じてしまった。

 それから、ベギちゃんの朗読による、『大空ヒカル』。休息はさんで、梅田先生が発掘した毒婦もの紙芝居『毒婦お蓮』を写真で紹介。ごく一部ではあるが、インパクト十二分。大ウケ。それから『さぶ』の紹介に行き、最後は児玉さんのホモ小説『仙人草』の朗読。さすがプロの声優がホモシーンを役になりきって演ずると非常にムードが出る。これ、聞いていながら、どこかでこの話、読んだゾ、と思っていたが、お客さんから指摘を受けた。水木しげるのマンガである。マンガのシチュエーションをそっくりそのままいただいて、ホモ小説にしてしまったのだ。パクリはだいたい、パクる方のジャンルが振興でバイタリティあるジャンルであることが多いのだが、70 年代にすでに、マンガからパクっていた小説ジャンルがあったとは。

 11時ちょい前に終わる。客の入りは思ったほどなかったが、内容的には非常に充実した、やって楽しい会であった。十人ほどの人数で青葉で打ち上げ。アヒル、ピータン、青菜炒めなどなど。やはりベギラマが旺盛なる食欲を示す。児玉さんに料理を とりわけなどしてあげているので、
「キミ、妊娠してからいいヤツになったんじゃないの?」
 と言うと、
「あ、なんか周りみんなからそう言われんですよー」
 とのこと。いや、以前もいい子ではあったが、とりわけ気がきくタイプとは言えな かったように思ったもので。

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