裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

22日

日曜日

ABC、ABC、ア〜、E茂吉〜

 キャンパスに 逆白波の立つまでに ひびくうはさとなりにけるかも。朝、7時半起床。東京もかなり郊外のさびれた映画館で行われているアニメ上映会の夢。これは世界アニメーションフェスティバルの企画上映の一環なのだが、上映されるのが、これを上映すると不吉なことが起こるという呪われた作品で、人類には今知られている学説とは別の起源があった、という、ラブクラフトみたいな内容の代物。こんな作品でもマニアがかなり集まっているのがさすが、と感心したり。映画館の外は雑草が生い茂っている一面の広野。ひどいところで上映するねえ、とアニドウ会員のツノさん(角川氏)と話していると、なみきたかしもやってきて、なかなかこんな場所でもないとこの作品は上映出来なくてねえ、不便でいけない、とボヤく。しかし、こんないわくつきのものやっちゃって、どういう不吉なことがおこるのかね、と私が言うと、×時のバスを逃すと、みんなこのロビーに泊まらなけりゃいけないんだが、それじゃないかね、などと誰かが言って力なく笑いあったり。雑談ばかりの夢だった。

 昨日と同じく入浴、メール確認。朝刊は昨日の阪神の10点差勝ちの件でもちきりであった。階下のレストランで昨日と同じ朝バイキング。K子は昨日つかまえられなかったコックに、ローストしたハムを切ってもらっている。朝食バイキングは豪華さでは神戸のポートピアホテルが第一だが、一般的に言うと、九州のホテルが点数が高いのではないかと思う。こないだオタアミで泊まった、博多の西鉄ソラリアホテルのクロワッサンは外人客が二度取りしていた程の絶品だったし、そのかなり前、全日空ホテル博多(これは泊まったホテルの朝食があまりよくなかったので、翌日は近くの全日空ホテルまで行って食べたのだった)の朝バイで作ってもらったポーチド・エッグは、これまで私が食べた卵料理の中でも最高の部類に属する出来だった。小倉でのSF大会で泊まったリーガロイヤルはバイキングの皿数がやけに少なくてがっかりし たが、ソーセージがおかわりしたくなる程の味であったし。

 部屋にもどってしばらく原稿。疲れるとベッドでごろり。案外カンヅメもいいな、と思う。もちろん、資料を沢山使う仕事は出来ないけれど。10時過ぎに表へ出て、おみやげ用に551蓬莱の肉まんを買う。昨日から湿気がひどいと思っていたが、大 粒の雨がボツリボツリ。

 11時にチェックアウト。新大阪までタクシー。すでに本格的な雨となったいた。新大阪駅の軽食堂で時間つぶし。ここは何度も使っているが、店中央にある太い柱にデビルマンのジンメンの甲羅の如く、人の顔がレリーフで埋め込まれている。その顔がまた、好美のぼるの描く妖怪みたいな顔なのである。こういう趣味の悪い装飾、実にいい。新大阪駅の名物にすべきである。K子と、コミケの二次会、その前日の金成さん歓迎会の場所の打ち合わせなど。まだ8月のことで気が早いが、なにしろ人数が 多くなるので、毎年場所設定に気を使うのである。

 11時50分ののぞみで帰京。車中で、昨日西玉水で作ってもらったハモの押し寿司で昼食を取る。山椒の実の香りが脂の乗ったハモの味と調和して、濃厚さとさわやかさが口の中で一緒に味わえる。K子はどうも、この昼食を最大の目的にして今回の旅行を計画したらしい。東京駅に着いたときも、まだ息がスーッと山椒の香りであった。車中では翻訳原稿にかかりきり。7、8月の原稿大攻勢をなるたけ前倒しで乗り 切らねば。

 帰宅、FAX用紙の詰まったものなどを直す。さすがに家の中に熱気がこもり、猫も元気なし。児島都ちゃんから送られた老猫用のカンヅメはうちのは気に入らぬらしく、全然口をつけていない。エアコンをドライにしてつけるが、温まっている家具や壁などが冷えるまでには時間がかかる。メールチェックしたら、ふゅーじょんぷろだくとから『世界の日本のアニメーション・ベスト150』の原稿料に関してのものが 一通。今朝の夢がアニメに関するものだったのを思いあわせて何か変な気分。

 雑用片付け。日記つけたり。ATOK12には基本漢字に“鱧”の字が入っていない。関東人が作ったな。9時、下北沢『虎の子』。さすが日曜で、満員札止めという感じ。萩原さんが入ってきて、私たちの顔を見るなり“ハモですか……”とうらめしげに言う。しかし、彼自身も、今度某誌で、日本全国の酒蔵を訪ねる、といううらやましい企画記事の連載が始まるという。蛸と枝豆の梅肉和え、じゃこと水菜の奴(今日は胡麻豆腐で)、帆立のエスカルゴ風など。551の肉まんをおみやげにあげる。昨晩は開田夫妻が来たらしい。飲んでる最中に火事らしく消防車が走っていき、その後雨が降ってきた。帰宅時にはあがっていたが。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa