裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

28日

金曜日

風俗40米

 日活特撮陣の技術と性欲の冴え。朝6時50分起床。立川談志の事務所(だだっぴろいホールのようなところ)であんかけタンメンの大盛りを奢られる夢を見る。味もちゃんと記憶している。脇の方でラジオから新興暴力団が既存のヤクザ組織を片端から壊滅させて日本の裏社会の実権を握ろうとしている、というニュースが流れているのだが、その新興暴力団のテーマソングというのがかかり、“♪東のゴロを殺せー、西のゴロを殺せー、南の……”というフレーズがえんえん繰り返される。起きて朝食を作りながら、思わず口ずさんでしまった。朝食、レタスとカリフラワ、ソーセージのスープ煮。カリフラワはしばらく煮込むとほろほろと口の中で崩れて、美味。

 午前中は創出版に出す企画書。催促されながら一年以上ほったらかしであった。年内に出さねばと思い、2時近くまでかかって何とか仕上げる。内容のことばかりでなく、この章立てで行けば一章につきどれくらいの時間で仕上げられるから、実質執筆期間がどれくらいになる、ということも計算して仕立てなくてはならない。ニフティの、メールボックスを開けようとするとエラーメッセージが出るトラブル、まだなおらない。ニムダだか何だか、“RE:”のウイルスもまだ、送ってくる奴がいる。

 昼飯はパック御飯を温め、紅鮭の麹漬けを焼いてお茶漬けで流し込む。年の瀬の昼飯なるかな。昨日の日記の国営放送Yくんから電話、今度は『真夜中の王国』に一月収録でDちゃんが出演するらしい、という報告。収録の打ち合わせのときに私の名前が出て、その縁でYくんのところに報告があったそうな。国営放送の人々、ひょっとしてヒマか? それはともかく、知り合いがTV出演してワイワイ盛り上がるというのはまことにもって通俗的大衆風で愉快である。TVと言えば先日の『ほんパラ』のディレクター氏から手紙がきて、“おかげさまであのビデオ収録シーンは私の会心の作となりました”と自画自賛していた。果してどんなものになっているのか。

 出版社、年末で連絡等つかないところ多し。とりわけ海拓舎が何も言ってこないのはいつまでたっても作業にかかれぬわけで、スケジュール立てに難渋を極める。午後は『Memo・男の部屋』の裏亭先生。400字詰め9枚、冒頭部分を三度書き直した。なんとかそこがうまく行った後はスイスイとすすむ。メール、編集部とK子に出す。二見書房Y氏から電話、年末手渡しの予定が狂ってまことに申し訳なし。明日、会うだけ会って打ち合わせと約す。マイストリート(編プロ)からは正月の仕事予定について。嗚呼、休みナシ。

 読売新聞夕刊が(汗)の署名で、小谷真理氏の裁判の記事。『「女にもの書けぬ」差別に痛打』という見出しで、男性評論家(37)が
「本当の筆者は夫の巽孝之・慶応大学教授で、小谷真理は夫のペンネーム」
 などと書いた、と報じていて驚く。山形浩生氏(なんで彼の名前を出さないのかもわからない)の元文章は
「そもそも小谷真理が巽孝之のペンネームなのは周知で、ペンネームを使うなら少しは書き方を変えればよさそうなもんだが」
 という対個人(巽・小谷夫妻)の中傷であることがあきらかなものである。なぜ、正確に引用しようとしないのだろう。もちろん、その意識下に女性蔑視思想はあったかもしれず、判決は傷つく者側の心情を最優先して、ジョークとしての質の悪さ、またTPOのわきまえのなさ(これは私もまったくそう思う)を裁き、反省をうながしたのだろうが、少なくとも、上記山形の文章が、大上段から女にものは書けぬ、と断言したものでないことは(この記事だけを読むと事件の過程を知らないものにはそうとしか読めない)、およそ文章に携わるものであれば理解してしかるべきだろう。情報操作を加えることによって、小谷氏を完全なアンチフェミニズムの被害者のイメージにしたてる意図があったとしか思えない。そもそも、文章、ことに悪口文章をニュアンス無視でしか読めない人間が文筆の徒として職についていることが信じられないのだが、この(汗)の署名はたぶん、石田汗太記者だと思う。彼には以前、私もインタビューを受けたことがあり、オタク知識の豊富ないい記事を書く人だと思っていただけに意外で、どうにもいただけなかった。

 7時、新宿までタクシーで出て、マッサージ受ける。ここは年内の営業は今日までで、ギリギリだった。サウナに入ると汗がジャブジャブという感じで流れる。背中がいつもの倍くらい固くなっている、と揉まれながら驚かれた。左肩は特に凝っているというより痛いくらいである。途中で、むやみやたらに声のデカい集団がドヤドヤと入ってきた。まるで修学旅行の団体のような騒ぎ。どこかの社会人サッカーのチームらしい。まったく、スポーツなどやっている奴らてのは無神経だ、と毒づくが、考えてみればまあ、集団になるとそこだけが世界になってしまい、その外の人々の迷惑にはつい、考えが及ばなくなるというのはありがちなこと。私の周囲の連中の飲み会とかもそうだよなあ、と苦笑する。終わったあと、新田裏、すし処すがわら。大将は不景気々々とこの一年、毎度行くたびにわめいていたが、さすがにこの数日は大忙しとのこと。白身、アナゴ、ウニ、コハダ。つまみでヒラメ、マグロ、カイワレ。黒ビールと熱燗。

 帰ってメールみたら、海拓舎から来ていた。打ち合わせは松あけになる。ひょっとしてあと三日で書け、と言われたらどうしようと心配していたので、命が延びた、とホッとする。ところで、以前からこの日記、業界の方によく読まれているとウワサされるが、果してホントかどうか、よくわからないでいる。今年は親父が死んで年賀状も貰えないことであり、業界人(自称ではなく、一応客観性ある人)でここを読んでいらっしゃるという方、“読んでます”の一行メールを年末年始にかけて募集。もちろん、文筆・出版業界ばかりじゃなく、放送、映像、アダルト、芸能、など私の活動の諸近辺の方ならOK。一応、所属及び住所氏名をお書き添え願います。メールの題名を“読んでます”にしてCXP02120@nifty.ne.jpまで。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa