裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

17日

金曜日

チョロい恋人

「ホワイトチョコ程度でころりとなびくんだから」

※某事務所打ち合わせ 麻衣夢ライブ

朝目が覚めたら9時。
ぐっすりとよく眠ったもの。
眠れるうちは大丈夫という気もする。
星新一氏や赤塚不二夫氏のように何年も眠ったまま
死ぬというのも、まあ悪くないかとも思う。

3月末あたりから、テレビからしょっちゅう『狼少年ケン』の
OPが流れてくるな、と思っていたら、ロッテのガム“Fit's』
のCMだった。
http://www.youtube.com/watch?v=x_z1Icyu5gI

どう聞いてもある程度の世代なら『狼少年ケン』の、
「♪ボバンババンボンブンボバンバババ、ボバンバンボン……」
だとわかると思っていたら、案外マイミクの同年代にも
「わからなかった」
「そうだったのか!」
という人が多くて驚いた。イメージが違うと認識できないのか。

で、まあそれはどうでもいいのだが、それがらみでネットで
古いアニメのことを調べていたら、驚愕の事実が判明した。
「声優の加茂嘉久とイラストレーターのかもよしひさは同一人物だった!」

大驚愕。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8A%A0%E8%8C%82%E5%96%9C%E4%B9%85
↑ウィキペディアにまで書いてあった。いやあ、勉強不足。

こんなことを書いてもほとんどの人が、“それ、誰?”レベル
だろうが、私にとっては二人とも実に大きな存在であったのだ。

声優としての加茂嘉久は白黒版『鉄人28号』のオープニングで
「みなさん、鉄人28号の時間です!」
と叫ぶナレーションの人。カラオケなどで鉄人を歌う際、最後に
「グリコ、グリコ、グ〜、リ〜、コォ〜」
とつける人がいるがまだまだで、本当にオリジナルに近づけるなら
冒頭にこれをつけなきゃいけない、などと私がオタ人生初期に
力説をしていた人。

子供の頃はこのナレーションの声で毎週ワクワクさせてもらい、
やがて中学・高校生になり、『週刊プレイボーイ』などを親に
内緒で読むようになると、そこに印象的な描線のイラストを
描いていた”かもよしひさ(かも・よしひさ名義のことも)“
という人のタッチにハマった。

いまだに私がこういう青年誌の連載ものの最高傑作(なんとか
自分でリメイク連載をやりたい)と思っている1970年代半ばの
『週プレ』の『野坂昭如の料理読本』のイラストも、かもよしひさ
氏だった。

この連載でニューヨークへ取材旅行に行くという野坂氏の見送り
に来て
「ニューヨークはホモが多くてよく日本人は襲われますが、
抵抗しちゃいけません、なに、じっとしてればすぐ終る、
少しも痛くない」
などとアドバイスして(エイズ以前の時代だったんだねえ)、
野坂氏に
「まったく、かも画伯は何でもよく知っておられる」
などと変な感心をされたりして、大笑いしながら読んでいた。

まさか、その二人が同一人物だったとは。
たしかに読みは同じだけれども、声優とイラストレーター、
5歳〜6歳の頃と17歳の高校生の頃、まったく異ったフィールドで
出会ったのでまるで想像がつかなかった。

俳優の某氏から電話、氏の所属事務所の人間がぜひ
私に会いたいと言っているので、今日会えないかと言ってくる。
何とか時間を作って、3時半に新宿で、ということになる。

9時半、朝食。
バナナを切らした(深夜にハナマサまで買いに行ったという)
ので、とイチゴジュース。それとスープ、ミルクティー。
服薬如例。

自室に帰って日記つけ、入浴など。
昼は酒粕野菜漬けで弁当。
3時半、霧雨みたいな雨もよいの中、新宿に出かける。
紀伊國屋前で某氏と、某氏の所属事務所のHさんと。
近くのTOPSで名刺交換、打ち合わせ。
あまり具体的な話はなし。何も今日でなくとも、
といったような内容。とはいえ、顔を広げるのはいいことである。
Hさん、元は俳優だったそうで、若く長身のなかなかのいい男。
おしゃれでもある。某氏、苦笑して
「一緒にいると、彼が俳優で僕がマネージャーだと思われます」
と。雑談中に、ちょっとまあ、無駄足でもなかったか、という
協力体制の話あり。

別れて仕事場に戻り、連絡事項いくつか。
もうGW進行なのだなあ、と時間の経つことの速いのに呆れる。
おーいとしのぶくんからメール。
タイトルが『酸辣麺を食べました』で、いったい何だと思ったら
「作った人の名は久保広宣」
だそうである。今日の昼間、入ったなじみの食堂が満員で、
仕方ないのでそこから歩いて20分ほどの、市場の中にある
中華屋に入り、お勧めという酸辣麺を食べた(おいしかったそうだ)。
で、スポーツ新聞をおいてあるスペースに、『いつも心に怪獣を』
のチラシが置いてあるのを見つけ、代金を支払うときに
「これ、どういう経緯で置いてあるんですか?」
と訊いたら、さっきまで中華鍋握っていたお兄ちゃんが
「……これ、オレなんです」
と、配役トップの久保という名前を指さしたとか。
西手新九郎にしてもなかなか凄い。
今日は偶然、二人の人間が同一人物だったネタが多いな。

6時、再び家を出る。バスで新宿まで。西口地下で取っ組み合いの
大げんかをしている若いサラリーマンあり。何なんだろう。
山手線で五反田。五反田ロッキーでの麻衣夢のライブだが、
せっかく五反田に来たんだから、と、目黒川近くの辰巳家で夕食。
学生時代、この目黒川を渡ったところに五反田名画座という映画館
があり、なかなかいいプログラムを組んでいた。
見終わったあと、この辰巳家でよくメシを食ったものだ。
やさぐれていたあの頃、麻婆丼を食っている最中に急激な鬱に
教われ、しばらく固まってしまったこともあったっけ。
あの頃と変わらぬ味の麻婆丼を食べて、五反田ロッキーへ。

ちょうど麻衣夢の一回目のステージだった。T田くん、アユくんが
いたので一緒になる。台湾帰りのrikiさんもいた。
麻衣夢、ステージから私を見つけていろいろ話しかけてきて、
何と二回目と三回目のステージの合間にはステージに上げさせられて
アドリブでトークをさせられた。
「歌はうまいんだから、も少しセクシーさを出しなさいよ」
「わかりました、じゃ、次のステージではエロに」
「エロとセクシーは違うの!」
とか。途中から入ってきたお客さんがいたが、漫才のライブかと
思ったのでは。

セクシーさはともかく、相変わらず、声を自由自在に操っていると
いう感はあり。5月に出す新譜に入れる予定の新曲二曲も初披露。
ちょっとこれまでのイメージと違ったインパクトある曲もあり、
なかなか楽しみである。

勘定すませて出て、地下鉄で帰るというT田くんと別れ、
アユくんと新宿まで。業界ばなしいろいろ。
新宿についたところで11時、サントクの閉店前に帰りたかったので
タクシー、ギリギリで間に合って買い物。
買ったつまみで黒ホッピー飲みつつ、資料の昭和史ビデオなどを
見て2時まで起きていた。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa