裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

28日

土曜日

飲む打つ買うするポストモダン

 現代思想家には道楽者が多くていけません。朝、手のひらに豆が出来てそれをつぶしたら透明な液体がハンカチをぐしょぐしょにするほど出てくるという嫌な夢。起床7時半。朝食、ピーナッツスプラウトを茹でたものに、ポーチド・エッグ。果物はブドウ(巨峰)。テレビの映りが極めて悪いので、配線のジャックの部分を差し直した らだいぶ回復。

 仕事場に出るK子に道新に送る著者近影写真の差し替え(これまで掲載されていたものがもう六年くらい前のものなので、あまりと思って新しいものに。これとて三年くらい前のものなのだが、芸人のブロマイド写真よりはマシであろう)を送ってくれるよう依頼。封筒に郵便番号が書いていない、と叱りつけられる。この女は規則を守ること、というより守らない人間を見つけて罵倒することが何より好きな鬼軍曹なの である。

 今日は芝崎くんと、mikipooさんのお二人が来て、書庫を整理清掃してくれることになっている。その前に私もちょっと、と思い、書庫に入って、ゆまに書房の復刻原本を探す。一冊、どうしても見つからないのがある。11時、お二人到着。早速、第一書庫の、こないだの地震で山が崩れてそのままになっているところあたりから整理を頼む。私はその間に、今日は同人誌のマンガ翻訳を是が非でも片づけてしま わないといけない。背後に片付けの音を聞きながらせっせと仕事。

 結局昼までに一本アゲ、メールできた。私も片付けに加わり、整理する。自著のストックで、20冊、30冊ととってあるのがあったが、文庫化されていたり、復刊されていたりするものに関しては、資料用に2冊程度残して、あとは始末する。それにしても昔(といっても10年くらい前)は、著者謹呈用には小段ボール一箱くらい、どかっと送ってきた。最近は三冊とか四冊、というところもある。不景気なんだなあ とこういうところで実感。

 昼は三人で外へ出て、キッチンハチローでランチ。鶏の和風フライとカニクリームコロッケ。と学会大会のこと、新入会員のこと、一本木蛮ちゃんのことなど話しながら。帰宅、片付けを続けながら、翻訳、最後の一本をやる。旅行中につけたメモ見ながらちょこちょこやって、4時にはアゲてメール。なんだかんだ言いながら、原稿用 紙25枚分くらいの文字数は仕事しながら半日で書いたことになる。

 それから後は片付けに没頭。第一、第二書庫を片付け、納戸をきれいにして、さて懸案の仕事場。この三ヶ月ほど、仕事が忙しかったこともあるが、資料を持ち込んで書いてはそれをそのままにし、その山の上にさらに別の原稿の資料を持ち込んで重ねて、ということをしていた。そのため、歩いて入り口から仕事机の前に行くだけの通路スペース以外、床がほとんど見えないという有様になっていたのである。ここを徹底して整頓。大きく分けて四つある山を一つずつ廊下に出し、文庫、新書、単行本、辞書事典類、洋書、写真集などと区分けしてもらい、分け終わったところで私がその前にどっかと座り、これは書庫へ返す、これは処分する、これは仕事場へ戻す、という風に分類する。これを四回、繰り返すわけである。その結果、山が一つになり、非常に仕事場がスッキリする。床が見えるようになっただけでなく、ひろびろとした感さえある。人一人くらいはフトン敷いて寝られるだけのスペースが出来ることに驚嘆する。改めて、わが家というのはかなり広い家のうちに属するんだな、ということがわかる。当たり前で、マンションの他の部屋には、一家二世代6人で暮らしている、というような家庭さえ入っているのだ。それだけのスペースの、5分の3が本で埋め つくされているのである。

 お二人にはギャラ代わりに、今夜、あのつくんからまた届く野菜食べ会に招待することにしてある。7時半くらいに家を出る予定で、あまり早く終わりすぎるとどこかで時間つぶさないといけないな、と思っていたのだが、なんのことはない、7時半ギリギリまでかかった。8時間労働をオーバーさせてしまったわけである。処分する本を地下のゴミ置き場に持っていっている芝崎くんの報告だと、置いておいた本が半分くらい無くなっている、とのこと。誰かが持っていったらしい。まあ、同じことを私 もやったことがある。本好きにはわかる心理だ。

 タクシーで下北沢。現地でK子と合流。少し時間が早すぎて、テーブルに先客がいたので、近くの喫茶店で時間つぶし。mikipooさん一家が昔、住んでいた椎名町の家を、×価×会に追い出された話など聞く。何された、というわけでもないのだが、トランシーバーを持った連中が四六時中、家を監視しているのだそうである。当時飼っていた犬だか猫だかが逃げ出したとき、この連中にトランシーバー使って捜索 させたこともあるそうな。

 コーヒー一杯飲んだあたりで、前のお客さんが出てくれたとの連絡。悪いことをした。待つうちに開田夫妻、平塚夫妻も来て、さっそく仙台の野菜づくし。枝豆が、あのつくんは早く採りすぎたと言っていたそうだったが、香り高く、茶豆のような感じで、極めてうまい。さらにキャベツとハムのサラダ、大根とスペアリブの煮込み、青トマトの刺身、キュウリ(これがゴーヤかと思うほどの豪快なイボイボ)の信州味噌つけ生齧り、それからキャベツとほうれん草の鍋。体中のシコリがとれる気分。こないだサザエの会のあと、頭が痛くなった話をしたが、あやさんもやはり、頭頂近辺がいたんで寝られなかった由。やはりキモのせいか。酒もグイグイ入って、ちとはしゃぎすぎ、K子に何度も、声がデカいと叱られる。12時頃まで飲んで食って、帰宅。スッキリした部屋をもう一度見回り、満足した気分で就寝。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa