裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

20日

木曜日

今日も祈る、戦う、テロル、そしてイスラエル

 ひっこぬかれてヤハウェだけについていく(『センミン』CMソング)。朝、ひさしぶりに7時過ぎまでぐっすり眠る。別に一昨日までにくらべ寝るのが遅かったわけでもない。夢も、見てはいるのだろうがそれほど奇妙テケレツなものは見ず。やはりこれ、昨日は午後からほとんど原稿を書いていないので、その分脳内に興奮物質が出ていないためではないか。逆に反動でセロトニンが分泌されたか、ゆうべは寿司屋でも何かウツウツとした状態で、仕事のことや何かを悲観したり、知人関係者に被害妄想的な腹立たしさを覚えたり(どれもそう病的なものではなかったにしろ)と、ドヨンとした感覚に襲われた。年末進行のラッシュの中で、仕事中毒のような感じになっていたのかもしれない。

 連載原稿あと2本、とおとつい書いたが、忘れていたのがあった。『Memo・男の部屋』から25日〆切、と連絡あり。ううむ、確かに興奮物質でも分泌されないと乗り切っていけないな。午前中は雑用、それからコミケ関係の連絡などで過ぎる。昼は金沢からいただいたラーメン。マイタケを炒めたものをのっけてマイタケラーメンにする。関係ないが、『恋の大冒険』というピンキー主演の映画の悪役は前田武彦扮するインスタントラーメン会社の社長で、マエタケラーメンという社名だった。

 K子の『男前』、最近のフィンランド語教室の、“この程度の語彙と文法でとにかく相手に意志を通じさせるには”という基本方針が実に斬新でいいと思う。格変化などというものを正確に、と教育するから、日本人の大半は外国語を話せなくなるのである。結婚したての頃、彼女とソーホーのホモビデオショップに行ったとき、店員が“この監督の新作が入ったが見るか?”と聞いてきたのに対し、彼女は咄嗟に“見せて、見せて”というつもりなのだろう、“シー(SEE)、シー”と言った。聞いていたこっちが驚いたが、店員は少しも驚かず、オッケーとそれを奥から出してきた。どうみてもアジアからのお上りさんなのだから、それ相応の英語で話すのが正解なのかもしれぬ。ところで、前回のラストの文句“aを取る、ネコは伸ばす、否定は取ったまま”てのは、何か『破壊された男』の“もっと引っ張る、曰くテンソル”を思い出させる。しばらく頭の中でリフレインしていた。

 2時、時間割で海拓舎Fくんと。完成原稿内容の詰メを行う。前半はいいが、後半にもっとカラサワシュンイチらしさが必要、という点で意見一致。その後、雑談になり、ゴジラばなしになる。劇場で子供たちが、ゴジラの登場までが長いので退屈し、走り回っていたということ。ううむ、確かに冒頭のツカミがハリウッドゴジラへの皮肉では、オタクは喜んでもガキは喜ばないわなあ。出来がいい映画ではあるが、主要客層へのアピールを考えていなかったのではないか、という気がして仕方がない。

 雑用なんやかや。先日頼まれた『フリテンくん』推薦文、書いてFAXしようとするが、編集部のFAXがずっと使用中で(たぶん、長篇作品のゲラとかが送られているんだろう)送れない。そうこうするうち5時が迫るので、帰ってからにしよう、と新宿へ出る。『八起』焼肉ツアー。談之助さんをコンダクターに、開田夫妻、植木さん、IPPANさん、世界文化社Dさん、『すごへん』のアシやってくれたUさん、それに『虎の子』の萩原夫妻。これに現地集合のGさん、QPハニーさん加えて、なんと総勢13人。K子、“最後の晩餐〜”と笑う。

 相模大野駅まで40分、八起のおかみさんが“あら〜、センセイいつもどうも〜”と迎えてくれる。オミヤゲの餅などを手渡す。昨日はなんと談志が来てタダ肉を食っていったそうな。談之助さんが“あぶねえとこだった、一日違えばカチ会うとこだ”と胸をなでおろしていた。後はいつもの通り、肉の饗宴。植木さん、萩原夫妻の食うこと食うこと。いいちこの水割りをクイクイやったが、どうも酒より肉で酔った、という感じ。もうどうなとなれ、とヤケクソで食べる。ロースとカルビの柔らかさは言うまでもなく、さらに言えばレバ刺しのウマサ! この甘味は天上の美果と言いつべし。食べながら植木さんと夢声戦争日記の記述の話だとか、と学会運営の話だとか、いろいろ。10時近くまで食って飲んで、もうしばらく牛肉はいいや、と言う気分。これでお値段が……いや、みんなが一斉にエッと驚いた安さ。別段それほどの有名人の一団でなし、この好意は何故? 小田急で新宿まで、酔っぱらいのダダ話をいろい ろしながら帰る。帰宅して、もう一度竹書房にFAX。今度は通じた。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa