裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

17日

月曜日

でぶ、でぶ、客観でぶ

 第三者の目から見ても太っているよな、あいつは。高野(『なぞの転校生』)浩幸がCGで女性になる映画を観て、CG是非論を人と戦わす、という夢を見る。夢とは関係ないが、この高野浩幸(今は釣り番組のレポーターなどをやってる)とか、キャロライン洋子の兄貴とかいう美少年スターがポシャって消えてしまったのは、ツイこないだまで、“美少年”というのは存在そのものがアブノーマルとされて家庭から排除されていたからなのである。川崎麻世だってオジサンになって初めて受け入れられた。時代だよなあと思う。朝食、サツマイモとスープで。果物はリンゴ。ジョナゴールドなので少しフシャフシャ。

 午前中、原稿の赤入れなど。テレビスタッフが来るので少し仕事場の本などを片付ける。先日インタビューを受けた雑誌の編プロの女性から電話で、“あの、ギャラの件なんですけど”と言ってくる。振込先の問合せか、と思ったら、“あの、ギャラ、お入り用ですか?”ときた。思わず“ハア?”と頓狂な声をあげてしまった。聞くと予算が足りない雑誌なので、よければタダでお願いしたい、ということであった。まあ支払われたってそれ程の額でなし、別に取り立てて、と言おうと思ったが、最初の問いがあまりに脳天気であったので、意地になって“いただきます”と答える。最初から“申し訳ないんですが……”とくれば、イーデスイーデスになったかも知れないけれど。

 昼は自宅でネギ塩カルビと豆腐汁で食べる。金沢のSさんからラーメンと、おばあちゃん手作りのフグの粕漬け、ゆずマーマレードが届く。感謝。ロフトにタイトル、やっと送れる。朗読、またひとつ新しいアイデアが浮かんだので、それも3月あたりに、と頼んでおく。もう来年のことを言っても鬼も笑わぬだろう。あと二週間、荷造りとか何とか、しなければいけないことが山積なのに、時間のいかに少なき。

 2時から撮影、とのことだったが、早く着いたというので1時45分、撮り開始。カメラマンの太ったおじさん、ビデオの山を見て嬉しそうに笑い声をあげた。以前に仕事場にテレビが入ったことは何度もあるが、まあたいていは深夜番組とかBSとかいう、金のないところ。ゴールデンタイムの番組というのはさすがに丁寧に何度も撮り直しをしたり、押えのカットをきちんと撮ったりして、時間がかかる。途中、出版関係から何回か電話があるが、“いま、テレビの撮影中で……”というと、みんな、“ア、それはお邪魔して失礼しました!”とあわてた声で電話を切るのが面白い。すでに出版業の人間は、自分たちがテレビの下である、という意識を骨のズイまで染み 込ませてしまっているらしい。

 美少年と同じく、今日び、本をたくさん持っている、というのはそれだけでアブノーマル扱いされる。私の書庫撮影も、そういうようなイメージで撮っているらしく、部屋を暗くしてブルーのライトで撮ったり、しまいには何とスモークまでたいて、煙の中で私が本を読んでいるという、怪談みたような感じで撮影される。私はソウイウモンダと思っているから、別段逆らわず、ハイハイと撮らせる。

 最後は仕事場でインターネットやっているところを撮って、“さて、質問です”と言ってオワリ。やっぱり、こういう扱いされているうちはダメだね。スタジオ入りしてコメンテーターくらいやるようにならなくちゃ。とはいえ、昨日プロデューサーさんに聞いた話によると、スタジオ撮影が入っても、ギャラは一万円がとこ上乗せされるだけらしい。だとすると年末の最中に損失する時間を考えればバカバカしいわけ。

 とにかく、最初の話では“一時間をちょっと越すくらいお時間を”のはずだったのが、すっかり引き上げていったのがすでに5時半を過ぎたころだった。Web現代の原稿を今日じゅうにアゲなくてはならない。劇団新感線の芝居を赤坂に開田さんたちと観にいく予定だったのだが、ダメとなる。予約を無理して取っていただいていたのに、まことに申し訳ない。

 撮影クルー帰ってすぐに、サンマークTさんから、“終わりましたか?”という電話が入る。自分のところの本が紹介されるかどうか、とにかく気になるらしい。ディレクターのSさんに、『すごいけど変な人』『社会派くんがゆく!』の2册の紹介よろしく、と重ねて頼んでおきました。放映は正月あけ最初の放送(1月13日)になるとのこと。Web現代原稿はサクサクすすんで、10枚、6時半までにはアガる。またいろいろ雑用。

 8時、K子と渋谷の『沖縄』で食事、くーぷいりちい、ラフテー、平焼きなど。それとオリオンビール、泡盛。ああ、沖縄の青い空の下でノンビリしてみたい、とガラにもなく思うのは疲れているせいか、やはり。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa