裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

22日

土曜日

一日一歩、ちびくろサンボ

♪ぐるぐる回ってバタになる。

※談之助夫妻パーティ(豚を食う会)

朝方の夢。
実家に久しぶりに帰る。周囲が畑だらけの大田舎で
(実際の実家はそんなところではない)、
ある夜、散歩していると、目に付いた畑にビー玉大の
緑色をしたゴム球みたいなものが一面になっており、これはなんだ、
と近寄ってみたところ、声をかけられる。
以前一回か二回仕事をした、ビジネスマン向け雑誌の
営業の人である。上司と一緒にたまたまこの地方に
仕事で来ていた、と言い、その上司に近くでお茶でも、と
誘われて、喫茶店に入る(緑の玉のことはもう出て来ない)。
喫茶店も畑の真ん中の掘っ立て小屋みたいな建物だが、
内部はちょっとましな内装である。
あまりつきあいのある仕事先でないので、おざなりな会話を
していると、その営業の人が外を見てアッと叫ぶ。
会社の車に積み込んでいた試供品などが全部盗まれている。
あわてて飛びだすと、まだ泥棒は近くに潜伏しているようで
チラリとその姿が見える。
誰か、と声をかけると、畑仕事をしていた人たちなどが
ぞろぞろろと百人近くも出てきて、みんなで犯人を追いかけて
大捕物になる……。

9時に起床、あわててシャワーのみ浴び、
朝食に母の室へ。
キウイ、ブドー、オーストラリア産だかの、種だらけ(しかし
抜群に甘い)のミカン。冷製スープをカップ一杯。

寝巻やシーツがどうにも汗臭いので、これまでのファブリーズ
ではラチがあかん、と、“驚異の消臭率97%”をうたい文句
にしている消臭剤『ヌーラ』を取り寄せた。
http://11kaigofuku.com/nulla/spray01.html
ボトル4本に、なんと“消臭実験セット”がついてくる。
アンモニアの小瓶を空けて、中にヌーラで示したティッシュを
入れて、と説明書が入っていた。なんとなく昔の学習雑誌の
付録みたいである。

昼は茶漬けですます。
夜が豚の丸焼きなので、少し腹を空かせておこうと
思ってだが、飯の量が多くて案外腹いっぱいになって
しまった。

皆神龍太郎氏の父君が亡くなったとのしらせ。
いかにも皆神さんらしく、山片蟠桃の辞世を引いて
心境を語っていた。
「地獄なし 極楽もなし 我もなし ただあるものは人と万物」
デバンカーたる皆神さんにとっては蟠桃のもうひとつの
辞世の句、
「神ほとけ 化物もなし 世の中に 奇妙不思議のことはなおなし」
の方が似合っているかもしれない。

教育評論家・斎藤次郎氏がマリファナ所持・栽培で逮捕のニュース。
斎藤次郎氏という名前は知っていたが、どういう人かまでは
忘れていたら、ミクシィで教示あり、漫画評論家で、
『子ども漫画の世界』(現代書館)等の著書もある人だった。
ネットで得た情報では、息子さんがクローン病であり、
その症状緩和にマリファナを栽培していたのではないか、と。
何で自分も吸っていたのかはよくわからないが、
ヒッピー文化世代の人なので、マリファナには罪悪感はなかったの
かもしれない。あのころは『宝島』なんかがしょっちゅう
マリファナ特集をしていた。マリファナ・ポルノ・コミック
というのは当時の『宝島』提唱の三大若者文化だった。

要は体制側が顔をしかめるものをもちあげて権力を相対化しよう、
というムーブメントで最もその対象にされるのがドラッグ・
セックス・コミックの3つなわけで、70年代は確かに
これらを正式に文化と認めよという運動がさかんだった。
その余燼で私のようなサブカルチャーの徒はメシを食っていけて
きたわけである。
斎藤次郎氏はセックスはどうか知らないが、コミックとドラッグに
関してはこれを実践していたわけか。

で、調べたら↓こんな人もマリファナ愛好家だったそうな。
http://tymanews.typepad.com/weblog/cat8149700/index.html
彼の宇宙のビジョンもカンナビス・ドリームから生れたもの
だったのかな。

5時半、家を出て新宿へ。
高層ビル街の外れの『Y’sエスティック情報ビル店・AGORA』
で談之助夫妻の結婚祝い&赤ちゃんお披露目会。
会費と一緒にお祝いも包む。
「わたくし、本日の新郎と司会を務めさせていただきます
立川談之助でございます」
という挨拶にみんな爆笑。

さすが、顔の広い談之助だけに、出席メンバーも落語関係ばかり
ではなく、音楽、出版、映像と多岐に渡っている。
島敏光さん、こないだも会ったばかりの寒空はだかさん、
八起のママ、わざわざ長野から来たヒコクさんにも挨拶。
“コッチ”側はわれわれ夫妻に睦月影郎さん、オノ&マド、
井上デザイン夫妻、jyamaさん、QPさん、おでっささん、
なをき夫妻、浦山明俊、それにと学会メンバー。
前座名人さん、腕を怪我したのか三角巾で吊り、口ひげに
加えあごひげまで(ひげが剃れないので)たくわえている。
頭が坊主頭なので、なにか高橋是清を思わせた。

“本日の主役”と談之助がいう
豚の丸焼きはなんと50キロの大きさ。
植木不等式氏が解説。
沖縄からわざわざ取り寄せるのは、都条例で、都内では
生の豚を丸焼きにすることが禁止されているからなのだそうだ。
これは知らなかった。
どういう理由なのか。
ジャーマンフェスタなどで出ている豚の丸焼きは、すでに
焼いたものを温めているだけなのか。
また、解体の順序も説明あり、さて、とみんな周囲にワッと
集る。頭蓋骨の方へはさすがに人が少ないので、まず顎を外して
舌を確保、さらに頭蓋骨の頭中線にそってハサミを突き入れ、
割って中の脳味噌を確保。

浦山明俊と話しているK子のところにその貴重品の
舌を持っていったら、浦山に
「こういうところで女房孝行するわけか!」
と感心されたが、K子はニベもなく
「柔らかい肉ってキライ!」
と突き返す。これも
「いかにもK子さんな反応だなあ!」
と浦山、大感心。
結局、脳と舌は睦月さん、オノ&マドとでいただく。

50キロという大豚も、100人以上の来場者であっと
言う間に食べ尽くす。骨をいろいろとトングでいじりつつ、
おそるおそるのぞきこんでくる人に
「ここが頭蓋骨、ここをこう開くと、はい、これが目ですね」
などと解説してたら、なをきが
「火葬場の係員みたいだ」
と。確かに。二人で頭蓋骨持って写真撮ったり。
ちなみに、なをきは談之助の手拭のニューバージョンの
イラストを描いている。

余興が世田谷系面白音楽と称する『めおと楽団ジキジキ』。
http://biz.sbrain.co.jp/keyperson/K-6838.htm
『東京おとぼけキャッツ』のギタリスト、来住野潔さんと
奥さんの香子さんのユニットである。
『ダディ竹千代と東京おとぼけキャッツ』の生演奏は
談之助の真打昇進御礼(披露目の後日の)パーティで聞いた
が、そのとき一番面白かったのがこの来住野さんだった。
「♪京都にいたときゃ、京子と呼ばれたの〜秋田じゃ、秋子と、
呼ばれたの〜」
とフっておいて、
「♪雲仙にいたときゃ、雲子と呼ばれたの〜」
「♪青島にいたときゃ、チン子と呼ばれたの〜」
「♪満州にいたときゃ……」
というギャグはいまだに覚えている。

今回はまさか夫婦でそんなギャグはやらなかったが、しかし
奥さんのピアニカとミニアコーディオンとのコンビネーション
また見事、“手を使わないピアニカ演奏”には談笑と共に
立ち上がって拍手。奥さんは武蔵野音大出身だそうだが、
杉ちゃん&鉄平と同じ、
「最高の技術を使って徹底したバカをやる」
が、やはり演芸の基本なんだなあ、とつくづく思う。
K子が最初、豚以外の料理を見て
「会費のモトは取れないわね、今日は!」
と吐き捨てていて(浦山が“一瞬、逃げた女房が戻ってきたかと
思った”と捨て身のギャグを言ったのに爆笑)のだが、
そのK子をして
「あれでモトはとれた」
と言わしめた腕であった。

その他、各テーブルをダーク広和氏がテーブルマジックで
回り、最後にさだやん師匠の三本締めがあり、そして〆に
元・全日本女子プロレスの今井リングアナによる談之助夫妻・
息子のコールでお開き。いや、何とも結構な会であった。
談笑のとこの子と談之助のとこの子、体格差が倍くらいある
のでは、と思っていたが、さすがにもうそろそろ談之助の
とこの子も追いついてきた。

そのあと、長野のヒコクさんを囲んで開田あやさん、
オノ&マド、久六さん、S井夫妻、睦月さん、ひえださん、
志水さん、植木さんら10数名、近くの焼き鳥居酒屋に
場所を移して二次会。植木さん中心に斬首ダジャレ大会が何故か
行われて、“斬首お見舞い申し上げます”とか“首取り物語”
とか、“首っ切り、首っ切り、もう首っ切りですか”とか。
私は“斬首、斬首、さい斬首〜”とトニー谷でエントリー。
11時半(案外早い)にお開き。あやさんとタクシー乗り合いで
帰宅。今日、鯉朝師匠から会場で頼まれた出演の件に返事とか
して、引き出物だったチャイナハウスのリーメン食べて寝る。

※写真は豚の丸焼き(箱入り、全体、解体後。誰だったか曰く、
“くずおれたあとの巨神兵みたいだ”)。夫妻や客の写真は後日
まとめて。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa